「爆風に耐える」「汚染空気を浄化する」「地震で崩れない部屋」 命守る最新技術が集結 大阪で防犯防災展

 有事や自然災害、犯罪などに備える危機管理分野の総合展示会「防犯防災総合展2026」が4月15〜17日、大阪市住之江区南港北のインテックス大阪で開かれ、出展した157の企業や団体が来場者に最新技術を披露した。

 政府がこのほど、ミサイル攻撃などを受けた際に住民を守るシェルターの確保に向けて初の基本方針を閣議決定したことを受け、日本シェルター協会の9社が出展したブースにも注目が集まった。

シェルター向け換気装置「ATバリア150」を紹介するプロテクトアーツの小熊社長=4月16日、大阪市住之江区(撮影:佛崎一成)

外部の汚染空気を浄化する換気技術 プロテクトアーツ

 シェルター向けの換気装置を開発するプロテクトアーツ(札幌市)は、核・化学・生物兵器などで汚染された外気を浄化するシェルター向け換気装置を紹介した。

 主力の「ATバリア150」は毎時150立方㍍の風量で、約20畳の空間で8人程度に対応する。一方、家庭用シェルターなどを想定した小型機種「ATバリアlite」は約10畳で4人程度を見込む。小熊正輝社長によると、「現在、主力機種をさらに小型化する改良も進めている」という。

 同社が扱うのは換気装置本体と、衝撃に耐える専用バルブで、シェルターの箱部分は別会社が担う。これまでにシェルター本体を販売する企業のモデルルームなどへの導入実績があるほか、防衛省や電力会社、原子力発電所関係などからの引き合いもあるという。

 今後、同社が大きな強みとして見据えるのが一酸化炭素(CO)対応だ。地上で大規模な火災が起きれば外気にCOが混じる恐れがある。このため、同社は「金のナノ触媒」で有毒なCOを二酸化炭素(CO2)に変換する新技術を名古屋大と共同で開発した。

 小熊社長は「換気装置が常に外気を取り込み続けるので、シェルター内にCO2が滞留する心配もない」と話す。COにも対応した新製品は8月ごろの発売を目指しているという。

 ブースを訪れた医療関係者からは「医療機関での空気感染対策にも利用できるか」という相談も寄せられており、小熊社長は「今後、試験データを蓄積してエビデンスを整えたい」と話していた。

爆風やがれきに備える防爆扉 イトーキ

防爆扉「バウンスバック」について説明するイトーキ技術主幹の山口さん=4月16日、大阪市住之江区(撮影:佛崎一成)

 大阪で創業し、オフィスの空間設計や家具の製造販売を行うイトーキ(東京都)は、シェルターの弱点となる「出入り口」に着目し、安全性と操作性を両立した純国産扉を紹介した。

 海外製のシェルター扉は操作に大きな力が必要だったり、鋭利な構造で安全面に課題があったりするという。そこで同社は、指や足先を挟みにくい構造など、日本の製品安全の考え方を踏まえて細部まで見直した。

 耐久性の面では、国際的な目安とされる「1平方㍍あたり30㌧」の圧力を上回る40㌧相当を想定して設計。扉は約1.4㌧の重さだが、女性や子どもでも開閉できる軽い操作性を実現した。山口さんは「有事の際は誰が操作するか分からない。だからこそ、誰にでも扱えることが重要」と説明する。

 特徴の一つが爆風の力を一点で受け止めず、建物側へ逃がす独自構造だ。一般的な構造では、衝撃で扉のヒンジ部分に負荷が集中して部材がゆがみ、開閉できなくなる恐れがある。このため、「バウンスバック」はヒンジとは別に扉自体が平行に動いて力を吸収する。現在、世界特許を出願しているという。

 さらに、防水・気密性能に加え、金庫技術を応用した耐破壊性や、コンクリートを内蔵し耐熱性も備える。津波などの自然災害からテロや有事まで、多様な危機を想定した。

 また、シェルター内では避難経路を複数確保する「二方向避難」が重要になる。山口さんは「通常の大扉は外開きなので爆風の圧力などに強い一方、外側にがれきが積み上がると開けられなくなる恐れがある。このため、大扉とは別の非常脱出口は内開きにし、扉自体を小さくして圧力の影響を抑える設計にした」と話している。

