【わかるニュース】「戦」の続く新年へ いつ晴れる「ウクライナ」「コロナ」「円安」の三重苦

 京都・清水寺で発表される恒例の〝今年の漢字〟は「戦」。振り返ればロシアのウクライナ侵攻、初感染者が日本で見つかって3年が経とうとするが、終わらない新型コロナウイルスとの戦い。どちらも最初は「すぐに終わる」と希望的観測を抱く人が多かったが、気が付けばどちらも越年。われわれ市民も物価上昇と戦い、その直接原因となっている円安も、来年3月で1年になる。

 私たちの生活に直接、悪影響を及ぼしているこの〝3元凶〟を中心に、この戦いはいつまで続くのかを占ってみた。

2023年大予測

ウクライナ情勢の進展は?

 ロシア軍は今年の2月24日、ウクライナ全土への攻撃を開始した。無血でロシアの勝利に終わった2014年3月のクリミア侵攻を引き合いに、国際社会は当初、短期戦で終わることを予想していた。しかし、NATO(米加EUなどの北大西洋条約機構)加盟国による武器の大量支援でウクライナ軍は一歩も引かず、今や戦線は一進一退だ。

 現状では戦争の終結は全く見通せず、戦いは硬直化しているから、停戦協議による和平の可能性を考える時期。EUや米国側に立つ日本は、プーチン大統領の健康不安説などロシアのマイナス情報が多く流れがちだ。しかし、実際のロシアは世界有数の産油国で、小麦の輸出量も世界トップ。エネルギーと食料の供給不安がないから西側の全面制裁にも簡単にはギブアップはしない。むしろロシア産エネルギーに依存してきたEU側の方が音を上げそうだ。

 大国がバックに付いた停戦例として1950年の朝鮮戦争がある。北朝鮮は開戦わずか3日で韓国の首都ソウルを陥落したが、米国と中国が途中参戦してきたため戦争が長期化。休戦会談が始まったのは2年1カ月後だ。休戦協定の調印は、さらに1年後の53年7月だった。つまり、この戦争もまだ時間が掛かりそうに思える。

 仮に休戦が実現しても正常化は簡単ではない。クリミア半島を例に取ると、旧ソ連に併合された当時、現地に住むタタール人は強制的にソ連の内陸部に移住させられ、跡地にロシア人が入植して定住。この背景が後のクリミアのロシア帰属への布石となった。つまり、現地住民がいつの間にかロシア人にすり替わっていたのだ。 今日、同じことがシリアやジョージア、モルドバなどでも行われているとされ、「現地住民の意向」が実は「入植したロシア人の意向」だったりする。ロシアは絶対にウクライナ東部4州の帰属を撤回しないから先行きを見通せない。

 日本への直接的な影響は、ロシアのサハリン島開発利権を一部確保しているから少ない。しかし、自由陣営と専制陣営の対立は、G7(日米独英仏伊加)に対し新興経済大国「BRICS」(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)との間で次第に先鋭的となり、中間的な大国のサウジアラビアやトルコなども両勢力をにらむ。そうした思惑から国連安保理は全く機能不全に陥ったままだ。

 日本は地政学的に専制国側の中国、ロシア、北朝鮮と接している。年末、我が国の財源問題で激論となった唐突な「防衛予算倍増」の背景は、これらの国との緊張関係の激化を受けたものだ。

終結宣言なきコロナ

 年末に第8波に突入したコロナだが、街は人でごった返している。人々は「もうコロナは飽き飽き。 感染者数は多くても症状は軽いんでしょ」と甘く見ているようだ。WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長も 「終わりが視野に」と一定の安心感を示している。


▲ワクチン接種の準備をする看護師ら

 中国のゼロコロナ政策による混乱をよそに、自由陣営側の経済は急速に回復している。日本経済は2020年こそ旅行業や飲食業が大きく落ち込んだが、手厚い公金助成もあって21年には早くも回復基調に入った。個人向けネット通販もデジタル分野、物販分野で2ケタ成長が続出しけん引。22年には純利益過去最高の数字を叩き出す上場企業が相次ぎ、「もはやコロナではない」というのが経済界の認識だ。

 では、コロナ禍の終息はいつか?

 結論として、次々と変異を繰り返すコロナウイルスの消滅は当分ないと見る。09年に世界中をパニックに陥れた「新型インフルエンザ」も消滅したわけではない。治療薬が出来て普通のインフルエンザになっただけだ。つまり終息を漫然と待って、ウィズ・コロナ(コロナと共に)で反転攻勢ができていない企業は、市場から退場を迫られる可能性が高い。

円安は春以降が勝負

 今年8月、20年ぶりに1ドル130円台に進んだ円安は、9月に145円、10月に150円をつけた。11年10月の戦後最高値75円をつけた時に比べ、円貨は半値になった。

 もともとアベノミクスで演出した円安による輸出促進だが、ウクライナ侵攻とコロナ禍から反転するような世界の経済成長が到来し、未曾有のエネルギーと原材料の流通危機に陥っている。そこに、輸入価格に直結する円安は、物価が急上昇する〝悪いインフレ〟を広げている。

 外国人投資家は「黒田総裁がいる限り円高誘導はない」という安心感で市場売買しているから、来年4月の任期満了に伴う総裁退任で、簡単に10円程度は円高に振れるだろう。

統一地方選の大阪維新は?

 23年の大阪の明るい話題は地下駅「大阪駅(うめきたエリア)」の開業。当面はこれまでJR大阪駅を通過していた特急「はるか」「くろしお」などが停車するだけだが、新駅ビルも25年春に完成。将来はさまざまな鉄道会社が乗り入れる予定。グランフロント大阪西側の駅上には4万5000平方mの都市公園「うめきた公園」(27年完成)が広がりJR大阪駅と直結。1万人規模のイベントが可能になる。キタの玄関口の新たな顔がいよいよベールを脱ぐ。

 4月は統一地方選。大阪府知事と大阪市長の選挙がある。前回は知事と市長が共に任期途中で辞任し、ポストを取り替え共に初当選する離れ業を演じた大阪維新の会は、その間の衆院選、参院選を引き続き大勝し今回も圧勝の情勢。

 創設メンバーの松井一郎市長(58)は今期限りで政界引退するが依然として影響力を保持しそう。後継市長候補の横山英幸府議(41)の対抗馬は見当たらず、吉村洋文府知事(47)と合わせ、自民党系では対抗立候補者名すら挙がらない。現時点では、維新公認候補信任だけの無風に終わりそうだ。