大阪市内の商店街でつくる大阪市商店会総連盟(千田忠司理事長)が、行政に先行する形で独自に喫煙所整備を進めている。今年1月の事業開始から半年間で20商店街・70か所を整備し、設置エリアでは路上のポイ捨てごみが平均35%減少したとの調査結果をまとめた。同連盟は大阪市に対し、地域団体への支援制度創設と、コンビニエンスストアでの喫煙所整備を市が主体となって進めるよう求める提言書を公表した。背景には、市条例による路上喫煙の全面禁止後も公共の喫煙所整備が追いつかず、地域が行政本来の役割を肩代わりしている実態がある。
大阪市は路上喫煙を防止する条例で市内全域を規制区域とした一方、喫煙所の数が不足しているとの指摘が続く。商店街側からは、隠れて喫煙する人が増えたことによる火災の危険や、清掃負担の増加を懸念する声が上がっていた。必要な喫煙所数について、大阪市商店会総連盟は最低837か所、路上喫煙規制を研究する近畿大学経済学部の村中洋介准教授(行政法・地方自治法)は3,607か所と試算しており、現状との差は大きい。
こうした状況を受け、同連盟は今年1月から独自の補助制度で喫煙所整備を進めてきた。設置後のごみ分布調査は、ごみ拾いアプリを手がける「ピリカ」の画像認識サービス「タカノメ」を使い、生野・中央・西・鶴見・都島の5区で実施。たばこごみは平均35%減少し、生野区で55%減、中央区で46%減と大きな効果が出た区がある一方、堀江地区では12%減にとどまるなど地域差もみられた。商店街へのヒアリングでは「掃除の負担が減った」「ポイ捨てが減った」「火災への不安が和らいだ」といった声が寄せられたという。


一方、大阪市が優先的に整備を進めるとしていた市内63エリアでは、8月27日時点で整備実績が0件にとどまっていることが確認された。市議会の建設港湾委員会(3月11日)では環境局長が、63エリア・67か所の整備を2026(令和8)年度末までに完了させる方針を示していたが、進捗は遅れている。市が実施する指定喫煙所の補助金制度も、5月29日時点で22エリアの募集に対し応募は7件にとどまり、ミナミエリアの応募は0件だったという。土地の確保や周辺住民の理解、着工までに複数回必要な環境局との現地調査などが、整備の遅れにつながっているとみられる。
同連盟の千田理事長は、こうした背景から独自整備に踏み切ったという。もっとも、設置場所の確保や近隣への説明、苦情対応など地域団体の負担は大きく、「本来は行政が担うべきだ」との意見も少なくないという。
提言書は2点を柱とする。1点目は、地域団体による喫煙所整備を支援する制度の創設。大阪市路上喫煙の防止に関する条例第3条は、市の責務として市民らの自主的な活動を支援することを定めており、同連盟はこれを根拠に、地域団体が費用負担を続けながら事業を継続することの限界を訴える。
2点目は、市が主体となってコンビニエンスストアでの喫煙所整備を進めることだ。飲食店は集客面の利点から協力を得やすい一方、コンビニエンスストアは本部側の費用負担や、過去に市から撤去を求められた経緯を理由に設置に消極的な例が多いという。同連盟は、たばこ販売事業者らに吸い殻回収容器の設置や啓発への協力を求める「大阪市空き缶等の投げ捨て等の防止に関する条例」を根拠に、市が事業者への働きかけを強めるべきだとしている。
市議会では、費用対効果を疑問視する意見も出ている。今年3月5日の本会議では、路上喫煙の過料(違反者に科す金銭的な制裁)による収入が約2,900万円にとどまる一方、取り締まりにあたる路上喫煙防止指導員への報酬支出は約6億円に上るとの発言があったという。閉鎖型の喫煙所整備だけでなく、費用を抑えた簡易型喫煙所を常設する選択肢も検討すべきだとの議論も出ているとされる。
商店街による自主整備は一定の成果を上げた一方、地域の負担を前提とした取り組みには限界もある。同連盟は長年地域に根差して活動してきた経緯から地元の事情に精通しており、行政と連携すればより実効性の高い整備が可能になるとの見方もある。商店街側が持つ地域とのつながりを生かしつつ、行政が担うべき公共インフラの整備をどう進めるか、大阪市の対応が問われている。
