わが家に相続税はかかる? 「基礎控除額」がポイント

お盆を前に相続を学ぶ

 まもなくお盆の季節。お盆に親族で集まると話題に上りやすい相続の話。「わが家は相続税がかかる?」「誰が遺産を引き継ぐ?」「どういう状態で引き継ぐ?」などの話題に対応できるよう、事前に学んでおこう。

お盆を前に相続を学ぶ

 実際に相続税がかかるのは全人口の約8%程度。単純に言えば〝お金持ち〟だけで、大半の人は相続税はかからない。もし、相続税が発生する場合は亡くなった翌日から10カ月以内に申告が必要になる。
 
相続税がかかるかどうかは、相続する財産と、控除してもらえる額の2つを計算すればいい。ちなみに相続する財産はプラスの財産だけでなく、マイナスの財産、いわゆる借金も含まれる。

まずは基礎控除を知る

 基礎控除は次の算式で計算できる。
 基礎控除=3000万円+(法定相続人の数×600万円)

 法定相続人は遺産を相続する権利のある人で、民法で定められた法定相続人。

 試しに相続税の基礎控除額を計算してみよう。

 亡くなった人に妻と子供2人がいた場合は、法定相続人は3人だから、3000万円+3人×600万円=基礎控除4800万円。つまり、財産額が4800万円を超えなければ、相続税はかからず、申告も不要だ。

遺産のうち課税される額は

 相続する財産と基礎控除額が分かったら、次に相続税の課税対象となる額を計算しよう。式は「相続する財産」─「基礎控除額」。仮に財産が1億円で、基礎控除を先ほどの4800万円とした場合は、財産1億円─基礎控除4800万円=5200万円が「課税遺産総額」となる。

遺産分割協議

 亡くなった人の財産の分け方は、遺言書が残されていれば、基本その通りに分けることになる。遺言書がなければ、相続人全員で話し合って決める。

 法定相続分は、あくまで民法で定められた相続の割合の目安であり、全員の合意があれば従う必要はない。この相続人全員の話し合いを「遺産分割協議」といい、その内容を書面に記し全員の実印を押印したものを「遺産分割協議書」という。

 この遺産分割協議で、実際の遺産の取得割合が決まり、相続税の金額は、協議の内容次第で大きく増減する。「遺産分割協議書は税務調査でも必ず確認され、銀行で故人の通帳の名義変更をする場合などにも使用する」(弁護士)

相続税の総額を計算

 課税遺産総額の金額が計算できたら、次は相続税額の計算だ。課税遺産総額は5200万円で、法定相続分として
妻2分の1、長男4分の1、次男4分の1で分けてみる。
●妻 =2600万円
●長男=1300万円
●次男=1300万円

 この数字をそれぞれ速算表に当てはめ相続税を計算してみると―。
●妻/2600万円×相続税率15%―控除額50万円=340万円
●長男/1300万円×相続税率10%―控除額50万円=80万円
●次男/長男と同じ計算なので80万円

 これらを足し相続税総額は500万円と判明した。

相続税速算表

分けられない不動産

 相続で最もトラブルになりやすいのが不動産をどう遺産分割するかだ。お金なら簡単に分けられるが、不動産は分けられない。そこで、やっておくべきなのが、持ち家の売却相場を調べること。売却するか、誰が住むかも売却相場を調べないと判断ができない。

 また、土地の相続税は「土地の評価額×税率」で計算する。評価は「路線価方式」と「倍率方式」の2つがあり、その年の路線価は毎年7月に国税庁が発表している。路線価を使う場合、評価額は「路線価×土地の面積(平方㍍)」で計算できる。

 市街地は路線価が付されているが、郊外は路線価が付されない土地がある。この場合に倍率方式を採用する。評価額は「固定資産税評価額×倍率」で求める。

油断は禁物

 「ウチはたいして財産がないから、心配ない」と思っている人が多いかもしれないが、上の円グラフを見てほしい。家庭裁判所にもちこまれたトラブルの遺産額は、相続税がかかるケースの少ない5000万円以下が約7割を占めている。財産の額が少なければもめない保証はなく、遺産分割にまつわる問題は、どのご家庭にも発生する可能性があるのだ。

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