【特集 不登校②】親子の関わりを考える わが子に親の“理想”を押し付けていませんか?

親子の関わり方を考える

 過去最多となった小・中学生の不登校。最も多かった要因は「無気力・不安」だった。それを引き起こす原因は、一つではないことは百も承知だが、本紙では「親子の関わり方」について焦点を当ててみたい。

〝ありのまま〟を認めてあげる大切さ

 無気力になった原因は「受験で燃え尽きた」「学校での生活が理想と違った」「期待に応えようと頑張りすぎて疲れる」などさまざまだ。というより、特にこれといった原因が見当たらず、何かの理由で自己肯定感が低かったり、日々の生活に物足りなさを感じ「なんとなく学校へ行かない」ケースがほとんどだ。

 そんな子どもに「学校に行きなさい」と強要したり、無理やり保健室登校をさせても復学は難しい。

 過去に公立中で教頭を務めた小菅薫さんは、自らの経験から「まずは子どもを休ませ、無気力から前に進みたい気持ちを取り戻してもらうことが先決」とアドバイスする。小学校の現役教諭も「子どもはストレス耐性が身についていない。学校や家庭での小さな不満が積み重なることで、不登校へと発展する」と話す。

>>参考:文部科学省「令和2年度不登校児童生徒の実態調査」結果の概要

友達選びにも介入 過干渉の保護者たち

 小学生の場合、原因の2位は「親子の関わり方」だ。大阪市内でフリースクールで働くスタッフは親の束縛を指摘する。

 「例えば面談をした時に、こちらは子どもに質問をしているのに、親が先に口をはさむ」という。

 こうした過干渉の保護者の中には、子ども同士のトラブルや、友達選びなど必要以上に介入しているケースも少なくない。先ほどの小学校教諭は「今は過保護か放置か、二極化が進んでいるように見受けられる。自分自身で選択したり判断したりする機会を与えなければ子どもは成長しない。ある程度は見守る姿勢が必要だと思う」と話している。

 不登校児童・生徒と日常的に接する男性カウンセラーは「大切なのは〝転んだ〟時に自分で立ち上がれるようになること。転んでもどう立ち上がればいいのかを分かっていれば、再び自分の足で歩き出せる」と話している。

「理想の子ども」になろうと透明な存在に

 小中学生ともに不登校の原因3位だった「非行」は「家庭での問題」が影響するケースが多い。

 子どもたちの口からは「両親が仲が悪く、家庭内に居場所がない」「勉強やスポーツなど、目に見える成績でしかほめられない」「親の干渉(友人関係、勉強、将来について)が厳しい」「(親が自分に無関心であると感じ)自分に意識を向けさせたい」といった声が上がっている。

 原因の多くに共通するのが保護者が求める〝理想の子ども像〟。この無意識の強要に反発しているようにも映る。

 記者自身の経験談だが、小学生の息子のクラスメイトに、家では良い子、外で問題行動を起こしていたA子さんがいた。息子からは毎日の夕食時に「今日はA子がこんなことをした」などと聞かされていた。

 あるとき、A子さんの非行が明るみに出て、保護者会が開かれた。そこで気づいたが、A子さんは家では保護者が求める理想の子どもを演じ、そのストレスを外で発散していたのかもしれないと
いうことだった。

 事実、A子さんの保護者は、理想のA子さんの姿しか知らない様子で「A子はそんな子ではない」と憤っていた。

本当の親の愛情とは何なのか?

 子どもに限らず、同調圧力のある社会で生活していくには、時に相手に合わせ〝透明な存在〟になることを強いられる。大人も会社で嫌なことがあれば、家庭や同僚との飲み会で自分自身をさらけ出してストレスを発散したり、場合によっては会社をやめる選択をしたりできる。

 その一方、現代社会がいかに多様化、複雑化したとはいえ、子どもの居場所を思い浮かべると学校と家庭ぐらいであり、大人に比べ、子ども自身が知っている選択肢も狭い。こうした中、家で〝透明な存在〟であることを強いられれば居場所がなくなり、外部に発散先を求めてしまうのかもしれない。ありのままの自分が否定されているわけだから当然、自己肯定感も低いままだ。

 不登校問題に長く携わった大阪市立小の元教頭は「親の都合の〝いい子〟でいることを評価するのではなく、ありのままの姿を認め愛情を示すことが大切」と指摘する。

 少年問題を中心に取材を重ねるジャーナリストの沢浦武雄さんは「本来、子どもは不特定多数の人と出会い、遊び、時にけんかしながら人間関係を築く力を養う。自分の意思、異なる考えを受け入れる力、それらが結実してその子の『生きる力』となる」と話している。

 オンラインやフリースクールなど多様な教育機会の確保が進んでいるが、社会で生きる力をどうつけさせるかも重要だ。親の愛情とは何か。複雑多様化し、社会で生きることがますます困難な時代だからこそ、立ち止まって考えることが必要かも知れない。

>>続き【特集 不登校③】「学校以外の選択肢は?」「親の関わり方は?」