今年の繁昌亭大賞が発表され、20回目で初めて大賞は笑福亭鉄瓶(47)と桂佐ん吉(41)の同期生2人が複数受賞。奨励賞は該当なく、新人賞には笑福亭笑利(42)。入門25年以下の上方落語家の定席寄席「天満天神繁昌亭」への貢献度が基準だが、選考委員は協会幹部ら落語家ではなく在阪文化人や地元商店街関係者らで構成されていることから〝上方落語の次世代ホープ〟の目安にもなっている。

鉄瓶と佐ん吉は2001年入門で、これまでにも共に文化庁芸術祭やなにわ芸術祭で新人賞と似たような受賞歴。しかし幼い頃から落語好きで府立東住吉高等学校芸能文化科を出て日舞など和芸全般に精通する佐ん吉に対し、鉄瓶はタレントを目指して鶴瓶に弟子入りし4年目から落語とスタートは対照的。その分、同期としては気が合ったようで一緒にラジオ番組をこなし、東京で二人会を開催。今では福岡など全国に活動の場を広げて上方落語の面白さを伝えている。
笑利はNSC(吉本総合芸能学院)を卒業後10年をへて笑福亭鶴笑に弟子入り。昨年、協会主催の上方落語若手噺家グランプリに優勝。活動拠点を東京に移し、大阪と行き来しながら創作落語を中心に持ち味を発揮している。
東西の笑芸は漫才は大阪がリードを保っているが、落語は東京優位とされる。3人はそろって東京でも出演機会を増やしており「昔は東京のハードルは高かったが、上方落語の面白さは東京はもちろん今や全国に通用する。そのためには僕たちがもっと動いて顔と名前を売らないといけない」と決意。

鉄瓶と佐ん吉は互いの存在について「僕に色々なアドバイスをしてくれる。声がいいので噺(はなし)が聞き取りやすい。言葉以外の無言のしぐさも味がある」(鉄瓶)とべたほめ。「分かりやすくいろいろな事が出来る人で、良い意味で抜け目がない。僕は追い付くのが精いっぱい」(佐ん吉)とエール。

協会の笑福亭仁智会長は「鉄瓶は最近メキメキ頭角を現した。佐ん吉は人を押しのけて行くタイプではないが〝とうとう来たか!〟と感じた。笑利は若い頃から毛色が異なっていて〝異彩を放つ異才〟でした」と分析した。

(畑山 博史)
