子宮頸がんワクチン訴訟「今も体調悪く、悔しい思い」大阪地裁で原告3人が本人尋問

 HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)を接種し、健康被害を受けた女性たちが国と製薬企業を相手取り、2016年7月に損害賠償請求の訴訟を起こしてから8年の歳月が経った。今も東京、名古屋、大阪、福岡の4地裁で計117人の女性たちがHPVワクチン薬害訴訟弁護団とともに闘っている。大阪地裁で行われた3人の原告本人尋問を取材した。

 6月6日、大阪地裁では今年3月に続き、2回目の本人尋問が実施された。

薬の副作用でなく「心の問題」と診断

<Aさん 20代女性> 

 中学2年の2012年8月~13年3月の間、GSKグラクソ・スミスクラインのサーバリックスを3回接種したAさん。2回目の接種後にこれまで経験したことがない腹痛に襲われた。症状は腹痛にとどまらず、頭痛や倦怠感にも苦しめられ、夜間病院を受診した。
 3回目の接種からは特に倦怠感が強まり、朝起きるのも困難になったため遅刻欠席が増加。理解力・記憶力・集中力も著しく低下していった。
 「心の病気ではないか」と言われ、中学3年の5月に心療内科を受診したが、症状はおさまらずにいた。高校に進学してからも欠席が続き、1年の2学期には特別支援学校に転学せざるを得なくなったが、高校3年の卒業間際に復学し、普通科高校を卒業した。
 社会人となった現在は派遣社員として事務職に就いている。今も体のだるさは続いているため定時で帰り、土日も家でじっとしている状態だ。

頭頂部を殴られたような頭痛

<Bさん 20代女性> 

 Bさんは中学2年の8月~翌年2月の間に、サーバリックスを3回接種した。
 2回目の接種の後、金づちで頭のてっぺんを殴られたような頭痛に襲われ、顎関節痛、開口障害も生じた。
 3回目の接種後、1時間程度続く両手の振るえ、ひどい生理痛、全身湿疹、低体温などさまざまな症状に苛まれた。「まるで頭や脳に幕が張っているかのような違和感があり、友人の名前が出てこないなど記憶力は低下してしまった」(Bさん)。
 起き上がれないほどの倦怠感や睡眠障害が起こり、欠席日数は増加した。その間、内科を受診したところ、血液検査は異常が見当たらず医師からは心療内科の思春期外来で診てもらうよう勧められたという。そこでは、学校や家庭に問題があるのではないかと言われる。
 体調不良から1年留年して高校を卒業。1年間の浪人を経て大学に進学する。コロナ禍で授業がオンライン化されたことによって無事卒業することができ、在宅勤務が中心の会社へ就職した。Bさんは「具体的に何をすればどの症状が軽減するのか、話を聞いてくれる医師に早く出会いたかった」と振り返る。

<Cさん 20代女性> 

 中学1年の9月から翌年3月の間にMSDのガーダシルを3回接種したCさん。3回目の接種後に、39度の発熱に見舞われ、ハンマーで殴られたような頭痛がした。
 中学2年の9月、突然足に力が入らなくなり、自転車通学していたが、自転車が漕げなくなった。同10月には、今までに経験したことがないような腹痛に襲われ、入院するも、胃腸炎と診断され、原因は判明せず。四肢関節痛、握力低下、歩行困難。記憶障害も出現。

「何がしたいの?」看護師長から叱咤され

 痛みがひどくなり、緊急外来後入院。全身が痛むが薬が効かず。検査では異常なしの結果だった。看護師長からは「何がしたいの」と叱咤されたという。
 HPVワクチンの副反応を疑い、協力医療機関に指定されている大阪大学医学部附属病院で受診すると、「『HPVワクチンの副反応は信じていない』。体調について嘘をついてる」と筆舌に尽くしがたい言葉を浴びせられる。
 その後、静岡てんかん・神経医療センターに検査入院し、HPVワクチン接種後脳機能障害と診断された。「この病院でも心の病気だという先生も居た。身体の不調に目を向けてくれた医師が、脳の異常を見つけてくれた」とCさん。
 現在、小学校の教師として働いている。勤務できている状態であるものの2020年、急にしんどくなり、児童の前で倒れてしまい、子どもたちにショックを与えてしまったのではないかと心配しているCさん。

副反応も知って

 「今でも体調不良に見舞われており、悔しい思いをしている。私は、ワクチンを否定しているわけではない。しかし、診察してもらえなかったり、ストレスと言われたり、心の病と言われたりして、副反応を否定されるのは辛い。このようなことがあることを少しでも知ってもらいたい」と熱く話す。
 当日、被告側である国、GSKグラクソ・スミスクライン、米製薬大手メルク日本法人MSDは原告に対して「元気なときはなかったのか」「しんどいと言っていた時系列を説明してほしい」など取り留めもない質問を行っていた。
 原告はいずれも、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)より、医療費・医療手当て支給決定している。
 大阪地裁での次回の原告本人尋問は9月19日。被告らによる専門家証人尋問は12月23日。裁判の判決は各地裁において令和9年4月ごろの予定。

キャッチアップでワクチン接種推奨

 安全性の懸念が残る中、国は接種期間を逃した1997年4月2日~2008年4月1日生まれの女性を対象に、HPVワクチンを公費で接種できるようにする制度「キャッチアップ接種」を現在勧めている。「接種するのもしないのも自由だ。だが、裁判をとおして副反応を知ってもらいたい」(Cさん)

公費によるHPVワクチン「キャッチアップ接種」に関する厚労省のチラシ
公費によるHPVワクチン「キャッチアップ接種」に関する厚労省のチラシ