イタリア発の高級ブランド「グッチ(GUCCI)」が、その長い歴史と革新をテーマにした巡回展「GUCCI COSMOS」を京都市京セラ美術館(京都市左京区)で開催している。会期は12月1日まで。
グッチの日本上陸60周年を記念して企画されたこの展覧会は、2023年に上海とロンドンで好評を博した後、日本での初披露となる。ブランド創設から100年を超えるアイコニックなデザインとイノベーションの数々が、来場者に新たな体験と発見をもたらすよう工夫された展示で紹介されている。
フィレンツェと京都のつながりを讃える特別な展示
本展は、グッチの創設の地であるフィレンツェと京都の深い文化的結びつきに焦点を当てている。両都市は、50年以上の姉妹都市関係を持ち、歴史的に多くの文化的価値観を共有している。そんな両都市の絆を背景に、今回の展示ではブランドの歴史とその発展が、イマーシブな展示演出で紹介されている。イタリアのファッション評論家であるマリア・ルイーザ・フリーザがキュレーションを担当し、英国のコンテンポラリーアーティスト、エス・デヴリンが展示デザインを手がけている。
エス・デヴリン氏は、展覧会のデザインについて「フィレンツェと京都の間には見えない糸のようなつながりがあり、歴史と文化を結びつける力が感じられます。本展では、ブランドの歴史を体感できる空間を作り出しました。来場者がグッチの成長と進化を、時空を超えて感じ取れる展示を目指しました」と述べている。彼女の会場デザインは、来場者が展示品との対話を楽しむことができる構成になっており、ブランドのアイデンティティとその変遷が各所で視覚的に体感できるよう工夫されている。
「Time Maze」「Zoetrope」「Echoes」など、テーマ別に構成された展示ルーム
本展では、グッチの歴史をテーマにしたいくつかの展示ルームが設けられ、ブランドが時代とともに変化してきたデザインの進化が楽しめる。「Time Maze」「Zoetrope」「Echoes」など、各展示はブランドの過去、現在、未来が視覚的に表現されており、来場者にとってはグッチの多様な歴史を辿る旅となっている。
「Time Maze」は、グッチの創設者であるグッチオ・グッチの時代から現クリエイティブ・ディレクターであるサバト・デ・サルノ氏に至るまでの歴史を反映する展示ルームである。重要なアイテムが同心円状に配置され、来場者はグッチの歴史を自由に探索することができる。展示には、1920年代に発表されたスーツケース、1953年に誕生した〔グッチ ホースビット 1953〕ローファー、1966年のフローラ パターンのシルクドレスなど、グッチのアイデンティティを象徴するアイテムが並ぶ。各アイテムが展示される空間は、まるで万華鏡のように時間を反映しており、ブランドの進化と価値観の確立が視覚的に楽しめる。
「Zoetrope」は、グッチが長年にわたりモチーフとして用いてきた「乗馬の世界」をテーマにした展示である。ここでは、疾走する馬の蹄の音や映像が、グッチと乗馬の世界との深いつながりを感じさせる。1953年に登場した〔グッチ ホースビット 1953〕ローファーや、馬具から着想を得たグリーン・レッド・グリーンのウェブストライプといったシグネチャーモチーフが紹介されており、乗馬の世界とグッチの歴史とのつながりの深さが分かる展示構成となっている。また、馬の世界と結びつくことで生まれたシンボルがブランドの美的要素としてどのように進化してきたかも理解できる内容となっている。
「Echoes」では、1970年代から現在に至るまでのコレクションがマネキンにより紹介されており、グッチのデザインがどのようにクリエイティブディレクターの手によって変化してきたかを時代ごとに観察できる。ここでは、アレッサンドロ・ミケーレがGGパターンを再解釈したアイテムや、サバト・デ・サルノが手がけた現代の作品も展示され、各時代のデザインが一堂に並び、グッチのクリエイティビティとその変遷が一目で感じられる構成になっている。
日本文化との融合を象徴する「Red Threads」展示 – 赤い糸が結ぶ過去と現在
