大阪在住の会社員や不動産関係者らが、奈良県吉野町笹良地区の空き家を改修し、農泊ができる民泊施設に再生する取り組みを進めている。合同会社としてササラクション(大阪市中央区)を設立し、農業体験や自然体験を通じて地域との関わりを生み出し、将来的には移住促進にもつなげたい考えだ。施設は今秋のオープンを目指している。(加藤有里子)

土にふれ、食卓囲み、新しい縁生む
大阪市内の会社員や不動産会社らが中心となって設立したササラクション。奈良県吉野町佐々羅(ささら)地区の古民家を、宿泊しながら地域の暮らしや自然にふれられる一棟貸し農泊施設として再生する計画だ。
空き家や休耕地の再生、地域資源の活用、地元農家との連携を通じて地域活性化を図るのが目的で、農泊事業を通じて地域外から人を呼び込み、継続的に関わる「関係人口」を増やすことを目指している。
施設では、田植えや稲刈り、野菜の収穫といった農業体験のほか、ホタル観賞や星空観察など季節ごとの自然体験も企画している。さらに、地元で採れた米やジビエなど地域食材を味わう機会も設け、吉野の暮らしや食文化を体験できる拠点づくりを進めている。体験に参加せず、宿でゆっくりと滞在することもできるという。
活動の背景には、メンバーの一人で、空堀商店街の活性化などに携わってきた松富謙一さんの思いがある。母親が吉野出身で幼い頃からこの地を訪れ、にぎわいのある風景を記憶している松富さん。しかし、空き家が増え、人の気配が薄れている現状に「自然豊かなこの地域を何とか残したいと思い、大阪の仲間や地元住民とともに活動を始めた」と話す。
吉野町は人口減少が進み、2026年2月現在で5585人。かつては2万人を超えていたが、過疎化とともに空き家も増え、消滅可能性都市の一つに位置付けられている。

老若男女問わず自然体験
完成に先立ち、地域を知ってもらおうと、月に一度ほど体験イベントを開いている。主に大阪から若者や家族連れなどが参加し、農業体験や食事交流などを通じて吉野にふれている。完成するまでの間も、イベントを継続していく予定だ。
2月下旬に行われたイベントでは、原木しいたけの栽培所を見学したり、畑で野菜を引き抜く体験に子どもたちが夢中になり、元気に走り回っていた。初対面の大人も巻き込みながら終始にぎやかな様子で、自然の中で遊ぶ姿が見られた。昼食には吉野のイノシシ肉のすき焼き、炭火で焼いた鹿肉、原木しいたけなど地元食材が並び、子どもから50代までの参加者が食卓を囲んで交流を深めた。参加した保護者の一人は「人見知りだった娘が、ここでは積極的に遊び、笑顔が増えた」と話す。
同代表で地元出身の辰已龍司さんは「自分たちにとっては当たり前の風景でも、都会の人には新鮮に感じるようだ。子どもも大人もイベントを楽しんでくれている。吉野を身近に感じてもらい、将来的には移住につながれば」と意気込む。

