〝シモンイモ〟の原種が今、絶滅の危機 生活習慣病予防に用いる医師も

 シモンイモをご存じだろうか。46種類の必須栄養素を含む〝お宝野菜〟と言われ、古くはマヤ文明の時代に糖尿病治療などにも使われてきた貴重なイモだ。ところが、このシモンイモが今、日本で絶滅の危機に瀕しているという。

「白サツマイモ」とも呼ばれるシモンイモの原種

 過去にもTBSの番組「スパスパ人間学!」で〝腸と血液をキレイにする3大栄養素が詰まったお宝野菜〟として放送されたシモンイモ。番組の実験では、被験者が1週間、シモン食品を摂り続けた結果、腸年齢が39歳若返った事例も紹介された。

 医学的にも免疫力を上げ、糖尿病などの生活習慣病を抑制する効果にも期待できると、治療に利用する医師も存在する。

 実はシモンイモは、1990年代にも「ダイエット効果がある」と週刊誌が取り上げ、日本でブームが起きたことがある。温暖な地域が栽培に適していたことから、熊本県・倉岳町ではシモンイモによる「まちおこし」も行われた。ところが、そのうち「ダイエットに効果がない」という話が広まりブームは下火になっていくが、実はこの原因は別にあった。

 調査結果から得られた原因はシモンイモの〝雑種化〟だ。実はシモンイモは、サツマイモなどの異なるイモ類と寄せ植えすると簡単に雑種化してしまい、原種が本来持つ46種類の必須栄養素が失われてしまう。隣の畝(うね)に植えてもダメなほどデリケートだったのだ。

雑種化しやすいデリケートな栽培

 こうした難しさから、農家はシモンイモの栽培を嫌がった。加えて、シモンイモは土壌の有機質やミネラルを根こそぎ吸い尽くし、一度栽培した畑は3年ほど休ませないと次の収穫が見込めない。

 栽培の非効率さが際立つうえに、加工用の機械に対する行政からの助成金がなくなったことも拍車を掛け、シモンイモの原種の苗づくりは現在、熊本でしか行われていない。

 市場に流れている多くは雑種化したシモンイモで、販売者側が雑種化に気づいていないケースも多いという。

シモンイモの原種が栽培されている畑

 こうした向かい風の中で、シモンイモの原種を守り続けてきたのが家庭健康管理研究会と専属契約をしている農家だ。しかし、同会の兵庫中央事務局長で健康管理士の前田倖里さんによると、「農家側から現在の2倍量を仕入れてもらわないと今後、生産していくのは厳しい」という交渉が入っているという。

 「(シモンイモは)73年に四国に持ち込まれ、10年かけてようやく日本産が誕生した経緯があり、途絶えさせるわけにはいかない。そのためにも世間に普及させて農家の収入を上げ、原種を守り抜きたい」と胸のうちを明かす。

米国は食生活改善でがん死亡率減少へ

 同会がシモンイモの原種を守り続ける背景には、77年に米国で発表されたマクガバンレポートを機に誕生した「分子矯正医学」がある。

 がんや心筋梗塞、脳梗塞など生活習慣病大国だった米国では、フォード大統領が「医療に莫大な国家予算を投じているにも関わらず、なぜ病人が増えていくのか?」と、米上院議員ジョージ・マクガバンに徹底的に調査させた。マクガバンが米国民の食生活を5年に渡って調査したところ、死亡原因の上位10項目のうち、6項目までが食に関連していることが判明した。

 これを受けて誕生したのが人間の細胞に着眼した分子矯正医学(栄養療法)だ。病気や体調不良は、細胞が正常に代謝できていないのが原因という考えをベースにした医学で、46の必須栄養素が一つでも欠けると、細胞間の代謝がスムーズに行われず、さまざまな病気の引き金になるという概念だ。

 実際に米国は食生活の改善に取り組み、90年を境にがん死亡率が減少。先進国のG7加盟国としては、唯一がん死亡者が減っている国となった。

日米のがん死亡率推移

 46種類の必須栄養素を含むといわれる〝お宝野菜〟。ただ、断っておくが本記事はシモンイモを読者に薦める目的で書いたのではないことだけ言っておく。今は病気や体調不良の際に、どんな対策を講ずるかは自分自身で選択していかなければならない時代だ。

 だからこそ、健康に関するいろんな角度の情報を引き出しに入れておきたいという読者ニーズに応えたものとして受け止めてほしい。 

>>国内唯一の〝シモンイモの原種〟守り抜く 和蔵の前田倖里社長