見かけない名門、英国車〝ロータス〟 F1好き筆者が体験取材

 F1でセナやライコネンらがステアリングを握った英国スポーツの名門「ロータス」。街中ではほとんど見かけることのないレア輸入車だが、果たしてどんなクルマなのか?

ロータス・エミーラの開口部のこだわりを説明する池原さん(写真左)

見かけないのに名前は伝説 ロータスが富裕層の次の選択肢になる理由

「五感」から遠ざかった現代のクルマに、運転の楽しさ取り戻す

 御堂筋や芦屋の幹線道は今や、輸入車であふれている。メルセデス・ベンツ、BMW、ポルシェ―。高級輸入車はかつて「成功の記号」だったが、街の風景に溶け込み、ステータスとしての輪郭は薄れつつある。そんな中、昨春、大阪に拠点を構えた英国スポーツの名門「ロータス」。F1でセナやライコネンらがステアリングを握り、世界を熱狂させたブランドだ。このロータスとディーラー契約を結んだ八光エルアールの担当者に話を聞いた。 (佛崎一成)

ロータス・エミーラの空力について説明する池原さん(写真右)

年間約200台の〝レア輸入車〟が大阪へ

 F1好きの筆者も、ロータスの市販車はこれまでノーチェックだった。これほど名が知られているにもかかわらず、路上で見かけた記憶がほとんどない。
 「昨年の国内での登録台数は200あるかないか。メルセデスが5万台で、そのうちGクラスだけでも6000台以上です。どれだけ少ないかが分かるでしょう。だからほかの人と被らない(笑)」
 こう話すのはロータス大阪のゼネラルマネジャー、池原亮太郎さんだ。大々的な露出が多いタイプのブランドではないが、その不器用さも含め、この英国車が「運転好きな百戦錬磨の玄人たちを惹きつけてやまない」(池原さん)という。

「ESC(エスク)GARAGE&CLUB」2階のバースペースで車談義に花が咲く池原さん(写真左)と本紙記者

 池原さんが紹介してくれたのは、見るからにレーシングカーの装いを持ったロータス・エミーラ。彫刻のように美しくボディが彫り込まれ、ところどころには大きな開口部もある。
 「この開口部は見た目を良くするデザインではなく空気の通り道。ちゃんと意味があるんです。ダウンフォースと言って、主に高速走行時の空気の流れを力に変えて、車体を路面に押し付ける役割がある」。そう説明した上で、「スピードを出してコーナーを曲がったとき、遠心力で外側に振られ、ついスピードを緩めてしまいますよね。でも、クルマが路面にしっかり押さえ付けてあると、安定していて全然怖くないんです」と池原さん。
 確かにF1が100〜200㌔の速度域でもタイヤが滑ることなくコーナーを曲がれるのは、このダウンフォースが効いているからだ。F1の場合、車体の重さを上回るほど強いダウンフォースを生むので、理論上はトンネルの天井を走れるとも言われる。
 「ロータスの出発点はレースカーです。速さを追い求める世界から生まれた」。池原さんの言葉どおり、加速を良くするためにアルミを使った軽い車体、エンジンを座席と後輪の間に置いて前後の重量配分を意識するなど、レースで得た知見が市販車にも注ぎ込まれている。「ロータスの哲学は
〝フォー・ザ・ドライバーズ(運転者のために)〟。軽さと低重心でコーナリングを良くするDNAが、長い年月をかけて受け継がれてきました。運転者には人馬一体でクルマを操る楽しさがある」と語る。

欧州車の〝性格〟

 ロータスの魅力をさらに知る上で、欧州車の歴史は欠かせない。欧州では大きくドイツ、イタリア、英国の3カ国が競い合ってきた。「歴史を知るだけでも、各国の〝性格〟が設計思想に現れていて面白いんですよ」(池原さん)
 まずドイツは〝質実剛健〟。エンジンパワーや数字で語る優等生タイプの印象だ。イタリアは情熱。フェラーリやマセラティのように、売れるかどうかよりも車体デザインの格好良さや音の美しさに振り切っている。英国はアストンマーティンやベントレーのように物語が先に走り、クルマが後からついてくる印象だ。その英国勢の中でも、ロータスはさらに異色だ。
 「(ロータスには)昔からポルシェに勝ちたいという情熱があった。だが、エンジンパワーはドイツ勢が上。直線の速さでは敵わない。そこで〝曲がる速さ〟に重点を置いた。それが軽さだったんです」
 ロータスがポルシェに挑む(勝ちたい)というテーマは、スポーツカー史の中で「軽量・高ハンドリング vs 高馬力・高信頼性」という古典的な対決にも重なる。このため、ロータスはエンジンを自社製にこだわらない。エミーラにはトヨタのV6、メルセデスAMGの直列4気筒の2種類を採用している。
 現代のクルマは安全装備や電子制御が増え、AIも入り、〝どんどん賢く〟なっていく。その分だけ運転は「五感」から遠ざかり、クルマに〝乗らされる〟時代になった。「そんな時代に運転する楽しさを残している。そこが刺さるファンがいるんです」。池原さんはそう言って笑った。

