老朽マンションを建て替えしやすく 20年ぶりの区分所有法大改正へ

 老朽化した分譲マンションが急増する中、所有者が高齢化するとともに所有者不明化が進行している。区分マンションの円滑化に向け、話し合いを行っている法制審議会は1月16日、区分所有法改正要綱案を取りまとめた。内容について解説する。(加藤有里子)

老朽マンションのイメージ

 区分所有建物の建替え要件の緩和や、管理・再生の円滑化を検討する法制審議会区分所有法制部会は、集会決議の円滑化および、安全性に問題がある区分マンションの建て替え要件を緩和した。
 これまで、相続や死亡などにより後追いできない所有者を決議の母数に入れ、決議の「反対者」と扱ってきた。この現行法を見直す。管理者または、管理組合法人が裁判所に請求し、認められたら、集会決議の母数から除外できる規律を設ける。

建て替えの賛成決議 5分の4→4分の3に

 建て替え時の改正について、基本的には、現行法どおり、賛成決議の割合を「5分の4」以上としているが、次のような状態の場合、「4分の3」に緩和する。①地震あるいは火災の安全性が担保できない ②外壁などが落下して周りに危害を及ぼす恐れがある ③給排水設備の劣化により、衛生上有害となる恐れがある ④バリアフリー化されていないなど、高齢者や障害者の移動に支障をきたす場合。
 一方、一つの敷地に複数棟が建てられている分譲団地では、次のような制度を設ける。
 こちらも、上記の分譲マンションと同様に、基本的には、現行法どおり、賛成決議の割合を全団地全所有者の「5分の4」以上とし、「4分の3」の賛成で可決できるよう緩和した。各棟の要件として、現行法では、各棟の所有者のうち、「3分の2」以上の賛成議決が必要としていた枠組みを改正。所在明らかな各棟所有者の過半数で、建て替えができるようにするとした。
 また、団地内の建物のうち、特定の建物の建て替えを承認する場合については、現行法どおり、全団地全所有者の「4分の3」以上の賛成としつつ、集会出席者の「3分の2」以上の賛成で決議できる案を検討している。

被災時の再生を円滑化

 地震や台風など天災が多発する中、大規模災害によって被害を受けた場合に摘要される規則の見直しも図る。
 大規模一部滅失、つまり建物の価格の「2分の1」を超える部分がなくなった場合および、全て滅失した建物の建替えや取り壊しに際して、「3分の2」以上の賛成で可決できるよう緩和する。
 団地では、すべての団地、または一部の団地が大規模一部滅失をした場合は上記と同じ「3分の2」以上の要件。すべての団地、または一部の団地が全部消滅した場合は、集会に出席した「3分の2」以上の賛成で可決できるようになる。
 法務省によると、要綱案は現在検討中で、2月15日の法制審総会で採択されたら、法務大臣に答申する予定。成立すれば20年ぶりの「区分所有法」大規模改正となる。 
 築40年超の分譲マンションは全国に125万戸存在すると、国土交通省が発表しているが、国は棟数まで把握できていないという。

区分所有法改正の素案

分譲マンション普及率 大阪全国3位

 市場調査を行う東京カンテイ(東京都品川区)によると、世帯数に占める分譲マンション戸数の割合を示す「マンション化率」は13.01%(2023年データ)。大阪府は、全国3位の20.29%となり、22年に比べて0.22ポイント上昇。全国一の伸び率となった。
 この法改正について、府民は「他人事」と考えるのではなく、身近な問題と捉える必要があるのではないか。