大阪・JR玉造駅近くに、韓国でデビューして間もないアイドルが日本で活躍できるよう支援し続ける「Takara Osaka」というライブホールがある。同ホールの運営・企画を手掛ける「Sun Shine Company(サンシャインカンパニー)」(大阪市天王寺区)は、KーPOPとKービューティーを柱に民間レベルで日韓友好に取り組んでいる。その同社が現在、8万円相当の高級韓国コスメを約9割引の9000円弱で販売している。〝完全な赤字〟で提供する背景には、日本への「恩返し」という強い思いがあった。

若手韓国アーティストを日本で育てる
JR環状線「玉造駅」から歩いて1分ほどの場所にあるライブホール「Takara Osaka」。同ホールが力を入れるのは、韓国で活動するデビュー間もないアイドルの活躍する場の提供だ。
「日本で名前を知ってもらうには、ただ出演機会を与えるだけでは難しい。会場側が若手アーティストを育てる覚悟を持たなければならない」
こう話すのは同社の浅野寛文本部長だ。
「最近のアイドルグループには日本人メンバーも多く在籍している。世界での活躍を夢見て韓国に渡り、厳しい競争を勝ち抜いてデビューしても、思い描いたような活動ができないケースも少なくない」と明かした上で、「さまざまな夢を持って集まったアイドルたちを支えることに、大きなやりがいを感じている」と力を込める。
同ホールでは、韓国の若手アイドルを招き、2週間単位で公演を組んでいる。渡航費や滞在費などの負担も肩代わりし、集客や宣伝活動まで会場側が担っている。
なかでも、同市生野区のコリアタウンにある「Five Hotel大阪」で実施している野外ライブは、訪日客や通行客の目に触れ、新たなファンの獲得につながっている。ホテル側が同ホールの取り組みに共感し、会場を提供するようになった。
一方、こうしたライブを開催している期間は通常の貸し出しができず、ホール側にとっては機会損失が生じている。それでも同社は、無名に近いグループが日本でファンを獲得し、将来大きなステージを踏めるよう支援し続けている。
ステージの裏側で見えた「肌」の課題
しかし、連日の過酷なステージメイクと、慣れない日本での共同生活がアーティストたちの肌を容赦なく荒れさせていた。そこで開発したのが、今回の主役「サンシャインコスメ」だ。
実は、同社の代表自身も長年、敏感肌や金属アレルギーに悩まされてきた。海外の有名高級ブランドの化粧品であっても、含まれる成分やアルコールに刺激を感じることがあり、「自分が安心して使える化粧品を作りたい」という思いを抱いていたという。
そんな中、コロナ禍でライブハウスが稼働できなかった期間に、韓国の皮膚科や整形外科向けの化粧品づくりを手掛けるOEMメーカー(受託製造企業)と関係を結び、約2年をかけて試作と検証を重ねた。

商品は美容液「SunShine SERUM」と美容クリーム「SunShine CREAM」の2種類。着色料は使わず、ビタミンB12由来の成分で自然なピンク色になっている。
浅野本部長は「韓国では美容医療の現場で使われる考え方を背景にしているが、日本では化粧品として、あくまでスキンケア商品として紹介している。敏感肌の人にも配慮し、毎日使いやすい処方を目指した」と説明する。
一方で、高級原料や高級パッケージを採用したことで、美容セラムが2万9800円、美容クリームは4万9800円と、2点で約8万円の高額になってしまった。それでも「韓国コスメの良さを一人でも多くの日本人に知ってもらいたい」と8756円の赤字で提供する決断に踏み切った。

浅野本部長は「コロナ禍でライブハウスは大きな打撃を受け、事業継続も危ぶまれた時期があった。そんなとき、日本の支援制度に助けられ、『日本に恩返ししたい』という思いが常にあった。K-POPの現場から生まれたK-ビューティーとして、多くの人に知ってもらい、日韓友好の一助になればうれしい」と話している。
音楽と美容で、民間の日韓交流を
音楽で韓国の若者を日本につなぎ、美容でファンや生活者との接点を広げる。ライブハウス発のコスメ販売は、一見すると異色の事業に見える。だが、その根底にあるのは、日韓の文化を民間の力で行き来させる「TakaraOsaka」の挑戦でもあった。
