フリマアプリでトラブル多発!! 表には出ていないこんな事例も! 購入者だけではない! 出品者も〝ご用心〟


▲森本さんがメルカリに出品した冷蔵ショーケース

詐欺? 詐欺でない? 〝疑惑プンプン〟の巧妙な取引

 「誰でも簡単に顔も合さずに売り買いができる」ことから、スマートフォンを使ったフリーマーケットアプリの利用者が増え、取引件数も大幅に増加している。しかし、非接触型の取引は、個人利用が多いという特徴ゆえに、トラブルも驚くほど多発している。なかには明らかに詐欺とわかる事案もあるが、件数とともに増えているのが、巧妙で「どちらとも言えない」疑惑の取引や、「言いがかり」としか見られないトラブルなどだ。弁護士のひとりは「われわれが介入しないレベルの金額でのトラブルが多く、明らかに〝その線〟を狙った悪質なケースもあるようだ。事例を公表することで世の中に注意を勧告することが重要」と警告する。

 月間2000万人以上のユーザーがいる日本最大のフリマサービスの「メルカリ」。2013年夏に登場し、すでに流通総額は5000億円に達している。これだけ大きな会社であれば、「利用するのに何の問題もない」と思ってしまいがちだが、そうではない。

 メリカリだけでなく、フリマアプリ全体でトラブルは年々増えている。しかも、「商品が届かない」「中身が空っぽだった」「違う商品、ニセモノだった」など購入者側が被害に遭うことは容易に想像できるが、実は出品者側も油断はできない。「購入後にキャンセルされ、ニセモノにすり替えて返品された」、「後払い決済」というサービスをつくなど、詐欺が頻発している。

トラブルの元は23万円で出品した冷蔵ショーケース

 「こんなことがまかり通るのが恐ろしいし、悔しい」

 こう憤るのは、現在もトラブルと奮戦中の大阪・京橋(都島区東野田町)の美容室「ユシン・ヘアー」の関係者。トラブルの経緯を聞いてみた。

 事の始まりは、美容室と背中合わせの場所で営んでいた総菜店を、コロナ禍で今年2月に閉じたことからだった。店で使っていた「業務用冷蔵ショーケース」(190cm×120cm)が不要になった。折からメーカーの製造ラインが止まって品薄となり、業務用の冷蔵庫は中古品も大きく値上がりしていた時期だった。

 「処分しよう」とメルカリに出品。23万円の値段で売り出したのが4月だった。

 6月になって買い手が付いた。これがトラブルの相手だった。相手側が「購入する」と連絡したうえで「運送屋に引き取りに行かせるので、送料分を安くしてくれ」と言ってきたのが6月23日。運ぶのは東京と言っていたが、若者3人が台車で引き取りに来たのは、連絡から2時間後。運送屋の車は商店街には入れないので、「見ていない」し、伝票もなしだった。

 冷蔵ショーケースを持って行ってから1週間ほど経った同29日、相手から「破損している」とのメールが来る。詳しく状態を尋ねると「(内部の)ファンのところに凹みがある。扉と配水バナーの金属にキズがあり、粘着テープの跡もある」という。

 覚えがないので「運送途中にできたものでは」と追及するも「運送屋はそれはないと否定している」と言うばかり。「直接、運送屋と話をしたいので、連絡先を教えてほしい」と突っ込むと「運送屋は関係ない。お宅に教える義務はない」と逃げる。

 その後、購入者が「返品したい」と言ってきたため、メルカリに相談すると「送料を(メリカリが)負担するので、返品に応じてください」と言われ、応じるつもりになった。すると「引き取りに来い」という。ところが、聞いた住所を現地を管轄する役所に聞いても〝存在しない〟という。そして今度は「品物は3階に置いているので、降ろすのにクレーン車がいる。その費用が25~30万円かかるので、それをプラスしろ」と吹っ掛けてきた。

 そこでメルカリに相談すると、「事情が変わった。送料負担はなし」との方向に転換し、双方で話し合ってくれという。その後、メリカリが提示した解決策は「(メルカリが)半額を負担するので、向こうにある商品を渡してしまえ」という姿勢だった。

 「半額ではとても応じられない」とユシン・ヘアーの森本恵介さん(36)は訴えるも、事態は一向に進展しない。

 思いあぐねた森本さんは9月になって、地元の警察署などに相談したが「民事には介入しない」との予想通りの対応だった。

弁護士への相談は費用の方が高くつく

 もちろん〝民事不介入〟も内容によりけりである。そこが微妙なところであり、ブランド品の偽物などといった一発で「犯罪」と明白なものではなく、難癖をつけたり、過度の値下げ要求や「支払わない」などの微妙なケースを突いてくるものが増えている。

 メルカリは個人で売買するフリーマーケットのアプリである。フリマサービスは通販とは違い、消費者と販売業者間での取引ではない。アプリは取引の場を提供しているだけで、個人間取引であるため、トラブルが発生しても個人間で解決することが求められる。そこにトラブルが発生しやすい要因があるとはいえ、顔の見えない同士のやりとりという性格も、悪用されることにつながりやすいといえるだろう。

 迅速な機動力を売りに、民事事案を多く手掛る荒鹿法律事務所の安藤良平弁護士は「フリマアプリでの取引は〝匿名性〟という特徴があり、個人の〝信用〟が必要なく、悪用されるケースも少なくない。個人間で簡単に取引できることから、いろいろなものが出品されているが、詐欺まがいのトラブルも増えているので、そこを理解した上で利用することが必要」と警鐘を鳴らす。

 トラブル解決に弁護士を活用することについては「少額な取引でのトラブルは、被害額が回収できても、それ以上に費用がかかってしまう。このように依頼者に経済的メリットがない場合は依頼を断わることになる」と一般論での弁護士の立場を説明。「具体的にいえば100万円を超える額でなければ、リスクを背負うことになり、弁護士もやりたくない事案だろう。だからこそ、そこを狙って仕掛けてくる悪質な連中が増えているのかもしれない。巧妙な手口は〝トラブル事例〟をどんどん公表することで防ぐしかないでは」と警告する。