塩野義製薬(大阪市)の代表取締役会長兼社長CEOの手代木功氏は大阪市内の本社で報道関係者向けの説明会を15日に開き、2025年度に相次いで実施した3件の大型投資案件について、経営戦略上の意義と今後の方針を説明した。
同社は現在、HIVウイルス治療薬を手がける英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)などが出資するViiV社(英国)への出資比率引き上げ、日本たばこ産業(JT)の医薬事業(鳥居薬品を含む)の買収、米国でのエダラボン(筋萎縮性側索硬化症=ALS=治療薬)事業の取得という3件の大型案件を完了。手代木社長は「今回の3つの案件は経営基盤の強化という観点から、いずれも意味のある動きだった」と総括した。
ViiV社への追加出資では、製薬大手ファイザーの持ち分売却を機に出資比率を従来の約10%から21%超に引き上げ、持分法適用会社とした。同社は塩野義製薬が創出したHIV治療薬の候補化合物「S―365598」の開発を進めており、手代木社長は「6カ月に1回の注射で済み、既存薬とは異なる耐性プロファイルを持つ次世代薬の実現に向け、ViiV社内での発言力を高めたかった」と述べた。現在主流の「毎日飲む治療薬」に代わり、数カ月に1回の注射で治療が完結するいわゆる「長時間作用型注射薬(LAI)」への移行が、患者の生活の質向上につながるとして、次世代のHIV治療の主軸と位置づけている。
JT医薬事業の買収については、二つの意義を強調した。一つは低分子化合物(飲み薬などの基盤となる小さな分子)の研究開発力の強化で、「JTは低分子領域で国内屈指の研究力と人材を持つ。一緒になることで、日本発の創薬力を世界水準に引き上げられる」と語った。もう一つは子会社となる鳥居薬品を通じた国内収益基盤の底上げで、同社が強みを持つアレルギー・皮膚科領域の製品群が加わることで、流行の有無に売上が左右されがちな感染症薬に頼らずとも収益を確保できる体制を整えるとした。「鳥居薬品の売上は対前年12〜15%程度で伸び続けており、良い製品に適切な資源とインセンティブを投じれば伸びると実感している」と述べた。
エダラボン事業については、ALS治療薬「ラジカヴァ」を扱う約140人規模の米国チームをグループに迎え入れた。手代木社長は「希少疾患ならではの流通ノウハウや患者団体・保険者との関係構築力を持つ人材をまるごと獲得できた。米国での希少疾患領域への本格参入に向けた重要な一手だ」と説明した。これにより今年度の米国売上は1,000億円規模に達する見通しで、筋肉やCNS(中枢神経)、小児領域の希少疾患を今後の注力分野と位置づける方針も示した。

3案件の総投資額は約8,800億〜9,000億円規模で、同社が中期経営計画で示していたキャッシュ配分計画の範囲内に収まるという。手代木社長は「タイミングが重なったため驚かれたかもしれないが、それぞれ最適な時期と金額を見極めた結果だ」と語った。
今後については、2026年度を3案件の定着と統合に集中する1年と位置づけ、2027年度以降に新たな中期経営計画を発表する予定。「現在の売上目標8,000億円はすでに通過点となりつつあり、次の計画ではまったく異なる新しい数字を示す」との考えも明らかにした。
