大阪中心部で進むオフィス再編 野村不動産、本町通沿いにビル竣工

 大阪のビジネス中心地でオフィス再編の動きが加速している。大規模開発が相次ぎ、新築物件の供給も進むが、空室率は低下傾向にあり、都市部への企業集積が鮮明だ。供給過多の懸念もある中、他物件と差別化を図るサービスを導入するオフィスも登場している。(加藤有里子)

来訪者を迎えられる入居テナント向けのラウンジスペース

 うめきた2期開発で誕生した「グラングリーン大阪」を筆頭に、大阪市内では大型の開発が相次いで進行している。御堂筋の玄関口・淀屋橋駅前には、ツインタワーの一棟「淀屋橋ステーションワン」が5月30日に竣工。さらにリーガロイヤルホテル周辺の中之島4丁目でも再開発が始まっている。

 新しいビルの供給が続く中、供給過多を懸念する声もあるが、オフィスの調査を手掛ける三幸エステート(東京都港区)大阪支社によると、大阪市内の大規模オフィスで4月時点の空室率は、前月比0・20ポイント低下の2・98%。4カ月連続で低下し、23年12月以来の2%台に突入した。

 こうした中で6月1日、野村不動産の新たなオフィスビル「PMO EX(ピーエムオーイーエックス)本町/H1O(エイチワンオー)本町」が本町通沿いに竣工した。滋賀銀行、大韓航空の旧ビル跡地に誕生した建物は、地上14階建ての大型オフィスだ。

 野村不動産西日本支社の小森靖之都市開発事業部長は「新築オフィスが供給されると客の取り合いになるという見方もあるが、移転による二次空室も出ていない。地方から大阪への集積や、大阪郊外の企業が新卒採用のため、拠点を設けるケースがある。さらに、新規参入もあり動きが活発」と、大阪のオフィス市況の好調さを語る。

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トレンドは「サービスオフィス」「セットアップオフィス」

 「PMO EX本町」では、他物件との差別化を図るべく、2つのトレンドを取り入れている。一つは、サービスオフィスの併設だ。サービスオフィスとは、家具やネット環境、受付サービスなどが備わった、手厚いサポートが特長のオフィス形態を指す。

 同物件は2階から4階をサービスオフィス「H1O」専用フロアとし、3階にはラウンジとして作業スペースを設置。さらに、1階には来客や打ち合わせ利用を想定した「H1O」入居者専用ラウンジを設けるなど快適な空間を提供している。利用期間は最短3カ月からで、スタートアップや士業、大企業のサテライトオフィスなど幅広い層のニーズに対応する。

 もう一つは、一般的なオフィスフロア「EX」内の一部にセットアップオフィスを導入したことだ。セットアップオフィスとは内装や家具、空調設備などがあらかじめ整っている状態で貸し出されるオフィスで、入居した企業はすぐに業務をスタートできる。「ここ数年、初期コストを抑えたい、スピーディーに移転したいといった声が増えており、特に都市部ではニーズが高まっている」(小森事業部長)。

 さらに、入居者が打ち合わせやランチ、リフレッシュに活用できるサロンスペースもある。

既存建物の地下構造を一部残し活用

 環境への配慮も特徴の一つだ。同物件では、既存建物の地下構造を一部残し、山留として活用することで、地盤の安定を保ちつつ、建設時のCO2排出量を削減したという。「既存の構造内に新築ビルを納めるという複雑な計画だったが、竹中工務店に協力をいただいた」と、開発担当者は振り返る。

 さらに、鉄材には電炉材を使用。鉄スクラップを原料とした電炉による製鋼材を使うことで、高炉材とべて約50%のCO2削減が実現されたという。

「PMO」ブランド、大阪での拡大進む

 野村不動産は08年からオフィスブランド「PMO(プレミアム・ミッドサイズ・オフィス)」を展開。21年に新大阪にて大阪初の物件を開業して以降、関西圏の展開も進んでいる。現在、大阪では梅田、淀屋橋、難波で3棟を建設中で、今後も拠点拡大を予定している。

 進化し続ける大阪のビジネス中心地で、企業の新たな働き方を支える拠点として注目されそうだ。

本町通り沿いに開業したオフィスビル「PMO EX本町」