【対談シリーズ】学習塾代表とアナウンサーの滑らない話

フリーアナウンサー 登坂淳一 × 個別指導キャンパス代表取締役 福盛訓之

 〝笑う門には福盛来る〟。新教育総合研究会「個別指導キャンパス」の福盛盛訓之代表が、各界の人たちと語り合う対談シリーズの14人目は、NHKアナウンサーを経て、現在はドラマやバラエティ番組など多岐に渡って出演するフリーアナウンサーの登坂淳一さん。

ポリシーを否定する発言は絶対にしない(登坂氏)
生徒の声を聞くことを重視(福盛氏)

フリーアナウンサー 登坂淳一さん
とさか・じゅんいち
 1971年、東京都板橋区出身。元NHKアナウンサー。2018年にフリーアナウンサーとして独立し、タレント、俳優のほかYouTuberやTikTokerとしての顔も持つ。趣味のカーリングではプレーヤーとして大会にも出場。日本カーリング協会公認カーリング指導員、日本穀物検定協会公認お米アドバイザー。

福盛 NHKのアナウンサーからフリーになり、現在はバラエティからドラマまで幅広くご活躍です。経験したことのない領域に飛び込むのは、大きな勇気が必要だったと思います。

登坂 NHKを辞めるということが、まずとても勇気のいることでした。キャリアや年齢を重ねるほど、これまでの生活を変えるのが難しくなり、新しいことへ取り組みにくくなります。

福盛 それでも決心されました。自信はありましたか。

登坂 人生に占める仕事の割合が大きくなり、円グラフにするとほとんどがワークになりつつあったのです。そこで「ライフの中には、もっと色んな要素があるはずじゃないか」と、生き方を考え直しました。そして人生一度なら、やらない後悔より、やってみることを選んだのです。自信は全くありませんし心配ばかりでしたが、さまざまな人との出会いがあり、貴重な体験ができるという期待もありました。

個別指導キャンパス代表取締役 福盛訓之さん
ふくもり・としゆき 
 1973年、大阪市出身。大学在学中の19歳で起業。96年に新教育総合研究会「個別指導キャンパス」(大阪市北区)を設立。個別指導塾を全国約350教室で展開している。第21回稲盛経営者賞第1位、第1回大阪府男女いきいき事業者表彰優秀賞、紺綬褒章など受賞多数。

福盛 近年は俳優業も積極的です。

登坂 自ら希望していたのではなく、偶然そういう声をかけていただきました。新しい世界でもあるし、出会いが生まれるチャンスです。まずは一歩、踏み出してみました。半面、長年役者を続けているプロの中に素人同然の自分がいる感覚はプレッシャーでしたね。人物設定やシーンごとに、最適な動きを模索して理解しなければいけません。常に考えては悩み、思い、また悩み。正解かどうか分からないけど、とりあえず試してみる感じでした。

福盛 悩んでいるとは思えないほど、堂々として見えます。

登坂 若いアナウンサー時代に学んできたことのひとつが、不安でもパフォーマンスに出さないのがプロだということ。私の場合は、計画的に段階を踏んで行動するよりも「こんなことできるかな。まず、やってみよう」と、気軽にトライしています。

福盛 子どもたちのチャレンジ精神を伸ばすには、どうすればよいでしょう。

登坂 とにかく、何でもやらせてみてください。子どもはどんなことにも興味があるから、好奇心を持って次々と行動を起こします。そんな時、周りの大人は「怪我をするかもしれないから」「汚れるかもしれないから」と、先回りして止めてしまう。これが良くないのではないでしょうか。失敗しても終わりではなく、必ず次に繋がります。この感覚は、経験しないとわからない。見守る大人が、「やってみな!」と背中を押してあげて欲しい。試してみたい、チャレンジしたいと思う気持ちを尊重してあげる。大人側の課題ですよね。

福盛 教育においては、生徒の声を聞くことを重視しています。NHK時代を振り返って、登坂さんが後輩の指導で大切にしたことは何でしょう。

登坂 何が知りたいのか、将来どうなりたいのかを丁寧に聞き出すことと、ポリシーを否定する発言は絶対にしないよう心がけました。指導は、それぞれの個性を見極めて、ポジティブな部分を3つ話したらネガティブな箇所を1つだけ修正するスタイルです。また、教えることは、逆に自分が問われてもいます。内容が独りよがりになっていないか、意識しなければいけません。

学習塾代表とアナウンサーの滑らない話

福盛 SNSなどコミュニケーションが複雑な時代です。伝えるプロとして、子どもたちにアドバイスはありますか。

登坂 独り言でもSNSで発信すると、それは独り言になりません。何かを発信する時、その先には受け取る誰かがいて、自分と同じ考え方の持ち主とは限らないのです。対象が友達の時もあれば、不特定多数の場合もあります。発信する前に、相手がどう感じるか、自分だったらどう思うかを考える時間を作ればいいのかな。感情に任せて書いて、即発信が一番良くない。大抵、直後に後悔の気持ちがこみ上げてきます。目の前にいる友達なら、悪いと思ったらすぐに「ごめん」と謝れるけど、気持ちが届きづらいSNSではそれが言いづらい。面と向かって、どれだけ心からのコミュニケーションができるかを大事にしてください。

福盛 去年、第二子が誕生されました。子育て世代の読者に応援メッセージを。

登坂 自分の経験上ですが、第三者の「こうしたらいい」的な声は、あまり気にしなくても構いません。それよりも、子どもの力を信じてあげる。我が子の良い所や可能性をたくさん探して、どんどん挑戦させてあげてください。どんなに些細でも日々できることが増えていく様子は、親にとっても大きな感動になります。

福盛 周囲の意見ではなく、子ども自身を信じる。とても心に響く言葉です。貴重なお話をありがとうございました。