Spyce Media LLC 代表 岡野 健将
2月24日でロシアがウクライナに侵攻して1年になる。当初はニュースだけなく、世間の注目も相当あった話題ですが、今となっては遠い国での出来事といった感じでしょうか。
天然資源や小麦など農産物の値上がりで物価が上がり、財布を直撃していることくらいしか、日本人には関係ないですからね。
これまでに何万人が亡くなったのか? ウクライナへの軍事援助が何兆円規模になるか?どれだけ世界中の人の暮らしや人生に影響を与えているのか?日々そんなことを考えて過ごしている日本人はどのくらいいるのだろうか?
先頃イギリスのBBCは、「Putin vs the West」という3話からなるドキュメンタリー番組を放送した。iPlayerという専用アプリからでも視聴可能だ。
BBCから依頼を受けて番組を製作した会社は、過去にもソビエト崩壊時にミハエル・ゴルバチョフ氏やボリス・エリツィン氏など当時の主要人物にインタビューを行い、全8話の大作を製作したり、プーチン大統領の最初の10年間振り返る番組も製作している。
そんな実績のある製作会社が今回「何が起こったのか?」と「どうやって起こったのか?」を追求するために、クレムリンに長期滞在し、プーチン大統領がさまざまな決定を下した場に居た人や、彼と接触のあった人物を中心に、仮説や推測ではなく事実だけを抽出して番組を構成したという。取材対象者にはボリス・ジョンソンやデービッド・キャメロン元英首相、ビル・バーンズCIA長官、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領、そしてプーチンの側近や取り巻きにいた高級官僚などで、彼らがプーチンに何を言ったのか、伝えたのか、進言したのか?そしてプーチンが何と答えたのか?を聞き出したそうです。
製作責任者は「私たちは何が起こったのか、そしてどうやって起こったのか、だけを追求してきたが、この番組を見れば、なぜ起こったのか、がわかるはずだ」とコメントしています。
個人的には、この番組を是非視聴したいし、なぜこんな事が起こってしまったのかを知りたい。それが解らない限り、この侵略戦争は終わらないはずです。プーチン大統領が失脚するか暗殺される以外に今のところ解決策が見えない現状で、この番組の存在意義はとても大きいと思います。
残念ながら、日本で視聴する事は不可能。NHKがBBCから同番組の放送権を購入して放送してくれるくらいしか手はないでしょうが、果たしてそんな事が起こるのか?
ヨーロッパでは自分たちの問題としてメディアもこのウクライナ侵攻に向き合い、視聴者に真実を伝えようとしています。日本の情報番組やワイドショーをみているだけで一体、この問題の本質の何が解るのか、と言いたい。読者の皆さんにはもっと視野を広げて本質を見抜く能力を身につけて欲しいです。
【プロフィル】 State University of New York @Binghamton卒業。経営学専攻。ニューヨーク市でメディア業界に就職。その後現地にて起業。「世界まるみえ」や「情熱大陸」、「ブロードキャスター」、「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、Discovery ChannelやCNA等のアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。