京都市京セラ美術館の本館 北回廊1階で「浮世絵スーパークリエイター 歌川国芳展」が7月18日から9月23日の期間、開催されている。

つい先日、大阪市立美術館で開催中の特別展「水滸伝」に行った際にも歌川国芳が描いた豪傑たちの絵が会場内に所狭しと展示されていたが、今回は正真正銘の彼にフォーカスを当てた展覧会になる。
歌川国芳は江戸時代後期に活躍した浮世絵師で、「武者絵の国芳」「大のネコ好き」「風刺・ユーモアたっぷり」など、〝奇想の絵師〟として知られているが、美人画を描かせれば粋で元気な魅力あふれる女性を、役者絵を描かせれば特徴を捉えた人気役者を、風景画を描かせれば西洋絵画の表現を取り入れた斬新なタッチの景色をと、マルチな才能を発揮していた絵師なので、彼の名前を知らなくても、作品を見れば「ああ、この絵か!」と誰もが気付くはず。
内覧会では、同展覧会を監修した福島県立美術館の学芸員である月本寿彦氏が、主要なポイントを紹介しながら即席ツアーを行い、国芳の作品は「動的でダイナミック、そして映画的」と説明。

また、月本氏曰く、「天保の改革によって歌舞伎役者や女性を描くことを禁止されたので、表現方法を模索し、妖怪を描き始めたが、このようにお上にあがなうことを厭(いと)わない国芳の作品には社会風刺が込められているものも多く、それが受けてよく売れていた」そうだ。逆に、狂画というジャンルの作品は、彼が生きている間はあまり売れなかったので、印刷された枚数が少なく、状態の良いものしか残っていないため、今では希少な存在になっている。様々な絵を描いた国芳の作品は、現在の漫画やアニメのルーツと考えられている節もあるという。
展覧会自体に目を向けると、同展は映画や芝居を見るように、スーパークリエイターの歌川国芳の世界を楽しめるように、約200点を6つのジャンルに分けて6幕で構成されている。
まず会場を一歩入ると、そこには即視感のある絵がずらり。ここは第1幕の「KUNIYOSHI’s アクション!」で、そこには水滸伝でもみた「通俗水滸伝豪傑百八人之一個(一人)」、その後の「本朝水滸伝豪傑八百人一個」などの武者絵が飾られている。


その先には、見逃しては行けない「宮本武蔵と巨鯨」や「讃岐院眷属をして為朝をすくふ図」など3枚続きの『続絵(つづきえ)』が展示されている。


第2幕の「KUNIYOSHI’s モンスター!」では、武者絵にも敵役として登場する怪物や妖怪の絵が並んでいる。西洋の解剖図を参考にしたと思われる骸骨など、卓越した描写力が根底にあることにも注目。


また、当時の幕府の政策を比喩的に批判したとされる絵を描き、現世の窮屈さをモンスターに託して打ち破ろうとする、江戸っ子らしい国芳の気概を感じることもできる。
第3幕の「KUNIYOSHI’s ビューティー!」は、打って変わってピンクをベースにした華やかな空間になっていて、美人画が並んでいる。国芳の美人画には動作が大きく、健康的かつ爽やかな色気が特徴的な町娘が多く描かれている。染物屋生まれだけに着物の柄や色彩などにもこだわりを感じる。


第4幕の「KUNIYOSHI’s ハンサム!」では、国芳の気っ風のよさと絵師としての腕の良さを踏まえてのハンサムさに該当する作品が並んでいる。

優れた絵師だった師匠の才能を受け継いだ国芳は、役者の表情や特徴を見事に捉えた作品を数多く残していて、役者などの絵以外にも、武者絵で鍛えた筆力で、「野晒悟助」など、強きをくじき弱きを助ける侠客や男伊達を色気たっぷりに描いた。

第5幕の「KUNIYOSHI’s ヴィジョン!」では、「名所絵」とも呼ばれる風景画を展示している。街道が整備されるようになった江戸時代後期に生まれた、比較的新しい浮世絵のジャンルで、歌川広重がこの分野の大成者として知られている。

郷愁や情緒を前面に出す広重とは異なり、国芳は独自に西洋画を学んだ成果を存分に発揮し、リアルな江戸の風景を描き出した。
その中の「東都三ツ股の図」では、遠方に描かれている塔がスカイツリーのように見えることから、彼には予知能力があったのかもしれない、という噂も。

第6幕の「KUNIYOSHI’s アイデア!」では、国芳の真骨頂ともいえる戯画を中心に展示している。

笑わせることを目的とした絵画は古くからあるが、国芳ほど洗練された表現でカラフルに生き生きと描写できる浮世絵師は他に見当たらない。人を集めて人に仕立てたり、猫が集まって文字を作ったり。さまざまなバリエーションを展示している。


最後には、国芳の作品をデジタル化したイマーシブアート映像を上映し、彼の多才で多彩な国芳ワールドを体感できる様になっている。
国芳の作品を通して、さまざまに繰り広げられる国芳ワールドはもちろんのこと、当時のひとびとの暮らしぶりも感じながら、その人となりを感じ取れる様なユニークな解説を交えて、見どころを紹介しているので、深い知識がなくても楽しめる展覧会といえそうだ。
開館時間は午前10時から午後6時まで(入場は同5時半)。休館日は、月曜日。ただし祝日の9月21日は開館。料金は税込で、一般1,900円、高大生1,400円、小中生700円。
詳細は公式サイト(http://www.ktv.jp/event/kuniyoshi/)へ。
