所得制限を設けず、3人以上の子どもを扶養する家庭が対象となる大学などの授業料無償化制度が2025年度からスタートする。新たに支援対象となるのは41万人。制度について詳しく解説する。

大学授業料 多子世帯は無償化へ
政府は3月7日、「3人以上の子どもを扶養する〝多子世帯〟」を対象に、大学や短大、専門学校の授業料を無償化するための法改正案を閣議決定した。これまでの所得制限を撤廃し、2025年度から新たに41万人が支援対象となる。
国公立大の授業料と入学金は全額免除となり、私立大も最大授業料70万円・入学金26万円が支援される。政府は「多子世帯の教育費負担を軽減し、進学の機会を広げる」としているが、大学側が授業料を引き上げる可能性もあり、実際の負担軽減につながるのか疑問視する声もある。
所得制限を撤廃 国公立は実質無料に
政府の発表によると、新制度はこれまでの年収600万円以下の所得制限を撤廃し、すべての多子世帯が支援対象になる。現行では、対象世帯の約6割しか制度を利用していないことから、高校などを通じた周知を強化する方針だ。
新制度の実施には年間2600億円が必要とされるが、一部の大学関係者からは「大学の財政を支えるため、授業料の引き上げを検討する動きもある」との声も出ている。
例えば、現在の国公立大の授業料は年約54万円だが、政府の支援が入ることで大学側が値上げし、結果的に負担軽減の効果が薄れるのではないかとの指摘もある。また、私立大の場合、支援額(70万円)を超えた分は自己負担となるため、学費の高い大学では依然として家計の負担が大きい。

支援対象は
支援対象となるのは、扶養する子どもが3人以上いる世帯。ただし、3人兄弟でも第1子が就職して扶養を外れた場合、第2子以降は支援対象外となるため、家族構成によっては恩恵を受けられないケースも出てくる。
政府は今国会に法改正案を提出し、成立すれば25年度から在学中の学生を含めて支援を開始する予定だ。
負担軽減につながるか
政府は「子どもの多い家庭の教育費負担を減らし、進学の選択肢を広げる」としているが、大学の授業料引き上げの可能性や、支援の対象外となる家庭の問題も指摘されている。今後、具体的な運用方法や、大学側の対応が注目される。