どうなる? 住宅ローン金利 米国は30年物固定金利が7%に迫る勢いに!

 物価上昇は今、世界中の悩みのタネ。行き過ぎたインフレを抑えるため、欧米の中央銀行は足並みをそろえ金融引き締めに動いている。その副作用として欧米では住宅ローン金利が急上昇。「早晩、日本も…」とローン返済中の家庭は不安を感じているのでは。どう向かい合えばよいか、経済の仕組みも学びながら考えてみよう。

 まず、物価上昇とはどういった現象か。金融的な見方ではモノよりお金の価値が下がっている状況だ。金融政策はこの視点に立ちインフレ退治を行う。その手法が金融引き締めで、やることは大きく二つある。

 一つは増え過ぎたお金を減らし、お金の価値を上げること。中央銀行は国債や金融商品を買い、代金の支払いにお金を刷ることで世の中に出回るお金の量を増やすが、逆にマネーの量を減らすなら国債などを買い控えればいい。モノの増えるスピードよりお金の量が相対的に少なくなれば、お金の価値は上がり、物価が下がっていく仕組みだ。

 二つ目は利上げ。金利が上がればみんながお金を借りにくくなり、旺盛な消費や設備投資を抑えられる。消費が落ち着くと当然、モノが売れなくなるので価格を下げる圧力が働く。

 欧米は今、この金融引き締めの最中にあるが、当然副作用もある。利上げに伴い、住宅ローン金利が大きく上昇しているのだ。

 米国では年初3%台だった30年物の固定金利が7%に迫るまで上昇し、庶民は住宅購入が難しくなった。買える人が少なくなったから不動産価格も下がっている。

日本は逆の金融政策

 この世界の動きに逆行するのが日本で、引き締めではなく、金融緩和を継続している。長くモノの値段が上がらないデフレ状態から脱却するため、日銀の黒田東彦総裁は国債を買いまくりお金を増やしている。

 ドル円相場もドルと円の量のバランスで決まるから、量の多い日本円の価値は下がり、少ない米ドルの価値が上がる。これが今の円安の主因だ。

 ただ、黒田総裁は来春の交代が確実視されており、新たな総裁は金融引き締めに向かう見方が広がっている。そうなれば米国のような利上げで住宅ローン金利が上がる可能性がある。

 どっちに転ぶかわからない状況に、今は静観して、住宅を買い待ちしている動きがあるようだ。

 大阪都心部のタワーマンションを専門に売買するES&Companyの芝崎健一氏は「それでも富裕層は増えてきた。さらにここへ来て海外投資家も円安のディスカウント効果で日本のタワマンを買い漁っている。昨日も契約の申込みが3件あった」と話す。

今のうちに借り換え?

 先のことはわからないが、仮に金利上昇に向かうなら、住宅ローンを返済中の家庭には頭の痛い話だ。固定金利なら金利の動きを心配しなくて済むが、74%の日本の家庭は金利の動き次第で月々の返済額が変わる変動金利で借りている。こうなると今のうちに借り換えをするべきかどうかを知りたいところだ。

 「借り換えのメリットを出すには金利1%くらいの動きが目安」と芝崎氏。理由は借り換えの手数料が残債の2%ほどかかるからだ。「ただ、2005年あたりにローンを組んだ人は効果がある」とも説明する。

 現在、店頭に表示された変動金利は2・475%で20年以上ほとんど変わっていない。しかし、05年から優遇金利の幅が徐々に大きくなり、今は2%程度引いてくれる金融機関がほとんど。実際の適用金利で一番お得な利率は9月現在で0・289%と極めて低い。

 左表は今がどれだけ得かを05年などと比べたものだが、金利が1%異なるだけで、これだけの差が出る。

 こう考えると、仮に金利が上がっても、過去と比べれば今はかなり安いし、全期間固定でも最安は0・9%で1%を切る銀行もある。大阪都心部のタワマンに限れば12年のアベノミクス以降、年平均7~8%の上昇で資産価値がアップしているので、金利上昇よりも高い上昇率で資産価格が膨らんでいる現実もある。

 欧米もインフレ退治が終われば、成長企業の株価を上げるため、利下げに舵を切るのが自然な流れだから、固定金利で借り換えてしまい、逆に損をしかねないことも。さまざまな視点から冷静に対処しよう。