お好み焼き千房の中井社長も「大打撃!」 外食の外国人採用に〝停止令〟 人材争奪戦で食の崩壊ドミノの心配も

 街の胃袋を支える外国人スタッフの受け入れが停止する。法務省が放った外食分野の「特定技能」の新規受け入れ停止令に、業界が凍り付いている。大阪の重鎮・千房の中井社長も「まさに大打撃」と思いを吐露。人材争奪戦は激化し、影響は病院食にまで波及する恐れも。ニッポンの食卓を襲う外食の人手不足に迫った。(西山美沙希)

外食店で働く外国人スタッフ。特定技能1号の新規受け入れが原則停止となり、現場では人材確保の難しさが増している(クックビズ提供)

外食分野の特定技能、受け入れ停止 外国人材不足で業界に試練

 ファミレスのホール、ラーメン屋のカウンター。気づけば外国人スタッフの姿は、街の外食業にすっかり溶け込んでいる。そんな中、外国人が就労するための在留資格である外食分野の特定技能を巡り、法務省は同分野における新規受け入れを4月13日以降、原則停止すると発表。慢性的な人手不足を外国人材で補ってきた外食の現場に、衝撃が走っている。

大阪の現場「大打撃」

7年で4万6000人、そして停止へ

 外食業界の人材確保を支えてきたのは「特定技能1号」という在留資格だ。2019年の制度開始以降、23年以降は半年ごとに5000人超のペースで急増し、今年2月末時点で約4万6000人に達した。上限の5万人が目前となったため、法務省は4月13日以降の新規申請を原則不許可とし、資格試験も停止。停止期間は最長で29年3月末まで続く可能性がある。
 外国人雇用は当初はパート・アルバイト採用が中心だったが、3〜5年と就労を継続する人材が増え、今や「店長候補として採用できる」とまで言われるほど現場の中核を担うようになっていた。慢性的な人手不足が続く外食業界にとって、特定技能外国人はもはや欠かせない存在だった。その採用が突然止まったのだから、業界への打撃は大きい。

切迫する現場、大阪でも

 こうした状況を受け、外食企業の間では「内定済み人材の扱いをどうするか」「今後の採用をどう立て直すか」といった問い合わせが相次いでいる。飲食業界に特化した人材サービス会社「クックビズ」(大阪市)のグループ会社「ワールドインワーカー」(東京都)が開催した緊急ウェビナーには飲食企業88社が参加。開催後のアンケートでは、約8割の企業が「影響が大きく困っている」「あまり望ましくない」と回答した。

 大阪外食産業協会会長を務める「お好み焼き千房」の中井貫二社長も、「飲食業界全体として厳しい状況だ」と話す。千房でも今年だけで40〜50人規模の採用を進めてきたといい、措置について「大打撃」と表現した。「国への働きかけも難しい状況。順次対応していくしかない」と話した。

採用戦略の転換を迫られる企業

 「5万人という枠の中での奪い合いになる。資本力があり、雇用条件の良い企業に人材が集中していくのではないか」。前出のアンケートではこんな懸念の声も上がった。給料や待遇の良い店への人材集中が加速する見通しで、働く外国人側も「店長を目指したい」「待遇のよい都心で働きたい」とキャリア志向が高まっており、待遇改善に取り組まない企業では人材流出のリスクが高まる。

 また同アンケートでは4割以上の企業が、より経験豊富な人材が長期就労できる「特定技能2号への育成強化」を次の手として挙げており、外国人材を長期的なプロフェッショナルとして育てる方向へのシフトも起きている。人材確保競争の激化が、外国人・日本人問わず待遇改善の追い風になる可能性もある。

外食業の盲点〝給食〟にも影響

 影響は飲食チェーンだけにとどまらない。病院や福祉施設の給食業務も制度上「外食業」として扱われるため、今回の停止措置がそのまま適用される。地方の医療・介護現場ではすでに人手不足が深刻で、給食を支えてきた外国人スタッフが補充できなくなれば、そのしわ寄せは患者や入居者にも届きかねない。

外食だけの話ではない

 外食業と同じく、介護・建設・飲食料品製造など他の分野でも28年にかけて順次、上限到達が見込まれている。外食業の上限到達は、日本社会が外国人労働力とどう向き合うかを問いかけている。

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