2030年秋ごろの大阪IR開業を見据え、警備会社SHOWYA(兵庫県宝塚市・梶屋都社長)が要人や富裕層らを対象にした身辺警備「エグゼクティブガード」に乗り出す。警備員には元格闘家や現役選手を積極的に採用し、新たな警護需要を取り込むとともに、引退後の仕事に悩むセカンドキャリアの受け皿を目指す。

IR開業で高まる警護需要
大阪・夢洲では、ホテルや国際会議場、展示場、飲食・エンターテインメント施設、カジノなどを備えた大阪IRが2030年秋ごろの開業を目指している。
国内外から多くの人が訪れる新たな国際観光拠点が誕生することで、同社が新たな市場として着目したのが、富裕層や企業経営者、著名人らを守る民間の身辺警備だ。IRを訪れる海外富裕層本人だけでなく、その家族の観光や移動時の警護、著名人の講演会やイベントなどで需要が見込めるとみている。
警備業務は内容によって大きく1~4号に分けられる。1号は施設や空港などの警備、2号は交通誘導やイベントなどの雑踏警備、3号は現金や貴重品、危険物などの運搬警備。そして4号が人の体への危害を警戒、防止する「身辺警備」だ。
同社はこれまで約8年間、工事現場などで交通誘導を行う2号警備を手がけてきた。今回、新たに4号警備の体制を整え、「エグゼクティブガード」として本格的に事業化する。
ただ、民間警備員は警察官とは異なり、警備業法によって特別な権限を与えられているわけではない。危険が迫った場合も相手を倒すことが目的ではなく、警護する人を安全な場所へ避難させることが最優先になる。
統括責任者の柏木滉介さんは「強いだけでは警備の仕事はできない。何かあれば攻撃するよりもまず警護する人を避難させ、安全を確保することが優先」と話す。

DEEP王者もボディーガードに
この事業の大きな特徴が、格闘家を警備員として積極的に登用する点だ。
事業責任者を務める催領(さい・りょう)さんは、総合格闘技(MMA)団体「DEEP」でチャンピオンになった経歴を持つ。格闘技で実績を残す一方、これまでは収入の面から工事現場などにも従事してきた。同社では、催さんを皮切りに実績のある現役・元格闘家らの採用を進めていく。
「格闘技で培った身体能力はもちろん、相手との距離の取り方や瞬時の判断力も身辺警備に生かせる。特にMMA経験者は打撃だけでなく組み技にも精通しており、危険人物をむやみに攻撃せず、制止する技術との親和性も高い」と柏木さん。
一方で、格闘技の実績だけで採用するわけではない。法令や警備の基本動作、接遇などを学ばせ、警護対象者や周囲の人と適切にコミュニケーションを取れる人材に育てる。
同社ではすでに事業展開の一環として、このほど来日したハリウッド映画プロデューサー、トム・デサント氏の民間警護も担当した。今後は関西一円を中心に、海外富裕層や経営者、著名人の移動、講演会やイベントなどでの利用を想定している。

格闘家に「次の出口」を
同事業のもう一つの狙いが、格闘家のセカンドキャリアづくりだ。
第一線で活躍できる期間が限られる格闘技の世界では、引退後にジムを開いたり、飲食業など別の道へ進んだりする選手も少なくない。しかし、「競技で高い実績を残しても、それまで磨いてきた能力を直接生かし、安定した収入につなげられる仕事は限られている」と柏木さん。
身辺警備なら現役中から競技と両立することもできる。引退後は警備の経験を重ね、将来的に新人を育てる教育担当や事業を担う立場へ進む道も描く。
柏木さんは「格闘家のスキルを一番生かせる形の仕事にできる。格闘家が警備業界に入ることで、業界が抱える人手不足や高齢化という課題の解決にもつながる」と期待している。
