中3で「卒論」も 大学入試にも生かせる「探究学習」が今アツい 大阪の私学3校をリポート

 生徒自ら課題を見つけ、解決するための調査や分析を行うことで、教科を横断的かつ発展的に学べる「探究学習」。文科省も「主体的・対話的で深い学び」として推進しており、学校教育で最も注目を集めている取り組みだ。大阪で特徴的な探究学習に取り組む3校を取材した。

中3で「卒論」 高校では企業のミッションにアイデアも

常翔啓光学園中学校・高等学校

常翔啓光学園中学校・高等学校

 中高を通じて、探究学習カリキュラム「21世紀型教育」を行う常翔啓光学園中高。中学2年では1300字程度の「自分史」を書き自己理解を深めている。中学3年になると自分でテーマを設定し、書物で調査したり、フィールドワークや実験をしたりしながら研究を行う。研究結果は1万5000字ほどの冊子にまとめ、パワーポイントでの発表もこなす。大学と連携し、イノベーション教育などの学びや体験ができる「K1クエスト」など中高大連携も進めている。
 高校1年では、まずテーマに沿った話し合いで自分の価値観や思考を整理する「ENAGEED」を実施。2年になると企業へのインターンシップを教室で体験する「コーポレートアクセス」に取り組む。前半は企業実務を行い、後半は企業からのミッションに取り組む。実際に企業の社員が中間発表を見学することもあるため、ここでモチベーションが一気に上がる生徒も。
 また、学園内の設置大学進学を前提としている「学園内大学進学クラス」では、3年間を通じて探究学習の授業を多めに設定。3年は地域と連携し、住みやすさや観光などをテーマにした課題解決に取り組む。ほかにもデザイン思考やスタートアップキャンプなど、思考力や発信力を育む内容を充実させている。

常翔啓光学園中学校・高等学校/枚方市禁野本町1-13-21/電話072(807)6632(入試部)

中1から大学の講義 高校では本格的な研究に

常翔学園中学校・高等学校

常翔学園中学校・高等学校

 2008年に現在の校名に改称してから、「自主・自律の精神」と「職業観の育成」を理念に掲げる常翔学園中高。探究学習では、課題解決力をつけるキャリア教育を行っている。
 中学で実践する「常翔STEAM」では、AI(人工知能)やプログラミング、英会話などに一通り触れる。学園内の設置大学と連携することで、大学教員の講義を中学1年から受けられるのも特長だ。中学3年や高校2年では企業が出す課題に対し、企画のプレゼンテーションを行う「企業探究学習」もある。
 高校で取り組む「ガリレオプラン探究」(スーパーコースのみ)「科学探究プラン」(薬学看護医療系コースのみ)では、ゼミに所属して大学の学生や教員のサポートを得ながら研究活動を行う。ほかにもコースによってディベートや模擬国連を実施する「ヤングリーダーズプラン」、大学の研究内容について講義を受ける「夢発見ゼミ」などがカリキュラムとして準備されている。台湾の姉妹校との研究交流といった課外プログラムもそろっている。
 また、有志生徒で「常翔メタバース プロジェクトチーム」を立ち上げ、メタバース未経験の生徒が仮想空間に学校を作ろうと一から試行錯誤。現在は制作途中だが、同校のホームページからもアクセスできる。

常翔学園中学校・高等学校/大阪市旭区大宮5-16-1/電話06(6954)4436(入試部)

優秀賞は「モテるセミ」!? 自分の好きが見つかる生徒も

開明中学校・高等学校

開明中学校・高等学校

 開明中高も特徴的な学習が目白押しだ。中学に入学すると全員で取り組む「弁論大会」。自分で設定したテーマについて5分間、クラスメイトの前で発表。優秀な生徒は本選に進み、全校生徒の前で発表できる。弁論大会をきっかけに自分の関心を掘り下げることで、進路が定まる子も多いとか。過去には宇宙について論じ、JAXAへ就職した生徒もいた。
 高校では「研究発表」に取り組む。5人以下でグループを組み、生徒主導で研究するテーマを設定し調査・実験まで進める。最終的には弁論大会と同様に、優秀なグループは全校生徒の前で発表する。最近の優秀なテーマには「『モテるセミ』の特徴を、大阪城公園へ行って調査し分析する」というユーモアにあふれる内容も。
 取り組みを通じて、生徒自身の発信力を育むだけでなく、ほかの生徒の「良い事例を見て、自分に取り入れる」ことができるのも長所だという。弁論大会・研究発表を活用した特色入試の受験率も高く、京大・特色入試の合格者数も3年連続4回目の全国最多という実績がある。

開明中学校・高等学校/大阪市城東区野江1-9-9/電話06(6932)4461

【メモ】探究学習と学力・入試

 各校の担当者が口をそろえるのは「探究学習は成績向上にも影響する」ことだ。「関連付け学習」をすると記憶が定着しやすく、理解も強化されるが、なにより「モチベーション」「やりきる力」といったマインド面が高まる点が大きい。
 一方、最近は探究学習の過程や成果を入試の採点評価に使う大学も増えてきた。高校の実績を重視する「学校推薦型選抜」や入学後の意欲を問う「総合型選抜」が多くの大学・学部で実施され、「探究学習」に比重を置いた入試形式も増えている。京都大の「『高大接続型』特色入試」や、奈良女子大の「探究力入試『Q』」、関西学院大の「探究評価型入学試験」などがそれにあたる。