万博の3兆円効果 中小企業の受け止めは? シティ信金が1,400社調査、7割が「大阪経済に効果」

 大阪・関西万博は、国内外から多数の来場者を呼び込み、地域経済に幅広い影響をもたらした。経済波及効果は約3兆円と試算され、中小企業にとっても販路拡大や新規取引の獲得など、万博を契機とした事業機会が生まれた可能性がある。では、大阪府内の中小企業は、この半年間の経済効果をどう受け止めたのか。大阪シティ信用金庫が11月上旬、取引先1,400社を対象に実施した調査(有効回答1,229社)で、その実像が浮かび上がった。

事業影響はプラス・マイナスが拮抗

 万博が自社事業に与えた影響については、「プラスの影響があった」が25.2%、「マイナスの影響があった」が24.4%で拮抗した。一方、「特に影響はなかった」が50.4%と過半を占め、事業への直接的な影響は総じて限定的だった。業種別では、小売業(33.8%)、運輸・通信業(32.9%)、建設業(32.0%)でプラス影響が3割を超えた一方、製造業や卸売業ではマイナスの割合が上回った。

売上増や新規顧客、プラス効果の内訳

 プラス影響の具体的内容(複数回答)では、「売上・受注の増加」が48.9%で最多。「新規顧客の獲得」(35.2%)も多く、一時的な需要だけでなく今後の事業拡大につながる効果を指摘する声がみられた。「自社ブランド認知度向上」(14.7%)、「新商品・サービス開発機会の創出」(5.5%)なども挙がった。とくに建設業では「売上・受注の増加」が73.6%と突出し、会場建設やインフラ整備といった万博特需の恩恵が大きかったとみられる。

コスト高や人手不足、負の側面も

 マイナス影響では、「コストの上昇」が51.7%と最も多く、原材料費や人件費の高騰が負担となった。「物流の遅延」(24.0%)、「人手不足の深刻化」(22.7%)も続き、慢性的な人手不足が万博期にさらに悪化した状況がうかがえる。このほか「受注機会の喪失」(20.7%)、「地域格差の拡大」(11.0%)など、効果の偏在を指摘する声もみられた。

大阪経済への効果 7割超が肯定的

 万博が大阪経済に与えた全体的な効果については、「大いに効果あり」(15.3%)と「一定の効果あり」(59.6%)を合わせた「効果あり」が74.9%と、4社に3社が肯定的に評価した。「効果は限定的」は15.2%、「全く効果なし」は9.9%だった。いずれの業種でも「効果あり」が7割を超え、万博による経済活性化を広く実感していることが示された。

万博レガシーへの評価

 万博レガシー(持続的成果)として感じるもの(複数回答)は、「交通インフラ整備」が44.5%で最多だった。「夢洲の都市開発」(31.7%)が続き、物流効率や顧客アクセス向上など事業基盤の改善を評価する企業が多い。「SDGsや未来技術への取り組み拡大」(26.0%)、「施設再利用による地域活性化」(20.3%)、「国際交流・多文化共生」(18.8%)なども挙げられた。

大阪IRの期待度は

 夢洲に建設予定の統合型リゾート(IR)への期待度では、「大いに期待できる」は16.8%にとどまったが、「どちらかといえば期待できる」が59.5%と多く、「期待できる」は計76.3%となった。ただ、「期待できない」も23.7%あり、ギャンブル依存症や治安悪化など社会的懸念は根強い。業種別では建設業が81.6%と突出して高く、関連需要への期待がうかがえる。

 大阪・関西万博は、中小企業にとってプラスとマイナスが交錯しつつも、経済活性化やインフラ整備などの面で一定の成果を残したとの見方が多い。IR開業を控えるなか、万博レガシーを地域発展につなげられるかが今後の焦点となる。

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