府受動喫煙防止条例が完全施行

4月から客席面積30平方㍍を超える飲食店は原則、屋内禁煙となる府受動喫煙防止条例が完全施行され、大阪の喫煙環境は規制強化の一途を辿っている。喫煙所が不足している現状から、屋内外でたばこ渋滞が発生し、〝喫煙所難民〟が増加。大阪府の令和7年度の当初予算案で飲食店を対象とした喫煙所整備の補助金は今年度で打ち切られている。
こうした状況下の中で「大阪市庁舎及び区役所の敷地を活用した、市民が利用できる喫煙所の整備」を求める趣旨の陳情」について市会で議論が展開されたが、大阪市は、「第1種施設のため設置できない」との見解に終始し、陳情は継続審議となった。
混雑する喫煙所
市内全域で路上喫煙を禁止する改正条例が施行されて2カ月が経過。大阪・関西万博を目前に控えた3月25日の大阪市会財政総務委員会では、同市庁舎が位置する淀屋橋近辺は喫煙所が少なく、付近の堂島公園喫煙所においては、昼時の時間帯は列をなす程混雑しており、多くの大阪市職員が利用しているという現状が明らかになった。陳情を提出した淀屋橋勤務の市民は、維新の令和7年度予算編成及び政策要望書に「公共施設での特定野外喫煙場所の設置」についての記載があり、「そのアイデアに共感したこともあり、大阪市庁舎及び区役所の敷地を活用した、市民が利用できる喫煙所の整備を求める」趣旨の陳情書を提出した。
市会では、自民党の木下委員から「府内の他自治体の状況を確認してみると、府内の43市町村の3分の1以上の役所で、屋外の喫煙所を設置している」と指摘があった。その上で、「市庁舎や区役所に喫煙所を設置してはどうか」との意見が出された。これに対し、市は大阪府受動喫煙防止条例において「第1種施設の管理権限者は特定屋外喫煙場所を定めないよう努めなければならないとされている」として、当該努力義務規定に沿って「設置していない」と答弁。
同委員からは「(第1種施設での特定屋外喫煙場所が)設置していないというのであれば大阪府条例制定の本丸である大阪府庁の別館駐車場、議会棟前にそれぞれ喫煙所が設置されていることはどのように説明するのか」と質疑を展開。
これに対し市側は「府庁舎の管理権限下にある敷地であるが、第一種施設である府庁舎の敷地ではないと認識している」と答弁。要は市の言い分としては庁舎敷地外であれば整備可能ということらしい。
議論を見る限り、大阪市が設置できないとする根拠は大阪府受動喫煙防止条例の努力義務としているが、市内全域で路上喫煙を禁止とした今、民間への協力依頼と併せ、庁舎敷地内での喫煙所設置についても検討の余地がありそうなものだが、少なからず市職員の利用も要因とした陳情が提出されているのであれば、市庁舎周辺での喫煙所整備は早急に行うべきであろう。
〝喫煙所難民〟の解消に向けて府市連携の対応を期待
当然、各自治体で状況や課題は異なる。ただ、課題解決として喫煙所の設置が有効と判断したのであれば、その判断は各自治体に任せるのが本筋だろう。大阪府市の条例はいずれも維新の政策で、自らの政策要望においても「公共施設に関しては、誰もが利用できる屋上等に健康増進法で定める特定野外喫煙場所の設置を進めることにより、整備促進をはかること」と市長へ要望している経緯もある。このことから、〝喫煙所難民〟の解消に向けて維新会派内での調整次第ですぐに実現しそうにも見えるが、いずれにしても迅速な府市連携の対応が期待される。
補助金申請、575店舗のうち「半数」が見送り
市は2月17日時点で「誰でも無料で利用できる指定喫煙所」が314カ所、242地点、喫煙可能な飲食店などいわゆる「情報提供喫煙所」が36カ所36地点、合計で350カ所278地点を確保しているが、愛煙家からは「そもそも絶対数が足りない」と喫煙所のさらなる設置を求める声がでている。
一方、府では、そうした状況下にもかかわらず、「大阪府の補助金を使って喫煙所整備したい」と表明した飲食店が575件ある中で、令和6年度(補助制度の最終年度)は2月末時点で211件の申請を受け付けるにとどまった。半数以上の要望を切り捨てた格好で、4月の完全施行以降は飲食店への補助を打ち切ることになった。今後、補助金の継続、充実が望まれる。