古い木造住宅に後付けの耐震シェルター ミホ工業

 戸建てリフォームなどを行うミホ工業(神奈川県)は、住宅の一室に設置する耐震シェルター「安全ボックス」を出展した。木造住宅の1階部分に鉄骨製の空間を設け、地震で家屋が倒壊しても、内部だけは守られる仕組みだ。同社取締役部長の杉本ちかさんによると「古い木造住宅に住む家庭などで導入が増えている」という。

 「安全ボックス」は既存住宅への後付けを前提にした製品で、設置の際は床や天井、壁を取り払い、基礎から施工する。規格は4.5〜8畳まで3種類あるが、実際には部屋の大きさに応じて、ほぼオーダーメードで対応するという。

耐震シェルター「安全ボックス」を紹介するミホ工業の展示=4月16日、大阪市住之江区(撮影:佛崎一成)

 設置場所として勧めているのは、寝室やリビングなど家族が長く過ごす空間だ。杉本さんは「特に旧耐震基準の木造住宅など、倒壊の不安がある家にこそ入れてほしい」と話す。

 耐震性能については、震度7クラスを想定し、上から34㌧の圧力に耐えられる設計。杉本さんは「一般的な木造2階建て家屋の2階部分の重さは15㌧程度で、地震で上階の重みで1階が潰れても、空間を確保できる」と説明する。2度の激震で1回目を耐えた住宅が2回目で倒壊した2016年の熊本地震や24年の能登半島地震でも課題となった1階部分の圧壊も想定している。

 価格の目安は工事費込みで300万円程度で、工期は1〜2週間。「住宅全体の耐震改修が難しい場合でも、家の一部だけを重点的に守る方法として提案している」と杉本さん。同社の地元の神奈川県では、景観規制などで大規模な改修がしにくい鎌倉地域からも引き合いがあるという。

災害を体感で学べる移動式の「アクセル号」 アジアクリエイト

 アジアクリエイト(愛知県)の展示は、災害などの危険性を体で覚える体験型車両「アクセル号」。車両内には、全方位から迫る実写のVR映像と本物の揺れを組み合わせた地震体感装置や、強風の中での移動の難しさを知る暴風体感装置、水害時の歩行の困難さを疑似体験する濁流歩行体感装置、浸水時に車のドアを開ける際の水圧の体感などが準備され、最大で9種類の災害を体感できる。

アジアクリエイトが開発した体感型車両「アクセル号」の内部。VRゴーグルを着けて地震を体感する来場者=4月16日、大阪市住之江区(撮影:佛崎一成)

 特徴は、企業で働く人の目線に絞った点だ。通勤中や勤務中、帰宅時に災害に遭ったら何が起きるのかを想定し、営業車で冠水路に突っ込む危険性や、工場などで地震が起きた際に設備が倒れ、電気系統が損傷して感電する危険など、実際の災害や労災を疑似体験することで危機意識を高めるのがねらい。

 「数字で雨量が100㍉、風速が何㍍と説明されてもピンと来ない。『そもそもそんな場所に行ってはいけない』と分かってもらうには体感しかない」と佐藤陽平社長。

 例えば、大雨で道路が冠水していても、納品や商談を優先して車を走らせてしまう会社員もいることから、佐藤社長は「体感していないから、車を走らせる選択肢が出てきてしまう。どれだけ危険かを経験していれば迷わず休む、行かないと判断するようになるはずだ」と訴える。

 全国には災害を疑似体験できる施設などがあるが、中身は子ども向けが中心で、企業研修としては物足りないケースが多いという。また、地震体験車なども人気で予約が取りづらい側面もある。

 こうした課題に対し、「センターごと走らせよう」と発想して生まれたのがアクセル号だった。全国でも同様の多機能型車両はほとんど例がないという。

 一方で、企業の防災意識には課題が残る。佐藤社長は「BCP(事業継続計画)や防災計画は作っていても、実際の避難訓練や体感型研修までできている企業は多くない」と指摘する。非常食の備蓄はあっても、社員一人ひとりが災害時にどう判断し、どう動くかを学ぶ機会は限られているという。

 アクセル号では、約30分で10人の研修が可能で、運用次第では1日100人規模にも対応できるという。企業が自前で準備する従来の訓練に比べてコストはかかるが、準備や運営を外部に一任しながら実践的に学べる点が強みだ。

 「災害時に無理をして出勤するのが美徳という時代ではない。見て、感じて、危ないと判断できる感覚を持ってほしい」と佐藤社長。知識だけでは身に付きにくい防災を、体感によって行動変容へつなげる取り組みとして注目されている。

(佛崎一成)

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