管理型人材が生まれる〝教育の盲点〟に向き合って
大阪市中央区にある「アルボルキッズスクール」は、2022年の設立以来、子どもたちの創造力や主体性を育むことに特化した学びを提供してきた。
代表を務める福井朋子さんは、メーカー勤務を経て、学校教諭・保育士・キャリアコンサルタントなど多彩な資格と経験を生かして、教育の現場と企業の両方から「人材育成」に対する課題に向き合ってきた。
企業で部下のマネジメントしている時に感じたのが「指示待ちの〝管理型人材〟」が多いということ。そして、今の教育体制が〝管理型人材〟を生み出す状況を作っていると考えている。
「自立的な人材になるためには、小さいうちから〝働くこと〟や〝お金〟について学ぶ機会が必要です」と福井さんは語る。そのため同スクールでは、起業家教育やマネーリテラシー教育を実践してきた。

誰でも〝アイデアマン〟になれる、創造力は鍛えられる時代へ
そんな同スクールで2025年より新たにスタートしたのが「イノベーションコース」である。
プログラムの開発を担当したのは、スクールで講師も務める石井恵美さん。貿易会社を25年にわたり経営し、健康食品会社の設立・運営にも携わるなど、複数の事業をゼロから立ち上げてきた実績を持つ経営者だ。
石井さんは、創造力を〝特別な才能〟とするのではなく、誰でも鍛えられる〝リテラシー〟として捉え、それを体系的に育てる教育としてコースを設計した。
「社会では今、〝正解を探す力〟より、〝問いを立てて考え、行動する力〟が求められています。先の見えないAI時代だからこそ、人間にしかできない『発想』や『創造』の力を子どものうちから育てる必要があります」と石井さんは語る。

実社会に通用する9つの力と4つの思考法を学ぶ
コースでは、「アイデア創出力」「課題解決力」「自己表現力」「共感力」など、社会で求められる9つの力を育成。さらに、「ロジカルシンキング」「ラテラルシンキング」「デザイン思考」「クリティカルシンキング」といった4つの思考法を、子どもたちが楽しめるワークを通じて自然に学んでいく。
授業は1回90分の全24回。すべての回に個人ワーク、グループワーク、発表の場が用意されており、「考える・つくる・伝える」の循環を大切にしている。
実践型の授業で、「考える力」が芽吹く
実際に授業をのぞいてみると、元気よく手を挙げて発言する子どもたちの姿が。その日は「マーケティング4P分析」について学ぶ回。オリジナルテキストを用いて、飲食店や商業施設など身近な場所で売れている商品を事例に挙げて、ものが売れる理由や、売れる仕組みについて考えていく。
後半は、グループワークとして、前半で習った内容をもとに子ども達が自ら新しい商品やサービスを考え、マーケティング戦略を立てて発表する、といったことに取り組んでいた。


「このスクールは、子どもたちが〝自分らしく、自由に人生をデザインできる力〟を育むことを目的としています。大人になるにつれて、〝もう一人の自分〟がひらめきを否定してしまうことがあります。イノベーションコースでは、その〝もう一人の自分〟を意識的に壊し、発想力や想像力をスキルに変えていきます。AI時代を生き抜く為には、この力が必要なんです」と石井さんは語る。
「自分が社会を変える」という意識を育てたい
これらの教育の根底には、「社会課題に目を向け、そこに自分がどう関われるかを考える子を育てたい」という思いがある。
「どんなところにも課題はあります。まず、それを見つける力。そして、それを“自分が変えるんだ”という当事者意識を育てたい。今、花を咲かせる必要はありません。社会に出たとき、しっかりと根を張って自らの力で花を開かせる。そんな子どもたちの土壌を今育てたいのです」と石井さんは語る。
今後は保護者向けの説明会や体験会も開催予定。〝学力〟だけでは測れない、「考える力」「つくる力」を育む同コースは、まさにこれからの時代を生きる子どもたちの新しい学びのかたちとして、注目が集まっている。
<取材協力>アルボルキッズスクール/大阪市中央区上本町西1-5-18 エイチツーオー第5ビル6/電話06(6718)7002
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