守口、門真両市を主要放送エリアとするコミュニティーFM局「エフエムもりぐち」(通称・エフエムハナコ、守口市)が3月末で全放送を終了、閉局した。インターネットや交流サイト(SNS)の普及による情報伝達手段の多様化が背景で、開局30周年を目前に幕を閉じた。「最後の一日」は、電波を通じて「いつかまたどこかでお会いましょう」と再会を誓い合った。
「京阪に乗ってるときが一番泣きそうだった。きょうで最後なんやなって。でも、泣いてへんけど」
京阪守口市駅前にある守口文化センター内のスタジオでは、レギュラー番組「プロムナード82・4」金曜担当パーソナリティーの西田ゆいさんが、涙をこらえながらもジョークを飛ばした。
■委託料打ち切り
同局は、1993年7月に守口市内の集会所で開局。コミュニティー局としては創立が全国で2番目に古く、交通、防災、地域情報などを発信してきた。
両市は放送業務委託料として年間計4千万円を支払ってきたが、これが収入の8割を占め、経営改善を求めてきた両市はこれが見込めないと判断。行財政改革の一環として、筆頭株主である両市が支払いを2022年度で打ち切ることを昨年11月に通告していた。
近年、地震や台風など自然災害が相次いだことから、全国で放送事業者数は微増傾向にある。日本コミュニティ放送協会によると、阪神大震災があった1995年以降に急増し、2022年12月時点で全国で339の局が稼働している。
■まつりにも出張
一方で、昨年2月に「エフエムひらかた」(枚方市)、今年3月末には「エフエムあまがさき」(兵庫県尼崎市)と、都心部で閉局が続く。守口市の担当者は「高齢者の多くがスマートフォンやパソコンを保有し、情報発信がラジオでないといけない理由は見当たらない」と説明する。
急きょ昨年12月に就任した南文裕社長(72)は、同市職員だった00年代、ハナコが企画に加わった市民まつりの担当としても深く関わった。「大きなトラックで舞台を組み、にぎやかだった。ヘビーリスナーも多く、寂しいし残念だ」と唇をかんだ。
■放送通じて交流
最終日となった3月31日は、通常は午後6時までの生放送を「閉局特番」として1時間延長。29年間携わり、「人生の半分以上をハナコと共に過ごしてきた」という大槻直美さんがメインを務め、勢ぞろいした各曜日のレギュラーメンバーと思い出を語り合った。
最後の姿を目に焼き付けようと、スタジオ前には続々とファンが来訪。リスナーの一人で、会社員の男性(53)は「地元の情報が流れてくる存在意義は大きかった。放送を通じてリスナー仲間ともつながることができた。何とか残してほしかった」と惜しんだ。
同日には臨時株主総会も開かれ、清算に向けての議案が次々と可決された。同局は事務所を市役所内に移し、9月ごろまでに結了することになっている。