「Red Threads」展示は、日本の「赤い糸」の伝承にインスピレーションを受け、ブランドと日本文化との結びつきが表現されている。赤い糸の伝承は、運命や出会いを象徴する日本独自の伝統であり、グッチが築き上げてきた伝統や価値観が展示を通して結びついている様子が、さまざまな表情の赤を用いた展示物で表現されている。
また、グッチの現クリエイティブ・ディレクター、サバト・デ・サルノ氏が新たに採用したシグネチャーカラー「グッチ ロッソ アンコーラ」が随所に使われ、ブランドの革新とタイムレスな美しさの融合が強調されている。この展示は、グッチの歴史とクリエイティブな挑戦がブランドの基盤となり、未来へと続く革新を促す糸として表現されている。
デ・サルノ氏は、「グッチ ロッソ アンコーラ」はブランドのアイデンティティを象徴する色だと説明している。この展示は、グッチが日本に対して抱く敬意と、グッチと日本文化が互いにインスピレーションを与え合いながら築き上げた絆を象徴しているといえるだろう。
GUCCI COSMOS展に見るグッチのアーカイブ – 過去と現在が共鳴する展示
フィレンツェにあるグッチのアーカイブ収蔵拠点には、ブランドの歴史を語る貴重なアイテムが数多く保管されており、今回の展示はそれらの厳選されたアイテムを公開する特別な機会となっている。各展示ルームには、時代を反映するアイテムが空間の一部として展示され、ブランドがいかにして進化を続けてきたかが視覚的に理解できる構成が施されている。
エス・デヴリン氏は、「展示空間全体を、グッチの過去と現在が対話する場にしたいと考えました。これらのアイテムを通じて、、来場者の皆様が未来へのインスピレーションを感じてもらえることを願っています」と語る。ブランドのクリエイティブ・ディレクターによって再解釈されてきたグッチのデザインは、まさに歴史の延長線上であり、ブランドの基盤であると同時に未来への希望を象徴している。
GUCCI COSMOS展の展示概要
本展は、100年以上にわたり築き上げてきたブランドの革新と伝統を、過去と未来の両方から再発見させる特別なイベントである。来場者は各テーマごとの展示ルームを回遊し、ブランドの進化を視覚的に感じることができる。グッチのアイコニックなデザインが時代を超えてどのように再解釈され、また革新されてきたかを体感できる機会となっている。
会場 京都市京セラ美術館(京都市左京区岡崎円勝寺町124)
開館時間 10:00~18:00(最終入場17:00)
観覧料 一般2,200円、大学生1,500円、高校生1,000円(中学生以下無料)
本展は、時代を超えて愛され続けるグッチのデザインや価値観が再確認できる貴重な機会である。京都の美術館で開催されるこの展示は、グッチの歴史と日本との文化的なつながりを讃える場であり、ブランドの進化の軌跡を体感する特別なイベントとして、多くの来場者にブランドの魅力を再発見させる内容となっている。
https://www.gucci.com/jp/ja/st/capsule/cosmos-exhibition
クレジットと謝辞
エキシビションコンセプト & デザイン Es Devlin(エス・デヴリン)
キュレーション Maria Luisa Frisa (マリア・ルイーザ・フリーザ)
エキシビション ビデオアート & オーディオコンテンツ
ビデオアート LUKE HALLS
オーディオコンテンツ POLYPHONIA
ZOETROPE ビデオアート & TIMEMAZE, RED THREADS オーディオコンテンツ
クリエイティブ ディレクター POLINA ZAKHAROVA
プロダクション HARD FEELINGS STUDIO
サウンドデザイン | コンポーザー MONOLEAK
アシスタントキュレーター DYLAN COLUSSI
エグゼクティブクリエイティブプロデューサー LARMAC PROJECTS
音声ガイドナレーター 夏木マリ
GUCCI
クリエイティブ·ディレクター サバト・デ・サルノ
「このプロジェクトの実現に協力してくださった関係各位、そしてグッチの仲間たちに心より感謝を捧げます。私たちもまたその一部である、100年を超えるグッチの歴史をともに祝福しましょう」
サバト
SPECIAL THANKS
京都市
京都市京セラ美術館
フィレンツェ市