ここ数年で不登校の子どもの数は右肩上がりだ。同時に、起立性調節障害など心身の不調により継続的な登校が難しい子どもや、発達障害や学習障害などの特性によって勉強や学校生活そのものが苦手な子どもが多いと聞く。文部科学省によると、通信制高校の生徒数は20万7537人(2023年5月時点、前年度比2万3891人増)、私立の通信制高校は211校(同15校増)とどちらも増加傾向だ。中学校卒業後の進路は全日制高校が主流となっているが、それ以外の選択肢も幅広い。
【通信制高校】
卒業後は「高卒資格」が取れる。3年以上の在籍期間とレポート提出、試験、スクーリングによって単位が取得できる。週5通学が基本である学校から、週3日通学、オンラインメインの学校など、通学スタイルはさまざま。
通信制高校サポート校
通信制高校に通う生徒に対して、3年間で卒業ができるよう単位取得・進級などに必要とされる勉強や精神面での支援を行う施設で、立ち位置としては塾・予備校に近い。職業体験や進学コースが選べるなど、学校ごとに特色が異なる。スクーリングへは通信制高校本校へ行く必要がある。
【高等専修学校】
実践的な職業教育を行うことを中心とした専門学校の中でも、高等課程を置いている学校を指す。「大学入学資格付与指定校」であれば「高卒資格」が取得でき、大学・短大等への進学も可能。高校卒業後に専門学校へ行くより、費用面や時間面で負担が少ないこともある。
技能連携制度
高等専修学校に入学すると同時に通信制高校にも入学することで、3年間で2つの学校の卒業資格が取れるという制度。高等専修学校の方で専門課程を修めながら通信制高校で「高卒資格」を取ることで進学を目指せる。高校卒業後に専門学校へ行くのと比較すると、時間・費用の「コスパ」がいいとも考えられる。
【高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)】
合格すると高等学校卒業者と同等以上の学力があると認定される資格。高校を卒業したわけではないので「高卒資格」は取得できないが、合格することで大学等への受験条件や採用条件がクリアできる。毎年8月と11月に実施され、合計で8~10科目が合格できれば資格取得となる。
通信制高校、なぜ増えている?
通信制課程の学校が増えている外的な要因としては、通信環境の変化が考えられる。画像・音・動画を同時かつ双方向にやりとりができる情報通信技術が進歩したおかげで、オンラインで授業を受けたりチャットでやりとりしたり、といったコミュニケーションがスムーズになった。コロナ禍を経て「オンライン化」はさらに進んだ。
現代の学生は生まれた時からインターネットがそばにあるデジタルネイティブ世代のため、そもそもオンライン学習との親和性が高いというのもあるだろう。
そして、不登校生徒の受け入れ体制が整っている学校が多いのは選ばれる理由のひとつだろう。少人数制やマンツーマン指導をカリキュラムに取り入れることで、生徒一人一人の特性や状況に並走している学校が多い。さらにカウンセラーが常駐している学校もある。
とある「通信制高校」を選んだ家庭
実際に通信制高校に進学した事例として、池田市在住の石嶋瑞穂さん一家を紹介する。長男の壮真さんは現在N高の1年生。小学2年から3年まで入院していたことで、読解や計算などの基礎学力が十分に培えなかったため、学校での勉強を苦手に感じている。
一方、小学5年からパソコンに興味を抱き、独学でプログラミングを学び始めたところ、大人顔負けのスキルを身に付けた。発達の特性が強いと感じ検査を受けたところ、ADHD(注意欠如・多動症)と、ASD(自閉スペクトラム症)だと診断された。
勉強や通学の負担が軽く、自由な時間が多く作れ、得意や興味を生かせる環境として、中学1年の終わり頃から通信制高校への進学を視野に入れていた。「課題や定期テストのために学力を維持するのが難しいと感じていました。また本人の特性上、字を書くことが苦手なためパソコンを操作する方が合っているのですが、一般の学校はパソコン利用に配慮申請が必要。通信制高校の中でも今の高校を選んだのは、パソコン中心という点も大きいですね」と石嶋さんは話す。
現在は週3通学コースを選択。学校生活で友人との交流も楽しみながら、空いた時間でアルバイトやプログラミングに勤しみ、英語教室にも通っているそうだ。
壮真さんは卒業後大学進学を目指しているが、就職や起業をする生徒も多い。カリキュラムの中でプレゼンスキルを磨く機会が多く、それがAO入試や就職活動に役立てられるそうだ。
通信制高校は自由度が高く、学校ごとの特色が濃い。まずどんな学校があるのかを知るために、例えば複数の学校が集まる進路相談会のような場を活用するといいだろう。偏差値やネームバリューも大事だが、石嶋さん家庭のように、どういった環境が本人に合い、また能力を伸ばしやすいか、という相性の部分で学校選びをするのも大切だ。