障がい者が支援を受けながら地域で暮らす「障がい者グループホーム」。施設側はこれまで、空室を埋めるために紹介料を支払い、入居者をあっせんしてもらうケースが目立ったが、国は「利益供与に当たる」として指導を強めている。だが、紹介料頼みの仕組みを見直した先には、別の新たな課題が浮上しそうだ。

厚生労働省は2025年初旬、障害福祉施設が利用者を紹介してもらう見返りに、紹介者に金品などの報酬を支払うことを「運営基準で禁止される利益供与に当たる」と自治体に周知を徹底した。大阪市も26年2月に改めて「利益供与などの禁止の徹底」を事業者に伝えており、改善しない場合は行政処分も視野に入れている。
背景にあるのは、障がいのある人が「サービスの内容や質」を見て選ぶべきという考えからだ。紹介者に報酬が支払われると、サービスそのものではなく、紹介料を多く支払う施設に需要が集まってしまう。このため、同省では「金銭によって本人の意思決定を歪める誘因行為は適切ではない」と指摘している。
にもかかわらず、一部の現場では今も、紹介料を通じた入居者あっせんが続いており、制度がどこまで浸透しているかは不透明だ。
実際に、府内のある紹介会社の担当者は「肌感覚だが、今も7割近くの施設は紹介会社に頼っている」と明かす。
堺市でグループホームを展開する運営者の男性は「ルールを守って真面目にやっている事業所ほど空室を抱えている。それなのに、規制が入った今も形を変えて入居者を回してもらっている施設があるのには納得できない」と憤る。
経費増に悩む施設も
一方、紹介会社を利用している大阪市内のグループホーム運営責任者は「施設を運営していると日々の支援で手いっぱいで、営業に割く時間はなかなか取れない実情がある。紹介会社の存在がそのギャップを埋めてくれていた」と話す。
別の運営責任者も「そもそも障がい福祉の報酬体系では、営業に専念するスタッフの人件費を報酬から賄うことはできない。紹介会社は必要悪だと思っているのが正直な気持ち」と話した。
「合う施設への入居」は「紹介料」とは別の問題
紹介会社はこれまで、「施設を探す」「空室を調べる」「利用者と施設をつなぐ」という機能を果たしてきた。国の規制によって、新たに浮かび上がるのは「では、誰が本人に合う住まいを探すのか」という問題だ。
利用者や家族が多くの施設を見比べ、空室状況や支援内容、場所、職員の体制などを一つ一つ調べ、比較するのは簡単ではない。このため、基本的には相談支援専門員の役割になる。
相談支援専門員は、介護業界でいうケアマネジャーのような存在だ。障がいのある本人や家族から生活の困りごとや希望などを聞き取って、必要な福祉サービスへとつないでくれる。

ただ、現状で専門員が地域にあるそれぞれのグループホームの特徴を把握し、利用者本人に合った施設を案内できるかどうかは不透明だ。専門員の一人は「相談報酬は『探す労力』にではなく『手続き』に対して支払われるため、最新の施設情報やサービス状況を熱心に収集する人は少ないのではないか。それ以前に、日々の書類作成やトラブル対応に追われているのが実情だ」と明かす。
実際に、厚労省の調べによると、全国の相談支援事業所の約4割が専門員の人材不足に陥っており、新規の相談を受けられないケースが相次いでいる。
紹介料をなくせば、利用者本人に合ったグループホームがみつかるという単純な話でもなさそうだ。
来年4月には総量規制も
27年4月からは、障害者グループホームが新たに「総量規制」の対象となる。地域のサービス供給量が自治体の計画で見込む必要量に達している場合などには、新規指定をしないことができるようになる。
大阪ではこれまで障がい者グループホームの開設が相次いできた。厚労省の「共同生活援助事業所数の各都道府県の状況」(24年10月時点)によると、人口10万人当たりの府内の事業所数は16.4カ所と、全国平均の12.0を大きく上回っている。
ただ、施設が単純に「余っている」とは言い切れない。府が「第7期障がい福祉計画」で24年度に見込んだ共同生活援助の利用者は月1万5128人だったが、実際には1万6761人と想定を上回った。
グループホームの入居実態について、前述の紹介会社の担当者は「複数人と共同生活を送る戸建て型では空室が増えている一方、自分専用の風呂やトイレがあって一人暮らしに近い生活を送れるワンルームタイプのマンション型は入居者が殺到している」と明かす。
民間で新たな動きも
施設の数は足りていても、必要な人に必要な住まいの情報が届かなければ、ミスマッチは解消しない。こうした空白を埋めようと、民間では新たな動きが始まっている。
医療・福祉分野のマーケティング支援などを手掛けるニューメディー(大阪市中央区)では、施設情報が必要な人に届かないという問題に対し、府内の紹介会社と共同で障がい者の住まい探しを支える新たな仕組みづくりを進めている。
同社の花山翔社長は「府内にある障がい者グループホームは1100法人、1700カ所と膨大だ。しかも頻繁に更新される施設情報を相談支援専門員が追うのは不可能に近い」と実情を話す。
このため、府内の施設ごとに特徴や支援内容などを見比べられるようにし、送迎の手配などにも対応。利用者や相談支援専門員をサポートする新サービスを計画している。花山さんは「デジタルとアナログを上手に組み合わせ、利用者も相談支援専門員も施設も〝三方良し〟になるサービスを目指したい」と話している。
支える側にも必要な「自立」
国の障がい福祉予算は、関連する予算を含めて約4.2兆円に上り、過去10年で2倍に膨らんでいる。にもかかわらず、障がい者福祉事業は国からもらえる報酬が公的に決められているため、事業所側が自由に価格転嫁できず、赤字や廃業に追い込まれるケースも増えている。
障がい者福祉業界について、花山さんは「国の給付をあてにするのではなく、多角化などで経営の自立を図り、予算に頼らない仕組みづくりが必要だ。開設したグループホームの情報サイトも、施設側にとって新たな仕組みの一つにしていきたい」と力を込める。
障がいのある人が地域で暮らすのに必要なのは、単に「空室」を見つけることではない。どんな支援を受けられるのか、どんな暮らし方ができるのか、自分に合った場所なのか。規制強化の先で、障がいのある人の〝住まい探し〟そのものが問われ始めている。
(記者・佛崎一成)
