寝屋川市「空き家税」が成立 子育て世代へ住まいをバトンタッチする街づくりへ

 寝屋川市議会は9日、使われていない空き家の活用を促すための新しい税金「空き家流通促進税(空き家税)」の条例を全会一致で可決した。本会議の終了後、広瀬慶輔市長は記者会見を行い、この税金が「街を若返らせるための大切な一歩」であることを強調した。記者会見の内容と条例制定の背景までまとめてみた(濱田康二郎)

53年ぶりの人口流入傾向の寝屋川

 今、寝屋川市は大きな変化の時を迎えている。いじめ対策やディベート授業などのユニークな教育が注目され、子育て世帯の人口流入傾向が続く中、昨年は8566人の社会増となっていた昭和47年以来、53年ぶりに引っ越してくる人が出ていく人を822人も上回る「社会増」を記録した。JR寝屋川公園駅近くの小中一貫校、望が丘小中学校区内の新築の戸建て、マンション供給が呼び水にもなっている。

寝屋川市統計書から週刊大阪日日新聞が編集。国内の人口は減っていく自然減の傾向は止められないが、寝屋川市へ移住する人はこの2年間で激増している。

 しかし、市域全体で見ると寝屋川市はすでに住宅が立ち並ぶ過密都市であり「新しい家を建てる場所がもうほとんどない」という悩みを抱えている。せっかく「寝屋川に住みたい」という子育て世代がいても、住む場所が足りない。一方で、市内には活用されていない空き家が数千戸も眠っている。この「眠っている家」を動かすために、人々の行動変容を促し、新しい家族に引き継いでいくことこそが、今回の新税の最大の狙いだ。

「お金集め」ではない、背中を押すための税

 「税金が増える」という不安に対し、広瀬市長は「税収の確保(お金集め)が目的ではない」とはっきりと語った。予想される約1億4000万円の税収は、すべて空き家を壊す費用の補助や、街の安全を守るための活動に使い切る計画だ。市長は空き家の持ち主の約7割は寝屋川市外に住んでおり「片付けが面倒」という理由で放置しているケースが多いと分析。この税金は、そうした持ち主に「そろそろ動こう」と決心してもらうための「最後の一押し」として設計されている。

課税対象になる人は?

 寝屋川市の「空き家税」は、売買や賃貸募集するといった流通させる意思がなく、1年以上住んでいない家の所有者が対象になる。判断には水道の使用量や住民票のデータ、現地調査を組み合わせていくという。全ての空き家に一律に空き家税がかかるわけではない。例えば「数年後に戻る予定がある転勤」や「介護施設への入所」のような個別の事情がある場合は課税から外すといったような基準も設けている。逆にほぼ寝屋川市内では生活をしていない二拠点生活など、課税逃れと判断せざるを得ないようなケースとどうやって区別していくのかといった細かな点を今後、慎重に決めていく予定だ。

専門家のサポートと流通に至った場合のメリットも検討

 広瀬市長就任後、寝屋川市は家を売りたい、貸したい持ち主と不動産の専門家や実家の処分などの問題解決ができる業界団体を市がつなぐ独自の仕組みとして「寝屋川市空き家流通推進プラットフォーム」を創設。市民や寝屋川に実家がある人の相談は、今後増えると予想される中、プラットフォームの機能を強めていくと会見で強調。持ち主が抱える不安に応えていくために丁寧な説明と制度設計を行う必要があると話した。

本会議後、報道各社の囲み取材に応じる広瀬慶輔寝屋川市長

 市長は「家を動かす決断をした人へのインセンティブ(ごほうび)」についても検討していると発表。例えば家を貸し出したり、きれいに壊したりした人に対し、何らかのメリットを出す仕組みだ。「税金」という厳しい面だけでなく「協力してくれた人へのお礼」という明るい仕組みを組み合わせることで、スムーズな住まいの循環を目指す。

 寝屋川市は、増税という手段を使いながらも、その本質は「若い世代に選ばれ続ける、活気ある街をみんなで作る」という前向きな挑戦に向かっている。

 

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