眺めるほど新たな発見 日本初のフォンタネージ大回顧展

 昨年開催された大阪万博からイタリアアートに意識が行きやすくなっていたところ、掘り出し物の展覧会に出会った。

 公式な資料が「あなたはアントニオ・フォンタネージという画家を知っていますか?」という書き出しで始まる「フォンタネージ―イタリアの光・心の風景」が京都国立近代美術館(京都市)で、7月18日~10月4日の期間に開催される。

 洋画通なら知っている人も多いかもしれないが、誰もが知っているアーティストというわけではない。通の中でも人によって彼がどんな人だったと捉えているかが違うほど。それほどフォンタネージは多面的な顔を持つ多才な人物だ。

 その彼のアーティスト人生を通して、年代順に作品を展示し、後半には彼が日本滞在中に教えを乞うた弟子たちの作品も展示されている。

 同展覧会の見所は3つあり、「イタリア近代風景画の巨匠フォンタネージの日本初の大回顧展」であること、「フォンタネージ来日から150年を経て、師と弟子たちの作品が集結していること」、そして「20世紀イタリアの芸術家たちにも影響を与えたフォンタネージの先進性を検証すること」だ。

 展覧会場内は、全体を8つの章に分けて、時代を追って進んでいく。旅する画家だったので、ロンドンやトリノ、フィレンツェ、スイスなどで暫く滞在しては次へ移動していくライフスタイルを貫き通し、行く先々で違うジャンルのアーティストたちから影響を受けて、良いと思うものを取り入れて、自分の描くスタイルを変化させて行った。その変化は作品を通して見ることができる。

 1章は美的な構図と「ピクチャレスク」な景色の追求から始まり、2章でバルビゾン派の影響を受け、繊細で抒情的な情感を取り入れた絵画制作へと展開していく。

 3章ではロンドンやトリノなどの都市の風景を描いたり、4章になると日常生活や社会に根差した主題の探求をはじめる。

 5章で、人間と自然の関係に重きを置いたフォンタネージの作品は、彼の画業における重要な転換点になった。また光の変化を感情の起伏と結びつけた。

 6章では1976年には東京で明治政府から工部美術学校の画学教師に任命され、日本人形に西洋画について教えた。

 7章では、1880年のトリノ国民美術博覧会に出品された大作《雲》が、本人の自信とは裏腹に敵意のある批評にさらされてしまい悩む。晩年には、今まで吸収したコローやターナーの教訓を再解釈し、「真実」の風景を追い求める。

 最後の8章では、フォンタネージの死後、風景へのまなざし、人間と自然との関係、空気と光の描写など彼の芸術的遺産は次世代の芸術家に受け継がれていくことを伝えている。

 200点以上の作品が展示されている中、数メートルサイズの作品が何点かあり、それらの作品の前にはイスが置かれているので、ぜひ座ってゆっくり目の前の作品を眺めてみてほしい。「四月」というタイトルの作品(171㌢・254.8㌢)は、じっくり見つめているうちに、始めは見分けがつかなかった細部が徐々に浮かび上がってきて、平面の中にある複雑に絡みあって配置されたものが意識を持って動き出すように見えてくる。

四月 1873年 油彩/画布 トリノ市立近現代美術館

 また、「雲」というタイトルの作品(200㌢・301㌢)も同じく、じっくり座って睨んでいると、平面が奥行きを持って広がっていくような感覚になる。不思議な感覚だが、過去にも経験したことがある現象だ。

雲 1860年 油彩/画布 トリノ市立近現代美術館

 全体を通して要所に必要な説明書きや解説はあるが、どちらかというと、作品の前にいき、じっくりにらめっこして、何かを感じ取っていく展覧会の様に感じた。

 印象派がヨーロッパで広く普及し、人気を得ていく時代に、独自のスタイルを持ち、バルビゾン派からも影響を受けて作品を作り続けた画家、フォンタネージ。近代アートの歴史に置いて貴重な存在であり、これだけの作品が揃う日本初の大回顧展なだけに、彼のことを知っている人も知らない人も、足を運んで作品に触れてみると楽しめるはず。

 200点以上の中から自分の波長に合う作品を探してみるのが良いのではないだろうか。私も何点か波長の合う作品を見染められたので、皆さんにも試してもらいたい。

 「フォンタネージ―イタリアの光・心の風景」は京都国立近代美術館を含む3館による巡回展で、この後、三菱一号館美術館(東京都)では10月17日から2027年1月24日の期間、名古屋市美術館(愛知県)では2027年2月6日から4月4日の期間に開催される。

 詳細は公式HP(https://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionarchive/2026/467.html)へ。

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