若者の国モザンビーク、7カ国語と日本語を操るガイドが元気いっぱい案内 若い発明家の展示も

 モザンビークパビリオンで声をかけたスタッフが、よく喋る。彼は7カ国語を操り、昨年の4月に来日したそうだが、すでに普通に日本語で会話ができるレベルで日本語を使いこなしていた。

 そんな彼にモザンビークはどんな国なんだ? と質問をぶつけると、あらゆる角度からの説明をしてくれた。

 大きく分けるとモザンビークは2つの地域に分かれるが、元々はたくさんの民族、部族や王国に別れていたものが統一されていき、最終的には南と北の2つの地域が1つになってモザンビークになったそうだ。その際に武力による争いではなく、話し合いや交渉でまとまっていったので、今でも皆が仲良く暮らしているという。国内には40もの言語が存在し、それぞれに文化や習慣が違っているが、共通することも多いので、言葉が通じなくてもコミュニケーションを取ることは可能らしい。公用語はポルトガル語で、国の正式な言語として存在している。

 他のアフリカ諸国同様に、人口に占める若者の割合が高く、彼らのイノベーションの力に期待していて、その現れがパビリオン内に成功例としてパネルで紹介されている若い発明家たちだ。子どもの頃から廃材を集めてメカ工作をしていたジョエンツォ・カリストさんや、ドローンをゴミから集めたパーツで自作するクレイトン・ミシャキさん。

 どちらもこの先、大きく羽ばたくために支援を求めている。何もないところから新たなものを生み出す能力は凄いものがあるようだ。何でもある日本で、「何もない」と嘆いて何も行動しない人が多い現実を考えると、彼らは尊敬に値する存在かもしれない。

 展示物では、映像を使ったインタラクティブなものが幾つかあり、モザンビークについて色々と学べるようになっていた。

 館内の真ん中には船をイメージしたセットがあり、イスとテーブルが用意されていたのだが、現在は何も使用されていない。本来は、ここでモザンビークのフードやドリンクを提供するつもりだったのだが、税関で食材が留められたまま、品物が届かないという。
 万博会場全体を通して、発展途上国からの食材に対して厳しい対応をしているのが頻繁に目につく。日本の安全を守るという理由は分かるが、万博であり、彼らも国を代表して参加しているので、万博特例などで対応できないものだろうか。

 モザンビークは若い国なのでどんどんチャレンジして、失敗しても次へ進み、柔軟に対応していく、という話を聞いた後だったので、日本の官僚主義的な凝り固まった臨機応変さのない状況には残念でならない。

 また柔軟性がある理由の一つに、国が統一されて独立後、国内で人の移動が大々的に行われ、地域が人と人で繋がっていることも大きい。どの地域にも家族や親戚がいるので、出身地や出身母体が違っても、それを超えて結ばれているそうだ。ここでも違ったバックグラウンドを持つ人たちがお互いに受け入れあって共存している。

 他にも現地の風習として、一夫多妻制を採用しているので大家族で子供も多く人口が爆増中だという話もあった。子どもが3、4人は当たり前で、母親が違ってもお互いに家族として助け合って生活しているという。ただ一夫多妻制を採用しているからといって男性優位の社会とは言い切れず、人として男女間の差はなく、多くのリーダー的ポジションを女性が占めていたり、強い男性の横に強い女性がいることが多いとか。現職の大統領は男性で、首相は女性が務めているのは一つの例。
 歴史的に見てもアフリカは女性リーダーが多く誕生しており、独立戦争を戦った国の多くは女性リーダーに導かれた。
 日々の生活の中では男女の役割はある程度分けられているが、「人として」や、社会的責任を担う度合いは男女に差はないということだった。

 色々教えてくれたスタッフの男性は、自国を良くしていくためのアイディアをたくさん持ち合わせていて、野心的でもあったので、「将来は大統領になれば?」と薦めると「それもありだな!」と笑っていた。また、政治の世界に行かなくても国を助ける方法は幾らでもあるから、何かしらの貢献はしたいと語っていたのも印象的だった。

 同国は世界最貧国で、危険な国という印象があるが、話を聞く限り、これからの成長を大いに期待できる国のようだ。