コロナ禍の3年弱、この見えないウイルスは日本社会に大きな影響を及ぼしている。子どもたちの学校生活も同様だ。
昨秋、文科省は全国の小中学校の不登校が過去最多の24万4940人(2021年度)に上ったことを公表した。増加は9年連続で、10年前に比べて小学生は3・6倍に、中学生は1・7倍になった。関西の小中学校も不登校の状態にある子どもがあわせて4万人余りと、過去10年で最も多くなっている。
なぜ、こんなに増えているのか。不登校になった理由、そして不登校とどう向き合うべきかなどについて、最新情報を交えながら解説する。
文科省によると、関西の2府4県で不登校の状態にある子どもは前年度より8328人増え、4万1922人と過去10年で最も多くなった。このうち大阪は1万8109人。
全国の不登校の内訳は、小学校が8万1498人(前年度比28・6%増)、中学校が16万3442人(同23・1%増)で、いずれも増加率は過去最高。中学生では、20人に1人が不登校だった。
過去最多となった理由について、現場や専門家が指摘する一つが「新型コロナウイルスの感染拡大」だ。活動制限が続いて交友関係を築けない、給食は黙食、行事も中止…。人とふれ合う場面がめっきりと減った。現役の中学校教員は「これほど不安定な子どもたちを見たことがない」と話している。
もう一つは「生きづらさの低年齢化」だ。不登校のなかでも「小学生の不登校」が年々増えており、増加ペースも早くなっている。
小・中学校 不登校原因のトップは無気力・不安 大阪は過去10年で最多不登校は「問題」でなく「選択肢」に
複合的に絡み合う
大阪市教育委員会事務局の指導部教育活動支援担当、吉沢雄総括指導主事は「不登校のきっかけは一つだけではありません。さまざまな要因がからむことが多い」と説明する。
市では不登校の主な要因について調査中だ。
上表を見てほしい。まず大枠として「学校」「家庭」「本人」「それ以外」の4つに分類。要因が本人に関わるもので、小学生の場合は「本「無気力、不安」が圧倒的に多かった。
中学生も同じで、主な原因の半数以上は「無気力、不安」だ。ただ、小学生と比べると「友人関係をめぐる問題」「学業の不振」も目立つ。
市では不登校の子どもたちへの対応として、市内の3カ所(花園・桃谷・新大阪)に市教育支援センター(適応指導教室)を設置。教員OB、学習支援ボランティア、不登校支援コーディネーター(心理カウンセラー)らで対応にあたっている。
個に応じた教育機会を
市では不登校の子どもの実態に配慮して特別な教育を行う「不登校特例校」を開校する準備を進めている。特例校は文科省の有識者会議でも増設することを盛り込んだ提言をまとめており、現在は全国に21校が開校している。
小学生の授業風景
大阪市は2017年の統廃合でなくなった市立日東小学校(浪速区)の校舎を特例校に使うため、改修工事を行い、24年度の開校を予定している。
吉沢総括指導主事は「何よりも大切なのは魅力あるより良い学校づくり。教育委員会事務局全体として取り組んでいる。個に応じた支援、不登校特例校、フリースクールなど多様な教育機会を確保することが大切」と話している。
登校を目的としない
増える不登校。対策には何が求められているのか。文科省が19年10月に、全国の教育委員会に通知した内容を見てみよう。
「『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的にとらえて、社会的に自立することを目指す必要がある」
ジャーナリストで不登校問題にくわしい沢浦武雄さんは「子どもにとって小学校、中学校は自分の世界のすべて。うまくいかなければ自分を責めてしまう。そんな時、自分を認めてくれる居場所、いろんな学び方ができる多様な選択肢があることが大切だ」と話す。
不登校が「問題」ではなく「選択肢」として受け入れられ、不登校でも子どもが学び続けられる教育機会の確保が現在は進められている。