闘病経験 力に変えて起業 脳腫瘍から復帰 中学2年生の橋本湊君

 三重県に住む中学2年の橋本湊君は、小学6年生の時に脳腫瘍と診断された後、長期の入院から復帰。現在は自身と同じように闘病する子たちのために、「minnato(みなと)」を起業し支援している。

―突然の病魔
 「行ってきまーす!」といつもの調子で友達と自転車で遊びに行く湊君の姿はどこにでもいる元気で活発な小学生だった。

 そんなある日の体育の授業後「湊君、大丈夫!?」クラスメイトがざわついた。湊君が嘔吐したのだ。暑い日だったことから熱中症だろうと思っていたが、そこから1週間食べない、食べると吐く、帰宅したら寝ていることが多くなった。

 心配になった家族は湊君を病院へ連れて行き、MRI検査を受ける。脳腫瘍が見つかった。この日を境に生活が一変した。

 両親は「とにかく信じられなかった。どうやって湊に伝えればよいのか迷った」と当時を振り返る。

―治療とその後
 入院した湊君は手術を2度行うことになる。最初は病変の一部を採取して調べる生検手術。痛みやだるさに苦しんだが、湊君は「元気になるため」と自分に言い聞かせた。回復は早く、すぐに抗がん剤治療に移ることができた。

 だが、2度目の手術は予想以上に厳しいもので、術後、湊君はずっと眠っている状態だった。医師の懸命な処置のおかげでようやく目を覚ましたものの湊君に新たな試練が待っていた。多尿を引き起こす「尿崩症(にょうほうしょう)」を併発したのだ。記憶力が低下する「高次脳機能障害」にも悩まされるようになった。

 しかし家族だけでなく主治医の先生をはじめ病院スタッフ、院内学級の先生、そして学校の担任の先生や、クラスメイトの存在、他にもスマイルカレンダープロジェクトというボランティア団体の存在が支えになったおかげで、湊君の闘病生活に小さな光を灯したのだった。

―起業のきっかけ
 自身が闘病中、周囲の支えが勇気を与えてくれたことから、今度は自分が治療中の子どもたちの役に立ちたいと、「世界小児がん啓発月間」である2024年9月「minnato(みなと)」を起業した。

 きっかけは、大阪市鶴見区でフリーペーパーを発行するなど地域貢献にも注力している吉村大作さんのYouTubeチャンネル「ほっとTV~闘病家族、心の物語~」の撮影後、オファーを受けたことだ。

 ほっとTVでは、病気と闘う家族を紹介し、ありのままの思いを収めており、2024年8月頃から、小児がん患者にギフトを贈る「ほっとTVギフト」を立ち上げる計画があった。加えて、吉村さんが湊君の思いを知り、ほっとTVギフトの普及に相応しいと思ってのオファーだった。

 起業が決まったときの心境を「最初は現実的なイメージが出来なかったですが、いざ引き受けて責任感が湧いてきました。同じように病気と闘っている子たちのために自分ができることをやりたいと思った」と話す。

 屋号は、湊君の名前にneighbor(=仲間)の頭文字「n」を加えたminnato。「僕にとって小児がん患者たちは仲間であり、その仲間みんなと幸せを実現したいとの思いを込めました」

 挑戦している事業は、小児がん闘病者に毎月、おもちゃや衣服、食品などのギフトを届けることで、少しでも生活の負担を減らすこと。年間約2000人が小児がんと診断されるデータがあることから、毎月2000人への支援を目指し、現在は、寄付を行う協賛会員や、商品提供してくれる協賛企業、事業のサポートスタッフを増やすため、週に1度オンラインミーティングに参加したり、インスタグラムによる呼びかけを行なっている。

―もう一つの夢
 「僕1人では何もできません。より多くの人に病気を知っていただくこと、そして病気で闘っている子どもたちのためにできることをしていきたいです。ご協力お願いします」

 湊君の将来の夢は医者になることだ。自らの病気と闘いながら、その経験を生かして他の人を救う存在になることを目指している。

 学業のことも考え、活動期限を2025年3月31日までとしている。支援、サポートなどの問い合わせはメールで連絡を。

■問い合わせ hot.tv.gift@gmail.com