【教育特集】選ばれる大学へ進む独自改革 研究力や環境整備で魅力創出

 少子化の影響で定員割れや経営難に直面する私立大学が増えている。財務省は2040年までに私立大学約250校の削減が必要との考えを示しており、大学淘汰の議論も進む。一方で、志願者数を伸ばし続ける大学もある。本特集では、学生から支持を集め、近年顕著な動きがある大学に、その取り組みや今後の戦略を聞いた。(礒見愛香)

私立大学の生き残り戦略

社会課題解決に向けた高度な「研究力」と人材育成

立命館大学 サトウタツヤ副学長

 ─立命館大学の強みは?

 本学は新たな学部の設置やキャンパス機能の再編、新たな研究拠点の整備などを通じて、学びと研究の環境を継続的に充実させてきました。時代の変化に応じて⼤学のあり⽅を不断に問い続け、教育・研究の質を⾼める挑戦を続けることが、本学の強みだと考えています。

 ─設置構想中の大学院「宇宙地球フロンティア研究科(仮称)」の設⽴について教えてください

 「宇宙地球フロンティア研究科(仮称)」は、2028年度からびわこ・くさつキャンパスに設置する計画です。国内で初めて研究科の名称に「宇宙」を冠し(⽴命館⼤学調べ)、未来の宇宙探査・開発を担う⾼度専⾨⼈材の育成を⽬指します(※)。

 ─現在、大学が力を入れていることは?

 本学では、30年度に向けた「学園ビジョンR2030」のもと、「次世代研究⼤学」「イノベーション・創発性⼈材育成」の実現を⽬指しています。
 「次世代研究⼤学」では、産学官、地域社会との連携を深めながら、研究成果を社会に還元していくことを重視しています。取り組みの成果として研究力の向上が評価され、各プロジェクトへの採択にもつながっています。大学の総合力をスコア化したQSランキングでは国内15位に位置し、博⼠学位授与者数も年間で140人を超える⽔準になってきています。研究が活発化し、若⼿研究者や⼤学院⽣が成⻑できる環境が整いつつあります。
 また、社会課題の解決に挑む「イノベーション・創発性⼈材」育成の拠点を設置し、多世代・多分野の協働や20億円規模のファンドを通じて構想から社会実装までを支援しました。さらに、24年度に設置した社会共創推進本部を中心に、教育・研究と実社会を結び付けた価値創造と人材育成を進めています。

トップレベルの女子教育を来年「皆学」へ

武庫川女子大学 髙橋享子学長

 ─武庫川女子大学の魅力は?

 総合大学でありながら小規模大学のようなサポート体制が整っている点です。学部の選択肢が広く、約1万人が学ぶスケールメリットを様々な面で享受できます。一方で、教員一人あたりの学生数比率が低く、手厚い教育を展開しています。例えば、開学当初から「クラス制」を採用しており、担任が入学から卒業まで学生生活や進路面まで支えます。

 ─来年から「共学」に踏み切った背景は?

 少子化に加え、昨今は女子の共学志向の強まりもあり、女子大学は厳しい状況にあると感じています。100周年の先を見据えた、大学改革と発展が必要でした。
 本学は、時代の流れとともに、女子学生が「学びたい」と思う学問領域を広げてきた結果、13学部21学科の総合大学となりました。理系では薬学部、建築学部を女子大学としては早期に開設しています。
 また、女性の社会参画が進む中で、男性中心の社会に通用する人間力を持つことが重要であると考え、教育の質を高めてきました。結果的に共学大学と遜色ない教育水準と規模を誇るようになりました。今後は、学ぶ意欲と能力を有する多様な人々を受け入れることが、大学の使命であると考えています。
 そこで「共学=男女が共に学ぶ」にとどまらず、性別・国籍・年齢を問わず、すべての人に学びを開く「皆学(かいがく)」の理念で、改革の舵を切ることにしました。

 ─現在、大学が力を入れていることは?

 「ダイバーシティ」と「研究力」です。研究力については「社会実装」を重視し、企業などの外部団体との連携を積極的に推進しています。また、1年生の時から物事に対し「どう改善すればいいか?」と常に問いを持つ「研究者マインド」の訓練をカリキュラムに反映しています。
 ダイバーシティの取り組みは、「SOAR教育」を通じ、ジェンダー・セクシャリティ、キャリアデザイン、ライフプランについて学びます。あらゆる生き方があることを学ぶと同時に、自分はどんな生き方をするか、そのために大学で学ぶ意義とは何かを明確にして、悔いのない学生生活を送ってほしいと考えています。

「毎日通いたくなる大学」を作って志願者数トップに

近畿大学 世耕石弘常任理事・経営戦略本部長

 ─私立大学の今後についてはどう思うか?

 少子化による学生の減少とそれによる定員割れは、社会情勢を考えると変えようのない事実です。本学は15年以上前からそれを見据えて取り組みを続けてきました。結果的に志願者数が日本一になるほど学生に人気の大学になりました。

 ─「志望者数全国1位」の理由は?

 何より学生が「行きたい」と思う大学を作ってきたからです。受験生のニーズに合わせて学部をハイスピードで増やし、24時間使えるジムや自習室、マンガも読める図書館といった設備の充実も図り、「めんどくさいから行きたくない」でなく、「暇やから大学行こか」と思えるキャンパスづくりを進めてきました。また、華やかな式典とにぎやかな学生生活、東大阪ならではの街の活気と、想像そのままの「大学デビュー」ができると期待して志願する学生が多いです。

 ─今年4月に設立した新キャンパスと看護学部について教えてください

 移転先の堺市泉ケ丘は、本学の進出を機に保留中だった開発計画が進み、街の再生が期待されています。また地域に開かれたキャンパスとして、住民の医療や健康促進に貢献します。
 新設の看護学部は、総合大学ならではの質の高い教養科目と、他学部との相乗効果による視野の広い人材育成が強みです。今後は男性看護師の育成にも注力し、医療業界を支えていきたいと考えています。

 ─大学の財務体制が安定していると聞きました

 本学は関西1位の事業活動収入額を誇っています。これが実現できている背景には「起業家精神」があると考えています。研究資金を確保するために、研究をすぐに利益にし、より多く利益が出るよう質のいい研究を追求する…そうした循環を建学以来続けてきました。そのマインドが現在にもつながっており、「社会に還元し利益を生むことが研究において重要」と考えていますし、実学的な経験が学問に還元されることも実感しています。本学が「学生起業家」を推進しているのも、このマインドから来ています。それらが実績となり、結果的に志望者層の増加にもつながっているのかもしれません。

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