【特集 不登校④】全日制に代わる通信制高校とは? 不登校6つのパターン紹介

通信制高校とは

登校は年4日。梅田にある通信制「ルネサンス大阪高校」

 不登校の児童・生徒数が過去最多となる中、全日制高校に代わる新たな選択肢として通信制高校がクローズアップされている。ICT教育をいち早く導入した「ルネサンス大阪高校」(大阪市北区)は、必要な登校日数は年4日程度。自分のペースで通い、夢や目標に向けた授業が組めるのが強みだ。板倉正典校長は「人と異なることが、人に劣ることではない。いろいろな個性を持った生徒がいて、とても面白い学校」と柔軟な教育を提供している。

コミュニケーション能力も培われる「eスポーツコース」の授業
コミュニケーション能力も培われる「eスポーツコース」の授業

プレッシャーからの解放 「自分はもう不登校ではない」

 2014年に開校し9年目の同校。入学者の9割が不登校や高校中退からの転入だ。

 成相(なりあい)大輔教頭は「不登校の原因はさまざまだが、面接などから受ける肌感覚では起立性調節障害(朝起きれない、元気が出ないなどの青少年の成長過程によくみられる症状)も多い。そして対人関係がきっかけで登校できなくなったり、ひきこもりタイプ、発達障がいの子どもが多いと実感しています」という。

 入学理由で多いのは、オープンキャンパスで教員や在校生とのふれあいを通じた雰囲気の良さだ。

 朝起きや対人関係が苦手な生徒に通信制の学習システムは最適だ。認定教科書を利用した動画授業とネット学習。そして普段の学習であるレポートに加え、習得の確認として年1回テストを実施している。カリキュラムは自分で決められ、年4日程度の登校(スクーリング)は必要だが、「担任と相談しながら都合が良い日を選べる」(成相教頭)。

 理科の教師でもある板倉校長は「スクーリングでは、せっかく登校するのだから、実験など面白くてインパクトな授業を心掛けている」と笑顔を浮かべる。

 ルネサンス高校には「不登校」という言葉が存在しない。「自分はもう不登校ではない」という事実と「毎日登校する必要がない」というプレッシャーから解放されるためだ。不登校に悩む子どもたちにとって、心の回復と高卒までの歩みを同時に進められる環境づくりにつながっている。

「学校の在り方にも多様性が必要」と話す板倉校長(右)と成相教頭
「学校の在り方にも多様性が必要」と話す板倉校長(右)と成相教頭

夢や目標に向け、授業が組める

 同校の卒業率はほぼ100%。そして、生徒・保護者とも連携し、卒業後の「出口の保証」にも努める。これを可能にするのは、同校に在籍しながら将来に向けてやりたいことを本格的に学べるコースを設けているのが大きい。

 普段の生活から進路指導までしっかりサポートしてくれる「通学スタンダードコース」に加え、全国の高校で初めて「eスポーツコース」を開講。eスポーツは一人でプレーする印象が強いが、競技大会で勝つには「実用レベルの英会話能力、コミュニケーション能力、強いメンタルが必要」(成相教頭)とイメージとまったく違う能力が必要になる。

 このほか、自宅にいながら韓国トレーナーから学ぶ「アコピアK─POPコース」、エンタメ業界第一線の現場で活躍するプロの専門スキルを学ぶ「代アニコース」、生徒一人一人の夢や目標に向けた授業が組める「ダブルスクールコース」を用意している。

 「実は入学生の1割は才能豊かなさまざまな可能性を秘めた子どもが夢や目標に向けた授業や留学がしたいと入学しています」と成相教頭。

 実際、卒業生の多くが大学、専門学校、海外留学やIT関連企業などに就職。自らの個性に合った道に進んでいる生徒が多い。

 板倉校長も「人は学ぶことで成長する。目標が決まった子どもは強い。創立の思いである『人と異なることが人に劣ることではない』ように、学校の在り方にも多様性が必要」と話している。

