求人業界で47年にわたり企業の採用現場を見てきたBFcompany代表の大畑明仁さん(大阪市)。仕事内容や採用の悩みを企業から直接聞き、求人原稿の作成から採用サイトの制作まで手掛けてきた。その大畑さんが、いま改めて注目しているのがバス運転士とタクシードライバーだ。かつてのイメージとは異なり、働き方や仕事を取り巻く環境は大きく変化している。では、二つの仕事にはどんな違いがあり、どんな人に向いているのか。
バスとタクシー、違いを知って自分に合う仕事を

バス運転士とタクシードライバー。どちらも人を安全に目的地まで運び、地域の暮らしを支える公共交通の仕事です。しかし、働き方にはそれぞれ違った特徴があります。決められたダイヤとルートを走り、多くのお客さまを安全に運ぶバス。自分で時間帯や場所を考え、一人一人のお客さまと向き合うタクシー。安定した働き方を求めるならバスが合うかもしれません。自分の工夫や頑張りを収入につなげたいなら、タクシーという選択もあります。
大切なのは、どちらが上かではありません。「今の自分には、どちらの働き方が合っているのか?」私は求人業界に関わって47年目になります。長く求人の仕事をしていると、仕事そのものは大きく変わっているのに、昔のイメージだけが残り、応募を遠ざけている職種があることに気付きます。その一つが、タクシードライバーではないでしょうか。
タクシーは「最後の仕事」ではなく、「最初の仕事」
1976年公開の映画『タクシードライバー』では、ロバート・デ・ニーロ演じる主人公が夜の危険な街を走り続けます。「夜の街を走る危ない仕事」「定年後に就く最後の仕事」というイメージを持つ人も少なくありませんでした。
しかし、半世紀近くが過ぎ、タクシーを取り巻く環境は大きく変わっています。警察庁の資料を基にしたグラフを見ると、全国のタクシー強盗認知件数は2004年の206件から2024年には78件へ、20年間で約62%減少しています。背景には、車内防犯カメラ、ドライブレコーダー、GPS、防犯ボードなどの普及があります。さらにキャッシュレス決済や配車アプリも広がり、車内で多額の現金を扱う機会も減りました。
もちろん事故や事件がゼロになったわけではありません。しかし、昭和の時代のイメージだけで、現在の仕事を判断するのは適切ではないでしょう。

若いうちだからこそ経験する価値がある
私は、これから社会に出る若い人たちにこそ、バスやタクシーという仕事を一度知ってほしいと思っています。どちらも単なる「運転の仕事」ではありません。タクシーには毎日、会社員、経営者、高齢者、観光客、子どもを連れた家族など、年齢も職業も目的も違う人が乗ってきます。話したい人もいれば、静かに過ごしたい人もいる。急いでいる人、不安そうな人、大阪を知らない旅行者もいます。短い時間で相手が何を求めているのかを感じ取り、必要なら会話し、必要がなければ話しかけない。話す力、聞く力、相手を見る力、気配り、言葉遣い、距離感、状況判断。そこには、教科書だけではなかなか身に付かない実践的なビジネスコミュニケーションがあります。
一方、バス運転士は、一度に多くのお客さまの安全を預かります。通勤・通学の人、高齢者、子ども連れの人、観光客などに目を配りながら、決められたルートと時間を守って安全に運行する。営業所や運行管理者、他の乗務員との連携も欠かせません。そこで身に付くのは、安全に対する責任感、多くの人への気配り、時間管理、冷静な判断力、そしてチームで仕事をする力です。
タクシーは「一人のお客さまと向き合う力」、バスは「多くのお客さまと社会を支える力」
形は違っても、どちらも若いうちに経験すれば、その後どんな仕事に進んでも役立つ力ではないでしょうか。そのままプロドライバーとして道を究めるのもいい。そこで得た経験を生かして営業やサービス業、管理職など別の仕事へ挑戦するのもいい。人を運ぶ仕事は「人生の最後に選ぶ仕事」だけではありません。
社会人として成長するための「最初の仕事」にもなれる。人を運ぶということは、単に現在地から目的地まで移動させることではありません。通勤する人、病院へ向かう人、旅行を楽しむ人、家族のもとへ帰る人。その一人一人の予定や暮らし、人生の大切な時間を支える仕事です。
人を未来へ運びながら、乗務員自身も多くの人と出会い、社会を知り、自分の未来へ進んでいく。人を運ぶ仕事は、人を未来へ運ぶ仕事。就職や転職を考えている人へ、まずはバスとタクシー、両方の「今」を自分の目で確かめてみませんか。
バスかタクシーか、14社を比較 自分に合う仕事が見つかる就職相談会

バス運転士やタクシードライバーの仕事を知り、就職について相談できる「第1回バス・タクシードライバー就職相談会in大阪」が9月19日、J:COM中央区民センター(大阪市中央区久太郎町1)で開かれる。
時間は午前11時30分から午後4時30分まで。当日はバス会社7社、タクシー会社7社の計14社がブースを設け、仕事内容や労働環境、勤務シフト、待遇などについて相談に応じる。複数の会社の話を聞き、働き方を比較することもできる。
対象は普通自動車免許を持つ人で、年齢、性別は問わない。バス運転士に必要な大型二種免許や、タクシードライバーに必要な二種免許の取得についても相談できる。就職面接ではないため、履歴書などの持参は不要。
事前に公式サイトから来場予約を行い、当日3ブース以上で相談した人には、1000円分のクオカードをプレゼントする。
問い合わせはサンケイリビング新聞社、電話06(7639)3125。詳細は公式サイト(https://mrs.living.jp/osaka/event_seminar/topics/6887659)で確認できる。

大畑明仁さんプロフィル
BFcompany代表。求人業界歴47年。企業の採用現場で仕事内容や採用課題を直接聞き取り、求人原稿の作成や求人媒体への入稿、企業の採用サイト制作などを手掛ける。

