不要なガチャ景品を“その場で換金” 新世代オンラインくじ「スマート福袋」の専用ページ公開

 オンラインくじやガチャでよく起こる「ほしくない景品がダブる」「処分に困る」「売れない」といった悩みを解決する新サービスが登場した。大阪市北区のIT企業アニドライブが開発した「スマート福袋」だ。当たった景品をデジタル引換券(NFT)のまま売却し、日本円や暗号資産に手軽に換金できるのが特徴だ。

不要な景品の処理と換金ニーズに応える

 アニメや推し活グッズ、トレーディングカードなどの商品をインターネット上で引き当てる“オンラインくじ(ガチャ)”の市場が拡大する中、不要な景品をそのまま日本円や仮想通貨に換えられる新サービス「スマート福袋」が人気を集めている。開発したのは大阪市北区のIT企業アニドライブだ。独自開発したブロックチェーン「アニカナ」を活用したサービスで、一般ユーザーに広めるため12月1日、専用ページを公開した。

ブロックチェーン「アニカナ」上で展開している「スマート福袋」(提供:アニドライブ)

不要な景品は日本円か仮想通貨に

 限定グッズや推し活アイテムを狙うオンラインくじのユーザーは増え続けており、市場規模は2028年に7600億円超に伸びる試算も一部で出ている。ただ、こうしたユーザーたちの典型的な悩みは、景品がダブったり欲しくない景品を引き当てたりして不用品が溜まってしまうことだった。

 この悩みを解決したのがアニドライブの「スマート福袋」だ。くじで当たるのは景品そのものではなく、現物の景品と交換できるデジタル引換券(以下NFT)。不必要な場合はそのNFTをアニカナ上のマーケットに出品することで、日本円や同社の仮想通貨「アニマ」に換金できる。

 例えば5000円を入金して1回500円のくじを10回引き、手元に残った不要なNFTが合計3000円で売れれば、その残高を原資にもう6回チャレンジできる。ユーザーが“お得に遊び続けられる”構造だ。

くじにありがちな違法性を排除

 ただ、くじと聞くと気になるのが違法性だ。例えば1回500円のくじを引き、100円相当の景品が当たった場合、これは利用者の損失が偶然で決まるため、賭博罪にあたる。また、海外では事業者自身が不要な景品を低価格で買い戻す方式が見られるが、日本では事業者自らが価値を下げて買い戻していることになり、賭博罪や景品表示法違反の可能性がある。

 こうした違法性に対し、スマート福袋が異なるのは、最低ランクでも必ず購入額以上の価値を持つNFTが当たる点だ。NFTを買い取るのも事業者でなく、「エクストラクター」と呼ばれる第三者ユーザーだ。彼らはNFTを分解し、仮想通貨のアニマを得るために買い取っているので、個人間取引の構造になる。つまり、主催者と利用者の間に損益関係が生まれず、賭博要件が成立しない仕組みになっている。

 同社の甲斐義人社長は「エクストラクターにとっては、買い取るNFTがスーパーボールだろうと時計だろうと中身は関係ない。分解してアニマを得るのが目的だから、どんなNFTにも需要が生まれている」と説明する。

世界のトレンドを国内で合法的に実現

 今年に入り、海外ではトレーディングカードをデジタル化(NFT化)したくじが急拡大し、販売開始から1週間で数十億円を売り上げた例もある。実際に、アニドライブでも試用版で展開した1回500円のポケモンカードのデジタルくじで、最高ランクのカードが30万円以上で取引されたケースもあり、トレーディングカードのNFT化そのものが世界的に大きな需要を持つことを裏付けた。

 実物カードを配送せずに取引が完了する利便性が人気を集める理由だが、海外サービスの多くは不要なNFTを運営会社が買い戻す方式のため、日本での展開は難しいとされてきた。一方、スマート福袋は他ユーザーが買い取る市場構造のため、国内でも合法的に“デジタルカードくじ”を実現できるという。

「遊ぶほど社会が良くなる仕組みにしたい」

 「スマート福袋」の専用ページを12月1日に公開し、いよいよ多面的な展開を試みるアニドライブだが、今後は推し活グッズやカード類だけでなく、時計やバッグ、ホテル宿泊券やテーマパークチケットなどの展開も検討している。

 甲斐社長は「ブロックチェーンや仮想通貨と聞くと難しく感じるかもしれないが、細かい技術をまったく知らなくても気軽に遊べるくじ。『ハズれても無駄にならない』『不要品が出たらすぐ売れる』という新しいくじの感覚を、多くの人に体験してほしい」と話している。

 スマート福袋の“インセンティブ設計”はくじだけでなく、社会的意義のある領域にも応用されつつある。同社では現在、安全運転をすると報酬が得られる仕組みをトラック・タクシー・バス運転手向けに開発中だ。

 また、資格取得への応用も進んでいる。専門学校や学習サービスと連携し、資格を取得すると報酬が受け取れる仕組みを導入。すでに大阪の教育関連企業への納品実績もあるという。

 甲斐社長は「インセンティブがあると、人は行動を続けやすい。ブロックチェーンはあくまで裏側の仕組みで、ユーザーは意識しなくていい。楽しく続けた結果、事故が減ったり、資格が取れたりするより良い未来を作りたい」と話している。

アニカナ「スマート福袋」専用ページ https://oneshot.anidrive.jp

(記者・佛崎一成)

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