不登校6つのパターン

 不登校が過去最多となったと言えども、原因はそれぞれ異なる。同校を取材するにつれ、不登校原因は6つのパターンに分類できそうだ。その中身を紹介する。

【1】朝起きられない 「起立性調節障がい」

 小学高学年から中学の思春期に多く、朝起きられないことから不登校につながる起立性調節障害。症状としては、午前中は調子が悪く、午後になると徐々に体調が回復する。夕方から就寝前はむしろ活動的になるケースもある。また、春や秋などの季節の変わり目に症状が悪化しやすかったり、天候の変化(気圧の変化)に影響を受けたりもする。

 不登校の児童・生徒の約30~40%の原因は起立性調節障害と推定されており、軽症例も含めると小学生の5%、中学生の10%に存在。欠席を繰り返し不登校の状態に陥る重症例は約1%と推定されるという。

 成相教頭は「通信制の学校なら自分の時間に合わせられることから、本校にも起立性調節障害で転入してくる子は多い」と話している。

【2】コミュニケーションが苦手 「発達障がい」

 「発達障がいのある子は人と感じ方が違う。嫌なことは嫌だとハッキリ言ってしまう。みんなと話が合わなくなり、友達が離れていってしまう。クラスメイトからダメ出しされてうつになる子が非常に多い」と成相教頭。
 その点、「通信制の学校の場合は人と関わりを持たなくて済むからやっていける」という。ただ、通信制と言えど高校資格を取るのが目的であり、支援学校ではないため、将来の自立や社会参加を目指すには別途、療育施設に通う必要がある。

【3】やることがある「積極的」

 自分のやりたいことがあり、不登校状態にある子どもたちを指す。例えば、ユーチューバー、スポーツ、芸能、バレエなどに打ち込んでいる子どもたち。「本校にも1割弱はいる。最低でも高卒の資格だけは取っておきたいと言うニーズから」(成相教頭)。

【4】不登校原因トップ 「無気力」

 不登校原因のトップ「無気力」。さまざまな要因が絡み原因ははっきりしないが、成相教頭によると「無気力の子はやさしい子が多い」という。

 多くの子は「とりあえず高校ぐらいは卒業しておきたい」と考え通信制にやってくる。中には全日制で不登校だった子が通信制の通学コースで皆勤賞を取ったケースもあり、成相教頭は「大学へ行くなど目標が見えてくると変わる。通信制は、将来を考える時間が取れることが大きいのではないか」と分析している。

【5】いじめや無視 「人間関係」

 同学年の子どもたちが集団の中でランク付けするスクールカーストも、不登校原因の一つだ。例えばスポーツができるなどのリーダー的集団と〝オタク的〟集団など、クラス内で身分的な階層ができ、他のグループやグループに属さない子が標的となっていじめや差別、無視などが行われること。「転学してくる子はほとんどこのケース」と成相教頭。

 「通信制は、基本的には自己学習で進めていくから苦手な人と顔を合わせる必要がない。自分の趣味も否定されない環境であるのも良いところだと思う」(成相教頭)

【6】家族の世話があり学校に行けない「ヤングケアラー」

 子どもでありながら、障がいや病気の家族に代わって買い物や料理をしたり、幼いきょうだいの世話をしたり…。本来、大人が担う家事などを日常的に行っている「ヤングケアラー」も不登校原因の一つだ。

 こうした子どもの割合は、国の調査では小学生と中学生が約6%ずつ、高校生約4%、大学生約6%。大阪市も昨年1月にかけて市立中の生徒に実態調査を実施した結果、およそ10人に1人(9・1%)がヤングケアラーの状況であることがわかった。

 市では、スクールカウンセラーを増員し、すべての市立小中(409校)で約3週間に1回以上相談支援ができる体制を整えたり、ヤングケアラーのいる家庭に訪問支援員を派遣して、無料で家事や育児を支援したり、支援の必要な子どもや家庭を見逃さないようスクールソーシャルワーカーを各区役所に増員したりして対策を進めている。

>>【特集 不登校③】「学校以外の選択肢は?」「親の関わり方は?」