「今すぐ行くべきか、朝まで待つべきか」──迷いは、誰にでもある
9 月 9 日は「救急の日」。この日を含む 1 週間は「救急医療週間」でもある。救急車や夜間外来を思い浮かべる人が多いだろうが、この機会にあらためて立ち止まって考えたいのは、私たちの「日々の医療とのつき合い方」そのものだ。
子どもが夜中に急に熱を出した。家族の様子が急におかしい。そんなとき、多くの人が「救急に行くべきか、翌朝のかかりつけ医を待つべきか」で迷う。
厚生労働省は「上手な医療のかかり方」プロジェクトを通じて、こうした迷いへの向き合い方を発信している。緊急性が高いと判断したときは迷わず救急車を要請する一方、判断に迷ったりためらったりする時には、医師・看護師などの専門家に電話で相談できる♯7119(一部地域で実施、全国普及を推進中)を活用してほしい、というものだ。
その背景には、救急医療資源の逼迫という課題がある。救急車や救急隊員の数は限られており、症状の軽い人による安易な要請は望ましくない。だからこそ厚労省は、健康に不安があるときはまず身近な「かかりつけ医」に相談することを勧めている。「救急を守る」ことと「軽症のうちに身近な医療にかかる」ことは、実は地続きなのだ。

受け皿としての「かかりつけ医」が、いま変わりつつある
とはいえ、その受け皿である「かかりつけ医」に、私たちはうまくかかれているだろうか。仕事や子育てに追われる都市部の生活者にとって、「わざわざ時間をつくって受診する」ことのハードルは決して低くない。軽症のうちにかかってほしいと言われても、その入り口が使いにくければ、人は受診をためらってしまう。
そんな中で、マチナカのかかりつけ医の姿が少しずつ変わり始めている。象徴的な変化の一つが、クリニックの D X(デジタル化)だ。
受付・会計の非接触化や、来院前のオンライン問診といった仕組みが注目を集めている。狙いは大きく二つ。待合室での他の患者との接触を減らす「感染管理」と、受付・会計にかかる事務時間を圧縮する「時間短縮」である。最新機器の導入というより、「通う人の負担をどう減らすか」という発想からのデジタル化。そこに関心が向けられている。
患者が求めていたのは「時間」だった
こうした変化は、患者側のニーズと呼応している。それを裏づける調査がある。大阪・北浜で小児科・内科を診療する「みらいクリニック大阪北浜」が、来院患者 140 名を対象に実施したアンケート(一般社団法人医業保全協会が 2026 年 8 月 27 日にプレスリリースで公表)だ。
「家族みんなが通えるクリニックに求めること」への回答は、上位の“時間”に関わる項目が目立った。
【マチナカのクリニックに求めること T O P 3】
1 位 待ち時間が短く効率的に受診できること
2 位 仕事帰り・外出のついでに立ち寄れること
3 位 平日夜間や土日にも対応してもらえること
※一般社団法人医業保全協会「みらいクリニック大阪北浜 開院 1 周年 来院患者アンケート」(有効回答 140 件)より

受診にどれだけ手間と時間をかけずに済むか、言いかえれば「かかりやすさ」が、都市生活者のクリニック選びの中心にあるというリアルな姿が浮かび上がる。前述のDX化が「時間短縮」を目的に注目されているのは、この患者ニーズの裏返しだと言える。
緊急のときこそ、「かかりやすさ」がものを言う
この「待ち時間」「かかりやすさ」への要望は、平時に限った話ではない。むしろ緊急性がある場面でこそ、重みを増す。
体調が急変したとき、いつものかかりつけ医にスムーズにかかれるか。長い待ち時間や煩雑な受付に阻まれず、必要な診察に早くたどり着けるか。その「かかりやすさ」があるからこそ、人は「軽症のうちに、まずかかりつけへ」という行動を選べる。それは結果的に、救急医療の逼迫をやわらげることにもつながっていく。
これからのマチナカのかかりつけ医に求められるのは、診療の質はもちろんのこと、「通う人が、必要なときに負担なくかかれる環境」をどう整えるかという視点なのかもしれない。
9 月 9 日「救急の日」は、私たち一人ひとりが「医療のかかり方」を見直すと同時に、医療を提供する側が「かかられ方」を問い直す日でもある。
