大阪の子どもたちにとってあこがれの府立高トップ10校。これらの学校に志願するなら、英検2級を取得しておくべきだ。大阪府教委のまとめによると、今春の府立高入試で、英語のスコアが保障してもらえる英検2級以上を取得していた受験生は約4000人。うち2939人はトップ10校の受験生だ。英検2級はすでに、上位校の合格パスポートになっている。
トップ10校は6割の受験生が取得
府立高入試では2017年度から、英検やTOEFL iBT、IELTSの成績を入試得点に反映できる。なかでもその中心は英検で、2級を持っていれば80%、準1級で100%の得点が保障される。実際の入試点数に置き換えると、英語は90点満点だから2級があれば72点、準1級なら90点に換算される。当日の試験の出来映えによって、高い方のスコアが採用されるわけだ。
17年の導入時に英検を中心とした外部検定を活用して入試に臨んだのはわずか344人。ところが制度開始から7年経った今春は3999人と10倍以上に膨らんだ。このうち府立トップ10校の受験生が大多数を占め、10校を受験した6割の生徒は得点保障を得た状態で試験に臨んでいる。
上位校ほど顕著で、府立高の双璧を成す北部の北野で受験生の95%、南部の天王寺で85%が英検2級以上を保有。続く茨木も83%。三国丘、豊中、大手前も6割を超えた。
ここ2年、C問題は易化しているとはいえ…
「入試で英語のC問題を使っている学校を受験するなら、2級をとっておくべきだ。特に上位校を目指すなら、受験の最低条件といえる」
こう指南するのは入試情報のスペシャリストで開成教育グループの上席専門研究員、藤山正彦さんだ。
大阪の府立高入試は、各校の判断でA〜Cの難易度の異なる問題が出題されるが、英語で最も難しいとされるC問題はトップ10校をはじめ、春日丘や池田、泉陽など19校が採用している=右表。
そして、このC問題が非常に難問で、2級の取得によって得られる72点を、当日入試で上回るのは相当難しい。
>>【大阪の高校受験】難し過ぎるC問題 教科書レベルでは解けない?
このため、今春の入試でも、英検を活用した受験生の90%(3593人)は、英語C問題を採用する府立高に集中している。
C問題はインターネットで公開されている過去問を見ればわかるが、長文読解力がキーとなる大学の共通テストに近い。
なかでも全得点の半分以上を占める長文読解が4〜5題も連なる。最後の英作文も難関だ。この問題量をわずか30分で仕上げなければならない制限時間の短さが最大のネックとなっている。
「ただ、ここ2年はC問題が易化の傾向にある。実際に合格者平均が英検2級の72点保障に迫っている」と藤山さん。
それでも今春の合格者平均点を見ると、英語C問題は60・6点で、英検2級が保障してくれる72点を下回っている。
英検取得のスタート時期 理想は小学高学年
上位校狙いの生徒にとって、もはや必須の英検2級。取得にはいつから取り組めばよいのか。
英検の試験は6月、10月、1月の年3回あり、よく聞く段取りとしては1年で4級、2年で3級、3年で2級を取得していくのが一般的だ。
中3の1年間を英語以外の残り4教科に全集中できるように、中2までに取得しておくのが理想だが、藤山さんは「受験のことだけを考えればそのスケジュールがベスト。ただ、4教科に集中することは、英語学習を1年間やらないことになる。本当はその1年勉強していれば英語力がもっと向上するのだが…」ともどかしさも語る。
また、英語の低年齢化が進んでいるが、藤山さんは適切な着手時期として、小学5〜6年でのスタートを勧めている。理由は「まずは日本語能力の確立が先」(藤山さん)だからだ。
実際に小学校の国語では、例えば自分の思いや考えについて、低学年では「持つこと」、中学年では「まとめること」、高学年では「広げること」と順序立てて養っている。「日本語の語い力や思考力、判断力、表現力が身についてから英語をマナブのが望ましい」と話している。
ところで、府立上位校の北野や茨木、三国丘、天王寺などはすでに募集人員並み、またはそれ以上の受験生が英検2級の得点保障を得て試験に臨んでいる状況にある。英語入試で差が付かないことから、準1級レベルを取得し90点満点を確保する入試戦略はどうなのだろうか。
このことに関して、藤山さんは「単語数で例えるなら、中学校で習う英単語は1600~1800語だが、2級はすでに高卒レベルの5000語。さらに準1級ともなれば、英語力は大学中級レベルで、7500〜9000語の単語力が必要になり、労力に見合わない」というのが結論のようだ。