芸人 つぶやきシロー × 個別指導キャンパス代表取締役 福盛訓之
〝笑う門には福盛来る〟。新教育総合研究会「個別指導キャンパス」の福盛盛訓之代表が、各界の人たちと語り合う対談シリーズの13人目は、あるあるネタをつぶやく漫談で一世を風靡し、近年はナレーター、俳優、作家としても存在感を発揮する芸人のつぶやきシローさん。
来た仕事をやるのが、一番いい(つぶやきシロー氏)
第三者こそ能力を冷静に見極められる(福盛氏)
福盛 つぶやき芸でブレイクされて、今はナレーターや作家、役者として活躍されています。
シロー 自ら積極的に挑戦したのではなく、オファーが来たから受けたというのが正直なところです。評価してくれる人がいるから、声をかけていただけます。自分の価値や適性は、他人の方が見えているのでしょう。だから来た仕事をやるのが、一番いいんじゃないかな。
福盛 第三者こそ能力を冷静に見極められるのでしょうね。どの分野も未経験からのスタートですか。
シロー 俳優にしてもナレーションにしても、学校に通ったり本格的にレッスンを受けたりしたことはありません。ただ、制作スタッフがサポートしてくれるから、ボロを出さずにできただけですよ。
福盛 同じテレビでも、バラエティとドラマでは全く違いますよね。
シロー ドラマは、脚本家の言葉を汲み取る一方で、現場では監督の考えにも応えないといけないのが難しいですね。セリフを覚える時も3行あったらビクッとします。逆に、そこが楽な部分でもあります。脚本があって、監督が演技指導してくれるから、自分で考えて喋らなくてもいいんです。NGがあっても撮りなおして、一番良い所を使うこともできます。バラエティは台本がありませんから、状況に合わせてセリフも動きも全部その場でセルフプロデュースしないといけないじゃないですか。それが大きな違いですね。
福盛 お笑い以外を経験して、世界が広がった実感はありますか。
シロー 執筆業は新しい可能性を感じました。意外とテレビは、言いたいことを口にできなかったりします。「ペンは剣よりも強し」というのは本当で、書き物はある程度まで許されちゃう。思った通りに書けるから、自分の変わった部分も自由に表現できる。小説なら登場するキャラクターに代弁させればいいんです。心の中に、言えないストレスを溜め込まなくて済みます。それに、口頭だと勢いで余計なことまで喋ることもありますが、文章なら推敲する時に一旦冷静になれるので安心です。
福盛 仕事の依頼が、活躍の幅を広げてくれたわけですね。豊かな才能を感じます。
シロー 本当のトップクラスは一握りじゃないですか。一般的に会社も2割の主要な社員が回していて、残り8割は替えが利くなんていわれます。僕は、いつでも代役と交代できるレベルで何とかやっているだけですよ。
福盛 X(旧ツイッター)では、1日1ネタを10年以上も続けておられます。代役に務まるものではありません。
シロー 面倒くさいし、いつでもやめてやるぞ、というのが本音です(笑)。でも、きっかけがなくて、そのまま長く続いちゃってる。あえて10年以上継続したコツを挙げるなら、ネタの感想を一切見ないからかな。最初はチェックしていましたけど、悪評があると気になるし、すぐに離れて発信のみにしました。
福盛 SNSとの付き合い方は、教育の現場でも課題です。
シロー 現代の子どもたちと僕らの子ども時代は違います。今の大人は、こうした子どもの悩みを解決できないんじゃないかな。親の幼少期にSNSはありません。悩みの内容が全く違うのに、大人側から一方的に意見を主張しても、子どもは見透かしていますよ。話が通じないから、聞く耳を持たない。結局は、子ども同士でクリアするしかないよね。だから、もしかしたら乗り越えられないこともあるだろうけど、苦労した体験は大人になってからきっと何かの役に立つはずですよ。
福盛 社会を観察する力も、共感させるつぶやきに繋がっているのでしょうね。
シロー コントや漫才は練習も必要ですし、演技力と発想力も求められます。その点、あるあるネタは簡単ですよ。面白いなんて声もありますけど、本当に誰でもできます。
福盛 Xのフォロワーが100万人以上を誇る、つぶやきシローさんが「誰でもできる」と言ってくれるのは勇気が出ます。
シロー 目線を変えて「つぶやき」の体裁にしたら、たまたま世に出ちゃっただけ。つぶやき芸なんて芸じゃない。何ならただの愚痴ですからね。一方で全てのお笑いに共通している根本も「あるある」だよね。共感できないと、お客さんも笑えない。そして、入りやすくて、誰でもできるのも「あるある」。あるあるネタで、安っぽい笑いをやっています(笑)。
福盛 長年のファンがいて、オファーを出す方がたくさんいらっしゃる。やはり誰でもできるものではありません。
シロー なるようになってきただけです。大きな結果を出せずに、何かとぐちゃぐちゃやっている人間ですよ。
福盛 謙遜しすぎです。この対談も、つぶやきシローさんの飾らない本音が読者の共感を呼ぶのではないでしょうか。貴重なお話をありがとうございました。