〝争族〟にしないアドバイス 荒鹿法律事務所 弁護士 安藤良平さんに聞く

荒鹿法律事務所 弁護士 安藤良平さんに聞く

自分の履歴、エンディングノートの作成を

―相続がよく「争族」になると聞きますが。

 晩年にきょうだい間でもめ争族になるケースが多いですね。相続人に配偶者が含まれる場合では、比較的もめるケースは少ないです。親御さんが年をとると、きょうだいの誰かが、親の介護や財産管理をするようになる。介護や親の身の回りの世話をしているきょうだいは「自分はこんなにやっているのに」との思いが出て来る。一方で、ほかのきょうだいからしてみれば、自分のお金と親のお金をごっちゃにして管理されていたり、管理状況の説明がなかったりすると、怪しいとの思いが強くなって、後に争族になるケースもみられます。

―具体的には。

 相続財産に不動産があると、トラブルが起こった場合は、解決に苦労することが多いです。何故かというと、お金は簡単に分けることができますが、不動産はそうはいかない。相続人で共有にしたとしても、その後に発生した相続でさらに共有者が増えて権利関係が複雑になることもある。わたしは、不動産は一人が単独で相続するほうがいいと思っていますが、そのためには他の相続人が不動産の代わりに相続するだけのお金が相続財産にないといけない。また地方に行けば農地が多いですが、農地は資産価値が低く、換金も難しく大変ですね。

 相続のタイミングできちんと協議して手続きをせずに、亡くなられた方の名義のままで残っている不動産ってかなり多くて、いま日本で所有者が特定できない土地の面積は九州の総面積を上回ると推計されているほどなんですよ。

―争族を防ぐには。

 遺言書は書いていない人の方が多いのが実情ですが、やはり遺言書を書いていただきたい。遺言書は故人の遺志ですから最大限尊重されます。相続人間の公平を考えた内容の遺言を準備しておくというのが、紛争予防としては一番効果的です。

 いきなり遺言書の作成はハードルが高いという方も多いでしょうから、わたしはまずは自分の履歴を書くつもりでエンディングノートの作成を勧めています。都島区では「もしもの時に伝えたいこと わたしのために、大切な人のために」のタイトルで区版の〝エンディングノート〟を作成して、配布されています。そこには、自分のことや、家系図、家族と知人、もしもの時の自分の思い、財産、遺言書、葬儀、伝えておきたいこと―などが記入できます。エンディングノートからは、誰が相続人となるのか把握できますし、故人の財産の内容や、人生観、遺族らへの思いも知ることができます。法律の専門家として相続の相談を受けたとき、遺言書がなかったとしても、このような情報があるかないかで対応のスピードが全然違います。

 これからの問題としては〝デジタル遺産の相続〟が考えられます。現在では現金ではなく、スマホ決裁で完結する時代になり、証券取引、ネットバンキング、仮想通貨など、目に見えない資産が存在し、生活の中でもごく普通に使われています。近い将来、デジタル遺産の相続の時代を迎え、その対応も必要になってくると思います。

 あとは、「私でも遺言書を作成した方が良いのか」といったちょっとした質問でも結構ですので、専門家にお気軽に相談をして頂きたいですね。私が所属しているNPOでも無料電話相談を行っていますが、最近はこのように無料で相談できる窓口も数多くありますので、ご利用いただきたいところです。


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