【外から見たニッポン】米大統領選結果が経済に与える影響

Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

Spyce Media LLC 代表 岡野健将氏
【プロフィル】 米ニューヨーク州立大ビンガムトン校卒業。経営学専攻。ニューヨーク市でメディア業界に就職。その後現地にて起業。「世界まるみえ」「情熱大陸」「ブロードキャスター」「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、ディスカバリーチャンネルやCNA等のアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。

 米大統領選挙まで1カ月を切りましたが、ここにきて何となく手詰まりの状態になっているようです。次から次へと異常事態が発生していた時期と比べると面白みのない平凡な日々です。

 地味に行われたJDバンスとティム・ウォルズの両副大統領候補による討論会は、結果的に引き分けとされる平凡なものでした。

 内容は、お互いに自分の言いたいことだけをしゃべり続けてPRメッセージだけを語り、司会者からの質問には全く答えていません。

 見た目は整然とした討論会でしたが、中身はバイデンVSトランプのときのように、好き勝手なことだけをしゃべっていて本質的には何も変わらなかったのは残念でした。

 おまけに両候補を見ていると、万が一の際に大統領になれるようなセンスやカリスマ、タレント性は持ち合わせていないことが伝わります。

 大統領選における経済面に目を向けると、トランプ、ハリスの間には違いが見えます。トランプは所得税の減税と化石燃料の採掘や利用を進めてインフレーションを下げ、金利も引き下げるべきだと訴えています。しかし、関税を引き上げるとも主張しているので、それは結果的に物価の上昇に繋がる可能性も高いと言えます。

 ハリスは、法人税の引き上げとグリーンエネルギーの推進、住宅購入への補助金やスタートアップへの税控除、社会保障の充実と中間層への支援などを訴え、典型的な民主党の政策だと言えます。

 ウォールストリートや大企業の多くは、トランプが勝つ方がメリットが大きく、またエネルギー業界の中では原油や天然ガスを売買する企業はそれらの供給が増えることで原油価格が崩れるため損失を被ることになります。それ以外の石油製品の製造やガソリンを大量に使う運送業や火力発電所などの事業は大きな利益を出す可能性が高くなるでしょう。

 ハリスが勝つとグリーンエネルギー関係などは一気に成長すると期待されています。医療業界や保険への支出が増えることで医薬品企業、そして住宅需要の押し上げで建設や建築、資材の販売などの住宅関連業界もにぎわうと予測されています。

 また、トランプが勝つ場合、国会議員選挙でも上院下院とも共和党が勝つ可能性が高いので、トランプの政策はそのまま実行されることになります。しかしハリスが勝つと国会議員選挙ではねじれが生じる可能性が高く、その場合は超党派で合意出来ない政策は軒並み実行不可能になります。現在ハリスが掲げてる目玉政策の多くが絵に描いたモチになってしまい、国民の生活も苦境に立たされるかもしれません。

 日本への影響としては、トランプの関税引き上げは間違いなく輸出製品に影響が出ますし、メイド・イン・アメリカにこだわっているので日本企業の米国への製造拠点の移転などもあり得ます。ハリスの経済政策はほとんどが内需関連なのでトランプほどのはっきりとした影響はないかもしれませんが、日本製鉄のUS スチール買収には反対を維持するかも。

 NISAが始まって以降、米国株に投資する人が増えていると思いますが、トランプ勝利なら先に挙げた業界以外に小型株全体の株価の上昇や仮想通貨市場の一段の上昇も期待されています。ハリス勝利ならリート(不動産投資信託)などが有望な投資先になるかも。

 短期ならトランプ銘柄やハリス銘柄なるものに投資するのもありでしょうが、長期で考えるなら、そういうリスクの高い銘柄は避け、どちらが勝っても確実に成長していくであろう銘柄を選ぶのが無難でしょう。

 指数連動型の投資信託はもちろんですが、個別株ならAI(人工知能)を駆使したビッグデータ解析を行い、米国防総省や米軍、米中央情報局(CIA)、米連邦捜査局(FBI)などを顧客に持つパランティア・テクノロジーズ(PLTR)や、急成長を続ける米国のファストカジュアル系レストランチェーンのカバ・グループ(同CAVA)などはどちらが勝っても安定した成長が期待できそうです。