ロータス・エミーラに乗り込む本紙記者。街中で同じ車を見かけることはなく、この希少性が大きな価値となる

記者が試乗体験 静けさと〝ロケット級〟の加速 EVセダン「ロータス・エメヤ」

走り出して1分、静けさが異常

 ロータスといえば軽さ至上主義のコンパクトスポーツ—。そんな先入観を持つ人ほど、EV車のエメヤのキャビンで面食らうはずだ。
 操作の中心は中央に設置されたタッチパネル。走行状況に
応じて自動で可変するリアウイングの〝高さ〟も画面でさわって調整できる。空調も凝っている。温度を上げると赤、下げると青に光るUI(表示)が直感的で、風量や送風の向きまで指先で細かく調整できる。「これは、すごい」の言葉が何度も出る。
 最初に感じたのは、加速でもハンドリングでもなく静けさだ。試乗に同行してくれたロータス大阪の吉田安秀さんによると、「ラミネート(合わせ)構造の二重ガラスで、外からの音を抑えている」という。
 確かに、車内では普通に会話が続く。速度が上がっても騒音は盛り上がってこない。「この静かさを生かし、車内で音楽を楽しんでもらおうと、ロータスにはKEFのオーディオが入っているんです」と吉田さん。KEFといえば、ホームオーディオをそろえれば数千万円クラスの高級品だ。「担当者は、クルマにKEFが搭載されているのではなく、KEFのオーディオにおまけでクルマがついてくると言っていました(笑)」
 新しいロータスは「高級車っぽい」ではなく、すでにラグジュアリーの領域に立っていた。
 ボディサイズは幅約2㍍、全長約5.1㍍と身構える大きさだが、運転していると不思議に大きさを感じない。逆にコンパクトで運転しやすいように感じる。
 加速はとにかく滑らか。アクセルに対してダイレクトに反応し、どの速度域からも、踏んだ分だけスッと前へ出る。エンジン車のような「ブルーン」がない分、音の物足りなさを感じるかと思ったが、次の瞬間、その感情は置き去りにされた。

 阪神高速でアクセルをちょっとだけ踏み込むと、加速がまるでロケット。血液が後ろに引っ張られ、感じたことのないG(加速度)が体をシートに押し付ける。「試乗されたみなさん、この加速に笑顔が漏れるんです」。ミラーに映る私も無意識に笑みがこぼれていた。
 回生ブレーキ(減速時に発電する仕組み)も段階調整でき、アクセルを戻したときの減速の強さが変えられる。「エンジンブレーキっぽく走る」や「惰性でスーッと流す」も選べ、慣れるほどブレーキをあまり使わなくてよくなるので、運転がラクになりそうだ。
 エンジン車「エミーラ」に対し、EV車の物足りなさを感じるかと思ったエメヤだが、「もしかするとEV車はロータスのためにあるのではないか」と納得させられる試乗体験になった。EVの加速の良さがロータスの軽量思想にバッチリハマっていて、走りはちゃんとスポーツカー。EVでも運転が楽しいというブランドの芯はしっかり保ったままの進化。エメヤはそれを感じさせてくれるクルマだった。

自由に空間をカスタマイズできるガレージスペースの他に、コワーキングスペースやバー、サウナなどを備えた「ESC(エスク)GARAGE
&CLUB」。阿波座駅からほど近い場所にあり、タワーマンションなどの機械式駐車場で車が入らない場合にも重宝する

■取材協力/ロータス大阪(八光エルアールなにわ支店内)大阪市浪速区稲荷1-9-22/電話080(7493)5403

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