WBCのネトフリ、W杯のDAZNに見る「本質」

 1カ月ほど世間をにぎわせたサッカーW杯は、スペインの優勝で幕を閉じた。日本は健闘したものの、決勝トーナメント1回戦でブラジルに敗退。そのタイミングでメディアで取り上げられる頻度が激減したのはわかりやすかった。
 3月のワールドベースボールクラシック(WBC)では、ネットフリックスが有料配信し、地上波放送がなかったことが問題になった。今回のW杯は地上波放送は行われたが、DAZNの有料配信の契約がトリッキーだったということで問題になった。
 これらの配信に関して、ネトフリとDAZNの戦略の違いについて正しく理解している人はどのくらいただろうか?
 ネトフリはWBCをきっかけに新規契約を獲得すると、大会終了とともに解約する人がいても、一定の利用者は契約を続けると考えていたように思う。その理由は、WBCという野球の試合をみるために契約したが、実際にサイト内をみると、興味をひく映画やドラマなどのコンテンツが無数に存在していることを知り、ついつい見てしまうという流れにハマっていく人たちがいるからだ。
 最も安いプランで月額890円、年間で1万円程度。会員が100万人増えれば年間の売上が100億円増える計算になる。150億円と言われたWBCの放映権料は1年半ほどで回収できるわけだ。
 一方、DAZNはW杯をきっかけに新規契約の獲得を目指していたはずだが、思うようにはいかなかったのではないかと私は思っている。
 その理由は、DAZNのコンテンツはサッカーを含め、スポーツコンテンツばかりだからだ。サッカーファンで有料契約をいとわない人であれば、すでにサッカー関連のサブスクを契約している可能性が高い。逆に有料サービスを契約してまでサッカーを見たいと思わない人が、その他のスポーツコンテンツを見てW杯後も契約を継続するとは思えない。多くの人たちはW杯の終了とともに解約したのではないだろうか。
 このため、W杯をきっかけにDAZNに新規加入した人は、WBCをきっかけにネトフリに新規加入した人に比べ、継続率はかなり低くなるとみる。
 地上波放送があったW杯の方が良かった、という視聴者側の意見はあるが、ビジネスに関して言えば、WBCをきっかけに野球ファンの会員数を増やしたネトフリと、W杯をきっかけにサッカーファンの会員数を増やし切れないだろうDAZNでは、結果に大きな差がつくはず。単純にサブスクサービスをひとくくりにするだけでは見えてこなかった視点が、各社の強みや戦略の違いなどに注目することで、面白いものが見えてくる。
 こうした視点はサブスクビジネスに限らず、どのビジネスにも当てはまる。今回のコラムでは、ネトフリとDAZNというわかりやすい題材を使って、見落としがちなビジネス視点について着目してみた。
 つまり、表面上の話だけに惑わされることなく、本質をしっかり見抜く目を養っておくことが重要ということだ。

【プロフィル】米ニューヨーク州立大ビンガムトン校卒業。経営学専攻。NY市でメディア業界に就職後、現地で起業。「世界まるみえ」「情熱大陸」「ブロードキャスター」「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、ディスカバリーチャンネルやCNAなどのアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。
タイトルとURLをコピーしました