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「まねき食品」が万博で挑む〝究極のえきそば〟に込めた思い 「伝統の味を未来へ━」

100グラムの神戸牛は味のアクセントになっている「究極のえきそば」

 「まねき食品」(兵庫県姫路市)が開催中の万博会場で提供している〝一杯3850円〟のえきそば。この価格だけが先行し、「高すぎる」と驚く声も聞こえてくる。しかし、その一杯に込められた思いとこだわりを知れば、単なる〝高級えきそば〟ではない。

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「この器に見合うものを」輪島塗の器にふさわしい〝究極の一杯〟

 まず目を引くのは、最高級の漆器である輪島塗。今回、万博で使用する輪島塗の器は、能登半島地震の被災地復興の一助となるよう購入されたもの。能登の職人が一つ一つ手作りした器に「見合うだけの価値を持つ一杯を提供する」ことを追求した。この器にふさわしい材料を考え抜いた結果、「究極のえきそば」は誕生した。

 伝統の和風だしに、ホタテやハマグリの旨(うま)味を凝縮。麺は、その風味や食感を最大限に引き出せるように調整された生めんを使用し、注文ごとに茹(ゆ)で上げる。そしてトッピングには、世界に誇る和牛ブランド・神戸牛を贅沢に使用。この組み合わせには、ただの高級感を演出するためではない。「食を通じて被災地・能登を支援したい」そんな思いが一杯のえきそばに込められているのだ。

 同社の竹田典高社長は「万博に出店するからには意義がなければならない」と語る。その意義とは、単に高級なえきそばを提供することではなく「食を通じて世の中を元気にすること」日本が誇る伝統や文化を「次の時代へつなぐー」そんな願いも込められている。

 このほかにも、同社が提供するのはこの究極のえきそばだけではない。より多くの人に味わってもらえるよう、1000円を切る弁当や、2000円以内のセットメニューなど、手頃な価格帯の商品も揃えている。「たけだの穴子めし」や「神戸牛すき焼き×焼肉あいのせ重」など、地産地消のこだわりが詰まった弁当を販売。気軽に楽しめるものから、特別な体験としての〝究極のえきそば〟までさまざまな形で同社の味をラインアップしている。

気軽に楽しめるお弁当

未来の電車が走る空間 〝食べる体験〟の演出

 食べる環境にも、同社のこだわりがある。万博会場の店舗には、プロジェクターによる姫路駅の懐かしいホームを模した演出がされている。ホームに立って一杯のえきそばをすする……、そんな「旅の記憶」が、万博会場で再現されるかもしれない。

 そして店内に入ると、まるで未来の電車が走っているかのような幻想的な空間が広がる。店内全体が「旅」をテーマにした演出となっている。「えきそば」は、鉄道と共に歩んできた歴史を持つ。この背景を大切にしながら未来へとつなげるような、幻想的な空間を作り出している。「食べる体験とは、味覚だけでなく、五感すべてで楽しむこと」同社はこのすべてをデザインし、〝究極の食体験〟に挑戦している。

店内のプロジェクターに未来の電車が走る

〝おもてなし〟の心を随所に ユニフォームからお土産まで

 スタッフのユニフォームにも、同社ならではのこだわりがある。世界的ファッションデザイナーのコシノミチコ氏がデザインしたTシャツで、日本文化を象徴する「箸を持つ手」がモチーフとして取り入れられている。そこには「日本の食文化」と「おもてなしの心」を伝える意味が込められている。このTシャツは購入も可能。

 さらに、お土産にも注目。レトロなデザインのクッキー缶で、日本の〝Kawaii〟文化の原型をつくったといわれる内藤ルネ氏のイラストをパッケージに使用。6種のクッキーの詰め合わせで3240円で販売している。

内藤ルネ氏のレトロな缶に入ったクッキー

「食を通じて、日本の文化を世界に広めること」

 同社は、ただの高級えきそばを万博で提供したいわけではない。能登の未来を応援し、日本の食文化を発信し、〝おもてなし〟の心を体現する場としている。竹田社長は、「食を通じて、日本の文化を感じ、日本人としての誇りを持って帰ってもらえたらー」と思いを馳せる。加えて、「『なぜ3850円なのか?』と疑問に思う人は、ぜひこのえきそばを前にして、器を手に取ってみてほしい。そして、そのスープを一口飲み、麺をすすることで、そこに込めた物語を感じてほしい。万博を通じて、BENTOやEKISOBAを世界の公用語にしたい」と、熱く語っていた。