4月9日投開票の大阪府知事、大阪市長のダブル選の〝顔ぶ れ〟が固まった。両首長ポストを押さえる大阪維新の会に対抗して自民党や立憲民主党などと連携をめざす経済人や学者らによる政治団体「アップデートおおさか」(代表=西村貞一・サクラクレパス会長)が、知事選で法学者の谷口真由美氏(47)、市長選では大阪市議で元自民党所属(2月26日付け離党)の北野妙子氏(63)を支援する。両氏は大阪維新の会が進めるカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致の是非については「住民の選択で決定する」と掲げている。ただ市長選に比べ、知事選をめぐっては過去に谷口氏が自民批判をしていたことから、自民党府連内には反発もあり、〝維新包囲網〟のほころびもみられる。
〝維新包囲網〟方向性は一致も 維新・松井前代表 「水と油でどうタッグ?」と批判
政治団体「アップデートおおさか」は「ダブル選」で維新に対抗できる候補者の擁立を目指して今年1月に設立された。経済人や大学教授、弁護士らが呼びかけ人に名を連ねる。
同政治団体が3月1日、開いた政治資金パーティーには知事選に立候補する法学者の谷口真由美氏(47)、大阪市長選に立候補する市議の北野妙子氏(63)がそろって出席。両氏は大阪維新の会が進めるカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致のあり方を批判した。
北野氏は「大阪のIRはむちゃくちゃな計画だ。最終的には住民投票で可否を決めるべき」と主張している。
吉村洋文知事は3月1日の府議会で、「IRの誘致もあくまでも政策の一つ。住民に判断を委ねるのは政治家としての責任放棄だ」と住民投票は必要ないとの認識を示している。
市長選、〝一騎打ち〟
市長選は共産党が候補擁立を見送ったことから事実上、地域政党「大阪維新の会」府議の横山英幸氏(41)と北野氏の一騎打ち状態となった。
現職の自民市議は「市長選の維新候補(府議の横山英幸氏)は吉村氏や松井氏と比べると知名度は低い。北野候補は市議の実績、他会派や女性票を含め幅広く集票が期待できる」と勝機を見込んでいる。
谷口氏への自主支援 一部の府議拒否
ただ、知事選をめぐっては谷口氏に対して自民党府連内の反発は根強い。
北野、谷口の両氏は「市民派」を掲げ、政党色を出さずに無党派層などへの浸透を狙っているが、過去に谷口氏が自民党の作成した憲法草案を痛烈に批判したことで、自民府議の一部からは「支援をすれば、支持者がいっぺんに離れる」と反発の声も。自民党は両氏を推薦せず、自主支援としている。
また、共産支持層の府民からも「無所属で辰巳さん(孝太郎元共産参院議員)が、立候補表明しているのに、なぜ、出るのか。反維新票が分散する」と谷口氏出馬への批判の声も聞かれる。
日本維新の会の松井一郎前代表(顧問)も2月9日の市役所での記者会見で、谷口氏、北野氏の立候補表明について、「(谷口氏は)自民批判を繰り返してきた。どうやってタッグを組むのか見てみたい。(両氏の)政治信条や理念は水と油」と批判。谷口氏が幅広く支持を求めていることについては「今までの批判を横に置いて、応援してほしいというのはご都合主義」と指摘した。
参政党も知事選〝参戦〟
このような知事選の構図の中、昨年7月の参院選で国政進出を果たした参政党が歯科医の吉野敏明氏(55)を公認候補として擁立すると発表。同党は「国や地域、伝統を大切に思える自尊史観の教育」などの公約で保守色を打ち出している。知事選では「維新も自民もだめという有権者の受け皿になりたい」(神谷宗幣副代表)とし、保守層の票の掘り起こしを狙う。参政党の参戦に吉村知事は会見で「どなたが立候補しても、自分がやってきたことと、これから目指す大阪像を打ち出したい」と話している。
元自民党国会議員の地元秘書は「参政党は知事選を通して党名や党の政策を訴え、地方議員選挙の後押しを狙っているのではないか」と情勢分析している。