生涯収入の減少や老後資金不足、一方では、住宅ローンの滞納など、経済的不安を不動産の有効活用で乗り切ろうとする取り組みが注目されている。その取り扱いに詳しい専門家に聞いた。
〝任意売却〟 は業者選びがポイント
「相談者で多いのが高齢者。住宅ローンの返済中に退職。収入がなくなり、残債の負担が大きく、自宅を手放さざるを得なくなる人が相談に訪れる」と、一般社団法人全日本任意売却支援協会の新井一毅代表相談員は話す。
住宅ローンの支払いを滞納し続けると、金融機関から督促が入り、放置すると、ローンの毎月の分割金を一括で支払う義務を負うことになり競売に掛かる。「任意売却を選択すれば、競売の申し立てを止められるだけでなく、残債を全額返済できなくても売却は可能で、新しい生活に支障のない範囲で残債の支払いが許される」(新井氏)。
また、「引っ越し費用も金融機関から売却代金の中から控除してもらえ金銭的負担が軽減されるが、競売に比べ短期間で引っ越さなければならない。任意売却の相談は、金融機関と交渉力のある業者を選ぶことが重要」(新井氏)と注意を促す。
〝リースバック〟 関係者全員で確認を
一方、自宅売却後、賃貸で住み続ける「リースバック」の利用が増えている。引っ越さずにまとまった老後資金を得られる半面、家賃や売却価格の設定を巡るトラブルも目立つ。
リースバックでは、賃借人として家賃を支払う義務を負う。仮に自宅の売却価格が満足のいく水準だとしても、家賃が想定以上に高く、解約もできないトラブルに見舞われるケースもある。「リースバックの活用は、住み続ける期間にわたって、毎月賃料が支払えるか、長期的な資金計画を考えることが大切」(新井氏)とアドバイスする。
また、「定期借家契約をする場合、『契約更新を希望する場合は応じる』との内容があれば安心だ」(新井氏)と、契約内容の確認を本人のみならず関係者全員で行うことを薦めている。