「梅毒」感染者が急増 大阪市内は前年の2倍以上で過去最悪のペース

 かつては「過去の病気」と思われていた性感染症の「梅毒」の患者数が2022年には全国で1万人を突破。大阪市内でも同年の梅毒報告数(速報値)は、21年の2倍以上、1408人(男730人・女678人)と過去最悪のぺースで推移している。特に注目すべきは20~30代の女性の急増だ。これまでは性風俗産業の利用者や従事者が多いとされてきたが、今では出会い系アプリや交流サイト(SNS)の広がりで「出会いの方法が変わってきたことも感染拡大と相関関係がある」と指摘する医療関係者もいる。大阪市や府は「保健所でHIV検査と同時に無料・匿名で梅毒検査が受けられます。不安がある場合は、早期検査を」と呼び掛けている。

 梅毒は梅毒トレポネーマという細菌が皮膚や粘膜の傷口から入って感染する。出産間近の妊婦の感染率は60%以上とされており、治療せずにいると、死産・早産、生まれてくる子どもに先天梅毒(発育不全・難聴など)を発症する可能性が高い。怖い病気だが、血液検査でわかる。府では「早期に発見・治療を行えば、完治する感染症です。治療により治っても相手が感染していると何度でも感染するので、パートナーも検査を受けましょう」と呼び掛けている。

女性の感染 ほぼ20〜30代

 大阪市の患者の性別割合をみると、2013・14年の女性の割合は10%未満だったが、15年以降はさらに増え、21年は650人(男331人・女319人)、22年(速報値=1408人/男730人・女678人)と急増。男性は20~50代と幅広いが女性は特に20~30代が全体の8割を占める。20歳未満の若年層では男性より逆に女性の割合が高くなっている。

出会い系アプリの関与説

 急増した原因に挙げられるのがインバウンド(訪日客)の持ち込みによる広がりだ。新型コロナウイルス感染症の流行で水際対策が強化されてからも増えているため、「国内で感染連鎖」の可能性を指摘する声もある。

 もう一つは“SNS関与説”だ。実際、出会い系アプリの利用率が高い都道府県と人口当たりの梅毒の感染者数の相関関係が見られた。出会い系アプリなど、さまざまなSNSにより、新しい出会いが生まれ、幸せな結婚にゴールインするケースが増えている一方で〝ヤリモク〟と呼ばれる性的な接触を目的に出会うケースでは梅毒に感染するリスクは当然上がることは予測される。SNSの普及で若者の行動が変わり、性感染症がまん延しやすくなっていると言えそうだ。

早期発見・治療で完治

 泌尿器専門クリニックによると、梅毒に対する対応は①梅毒に感染する危険な性的接触があったのか②症状はどうか、あるのかないのか③梅毒として治療薬をきっちりと服薬したか④血液の抗体価がどの様であるのか、以前はどうであったのか―の順に対応し、「血液検査のみで右往左往、あわてないように」と啓蒙している。