旅行好きの山﨑博記者が今回ピックアップしたのは、キリスト教三大巡礼地の一つ、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ。大使館の協力のもと、千年の歴史を持つ大聖堂や名物「タコのガリシア風」など、聖地の見どころと美食の魅力を紹介する。

千年の巡礼路
エルサレム、ローマと並ぶキリスト教三大巡礼地の一つ、スペイン北西部・ガリシア州のサンティアゴ・デ・コンポステーラ。中世の街並みを残す旧市街は世界遺産に登録され、町の中心には壮麗な大聖堂がそびえる。千年以上にわたり人々を引き付けてきた祈りの町の魅力を、スペイン大使館観光部の協力のもと紹介したい。(山﨑博)
ホタテ貝が導く 祈りの終着地
サンティアゴ・デ・コンポステーラ(スペイン)

聖ヤコブの墓と巡礼の始まり
9世紀初め、スペイン北西部のガリシア州で、イエス・キリストの十二使徒の一人、聖ヤコブの墓と信じられる場所が見つかった。聖ヤコブをスペイン語で「サンティアゴ」といい、町の名前もこの聖人に由来する。伝承では、墓の上に不思議な光が現れ、それをきっかけに発見されたとされる。「コンポステーラ」という地名も、ラテン語で〝星の野原〟を意味する言葉に由来するとの説がある。その場所には礼拝施設が築かれ、後に現在の大聖堂が建てられた。

ホタテ貝と黄色い矢印が示す道
やがて、聖ヤコブの墓を目指し、ヨーロッパ各地から多くの人々が歩いて訪れるようになった。現在も、スペイン国内をはじめ、フランスやポルトガル方面からサンティアゴへ続く複数の巡礼路がある。道中では、黄色い矢印やホタテ貝の印が、進むべき方向を示している。ホタテ貝はサンティアゴ巡礼の象徴で、聖ヤコブの遺体を運ぶ船のそばで海に落ちた騎士が助かり、その体がホタテ貝で覆われていたとの伝説もある。
巡礼者の中には、何百キロもの道のりを歩く人もいる。長い旅を終えて大聖堂前の広場に着くと、リュックを降ろし、抱き合って喜ぶ姿も見られる。千年以上にわたり、多くの人々が目指してきた巡礼の町を象徴する光景だという。


栄光の門
町の中心に立つサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂は、長い巡礼の終着点である。華やかな正面の奥には、中世の姿を伝える空間が残されている。内部で目を引くのが、「栄光の門(ポルティコ・デ・ラ・グロリア)」だ。中央のキリストを囲むように、使徒や預言者、天使、楽器を手にした24人の長老が並ぶ。ユネスコも、中世彫刻を代表する作品として高く評価している。

天井を舞う巨大な香炉
さらに、大聖堂ならではの光景が、巨大な香炉「ボタフメイロ」だ。高さ1.5㍍、重さ53㌔。8人の係員が綱を引くと、中央ドームからつるされた香炉は次第に勢いを増し、煙をたなびかせながら堂内を振り子のように大きく往復する。最高時速は68㌔に達するとされ、静かな祈りの空間が一変する。大聖堂の主要な典礼で用いられる。

巡礼の町の名物グルメ
旅の楽しみは食にもある。ガリシア地方を代表する名物が「タコのガリシア風」だ。ゆでたタコにオリーブオイル、粗塩、パプリカを合わせた郷土料理で、タコのうま味にオイルのコクとパプリカの香りが重なる。
デザートには、アーモンドケーキ「タルタ・デ・サンティアゴ」が人気だ。アーモンドの香ばしい風味と、しっとりとした食感が特徴で、表面には粉砂糖で剣の形をした聖ヤコブの十字が描かれている。巡礼の町を象徴する伝統菓子である。


